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9/20怪談最恐戦2020 不死鳥戦(敗者復活大会)大盛り上がりの現場をレポート&総括!【卯ちりイベントレビュー】

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9月20日に、怪談最恐戦2020 敗者復活不死鳥戦が開催されました。

8月に開催された東京と大阪の予選会にて、惜しくも敗れた出場者たちによる、決勝進出をかけた敗者復活戦です。

今回のバトルは会場と配信で視聴している観客の投票によって、勝者が決定します。

ルールはいたってシンプルで、全12名の出場者の中から、1名を選んで投票するという方式。

また出場者が語る話の制限時間は今回も5分。5分59秒まではペナルティはありませんが、6分以上で失格となります。

怪談最恐戦、三回目の開催にして初の試みとなる敗者復活不死鳥戦ですが、戦況は全く予測のできない展開に。

本記事では、各出場者の怪談紹介+トークも交えつつ、勝敗の行方をレポートします。

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エントリー№1 ぬらぬら

本日のトップバッターはぬらぬらさん。芸人仲間が合宿先の部屋で遭遇した、右半身が削れた女の幽霊にまつわる怪談です。12名が順番に語る本日の構成で、1番手は最も不利とも思える順番ではありますが、ぬらぬらさんは夜に別の出演予定が詰まっており、事情があってのことだそう。

「(1番最初に話すのは)前日の順番を決める動画を見て知ったんですよ!でも15時入りだから、全然余裕あるでしょ!?前半ブロック見て帰ります。」

不本意な状況とはいえ、語り終えた後のトークで場を沸かせて、本日のイベントの雰囲気を作ってくれたぬらぬらさん。いい感じのイベントスタートでした。

エントリー№2 女子高生怪談師あみ

キャラクター設定が光る、女子高生怪談師あみさん。今回は人怖要素も含まれた、バイト先のストーカーが登場するお話ですが、体験者が狼狽えるさま、迫りくる幽霊の恐ろしい描写など、迫真の演技で魅せる語りでした。

あみさんの「ドスドス!!」は、ガンジー横須賀さんの「ピンポインツ!」と並んで、最恐戦ではお馴染みとなりつつありますが、あれは毎回必要なの?とMCの住倉カオスさんが尋ねたところ、

「あれはめっちゃ必要です、みなさんもぜひやってください!」とのこと。

また、本番前は壁に向かい、独りで必死に練習していたそう。後述の中山さんもですが、がっつり稽古を重ねて語りを仕上げるタイプの怪談師のようです。最恐戦出場者の中では史上最年少のあみさんですが、今後の活躍が楽しみですね。

エントリー№3 稲森誠

さすが俳優、というべきでしょうか。出で立ちは風格たっぷり、語り口は穏やかで聴きやすくも、じんわりとした後味の悪さが印象的な怪談でした。

時間は5分を少々オーバーしたとのことですが、「生き生きした若い人たちの中で、おじいちゃんが頑張ってますので」と謙遜しつつ、せめて格好だけでも、とはにかむ稲森さん。衣装の着こなしもさすが。

そして今大会後、ご自身を「怪演師」と命名し、怪談を‘‘語る‘‘から‘‘演じる‘‘ことにシフトされるとのこと。ますます磨きのかかるであろう、稲森さんの怪談に期待です。

エントリー№4 中山功太

今回語った話を大阪予選でやるつもりが、前日の夜中に謎の発熱が……と棄権した際の経緯も含めて語ってくれた中山功太さん。採点に響かないようにと前置きしつつも、既に霊媒師に除霊してもらえたとのことで、霊障による体調不良の心配がなくなり、ひと安心です。ご存じの通りOKOWAチャンピオン、今回満を持して初出場となった中山さんは、「最恐戦に出たくてもなかなか縁がなくて」と、念願の様子。

「今日はいつも通りできました。理由はすごく練習をしたからです。僕、怪談は噺家さんくらい練習するんです。あんまり物覚えがよくないので、実話でも組み立てや順番が崩れると、もにょもにょしちゃって、そうなったらおしまいですね」

なんとか本戦に出たいですね!と、仰っていましたが、手応えたっぷりの語りでした。

エントリー№5 みちくさ

「売りたいのは、声」がキャッチコピーの、怪談朗読をされているみちくささん。声を売るといいつつも、声色だけにとらわれない怪談語りです。少しもったりとした語尾に特徴がありますが、語りのリズムが心地良く、まったりと聴くことができます。

「前回の予選会は私の体験談を話したので、やれることはやったという感じでしたが、今回は聞いた話をアレンジしての語りなので緊張しました」

謎の箱に纏わる怪談は、影絵草子さん提供のお話だそう。取材した話や提供された話のアレンジも腕の見せ所なので、朗読のみならず、みちくささんには是非挑戦していただきたいですね。

エントリー№6 松本エムザ

温泉の女風呂で目撃した入れ墨の女性という珍しい題材をチョイスした松本エムザさん。「ジクジクすんなあ!」というパンチの効いた台詞がユニークですが、松本さんの朗々とした語りだからこそ、一層印象に残る話でもあります。

「普段は主婦で、ボランティアで読み聞かせをしていました。普段は執筆がメインであまり怪談を語っていないのですが、今回は朗読部門にも挑戦しました。よろしくお願いします」

既に単著も出されていて、作家活動がメインの松本さんですが、語りも劣らず魅力的。朗読部門は、彼女も含め今回の最恐戦出場者も複数人エントリーされているので、ぜひ聴き比べしたいところです。

エントリー№7 Megす★

偽物が多いがゆえに懐疑的であった心霊映像について、これは本物だと感じた怪談を語ってくれたMegす★さん。普段は関西で活動している彼女ですが、ご自身でもオカルト好きを公言し、怪談ライブにも足繫く通っているだけに、今回の東京遠征は念願だったそう。

「大阪にはなじみの顔がお客さんにもいるんですけど、今日ははじめましての方が多くて。ネットで交流していた、怪談師仲間と初めてお会いできてうれしかったです」とのこと。最恐戦は初出場ながら、映像審査、大阪予選、そして敗者復活戦と、3話分の怪談を披露したMegす★さん。見事に爪痕を残してくれました。

エントリー№8 BILLY

大阪予選に出場したBILLYさんも、今回は東京に遠征での参戦。

「今日飛行機で初めて羽田に降り立ったのですが、道に迷い「出口ってどこですか」とひとに聞いたら苦笑いされて。その後20分迷いました」と苦労した様子。

また、会場でも財布を落とす(!)という不測のトラブルにも見舞われ、しかし無事に発見されたようですが、そんな残念エピソードも愛嬌のうち。顔芸たっぷりの、抑揚を効かせたBILLYさんらしい語りでした。普段は配信活動メインで関西在住のBILLYさん。東京で、初めて彼の語りを聴ける貴重な機会でもありました。

エントリー№9 おおぐろてん

得体のしれない、謎めいた怖さが厭な余韻を残す、おおぐろてんさんの怪談。今回は軍服に憑りつかれた男のゾッとする顛末の話です。東京予選では惜しくもガンジー横須賀さんに敗退したおおぐろさんですが、「ピンポインツ!」がマイブームになったそう。

「今日の語りは、最後にピンポインツきまらなかったのが反省です。「それがね、この軍服なんですよ。ピンポインツ!」って(笑)」

前回からピンポインツに憑りつかれているんですよ、とおおぐろさん。ウィットを効かせたトークで沸かせてくれました。

エントリー№10 いつでも丑三つ時

丑三つ時怪談極まれり、と言えばいいのでしょうか。5分間の限られた尺で見事に構成された、恐怖だけではなく個性も笑いもオチも詰まった、完成度の高い怪談だったように感じます。

いつでも丑三つ時さんは去年に続き、2回目の予選会出場となりますが、

「今回も楽しませていただいております。話が完成したのが3日前でした」と、今回の怪談も試行錯誤されたようです。個性の光る語り手ですが、語りのパフォーマンスだけではなく、話の作り込みも余念がないタイプ。今回は惜しくも予選敗退となりますが、今後は5分以上の怪談も是非披露していただきたいですね。

エントリー№11 ぱんち

東京予選会では実話怪談倶楽部賞に選ばれ番組へ出演し、また9月はOKOWA胎動Ⅲにも出場と、今夏にぐっと活躍の幅を広げたぱんちさん。

「みなさんの友達って、‘‘本物‘‘ですか?」という印象的な振りから始まる奇妙な怪談ですが、大舞台を経験したぱんちさん、グイグイと実力を伸ばしてきた感があります。

「番組はめちゃくちゃ緊張しました。昔からTVで見ていたプロの方とご一緒で」と、出演時の事も話されていましたが、今後ますます出演機会が増えるであろうぱんちさん、要注目です。

エントリー№12 南条

本日の大トリは南条さん。怪談蒐集の際に、何度か取材をした女性にまつわる怪談です。殺されるかと思った、という自身の忘れられない恐怖体験を語った南条さんですが、出演が大トリだけに、ずっと緊張されていたのではないでしょうか。

「東京予選はブロックの最後だったけど、その日のトリは初めての経験。今日は出番までずっと練習していたから、他の怪談はあとで聴こうと思います」

最後の出番だけに、ストイックに練習した成果を出し切った様子。大トリに相応しい語りでした。

観客の投票結果は?

全出場者の怪談を聴いた後、会場の観客投票と配信視聴者による投票が行われました。

投票はひとり1票、1名だけを選ぶというシビアな投票ではありましたが、

・会場票

女子高生怪談師あみさん、中山功太さんがそれぞれ同率の24%の票を獲得し1位。2位はぱんちさん(19%)、 3位はいつでも丑三つさん(10%)、4位は稲森誠さん(5%)という結果に。

・配信票

中山功太さんが37%の票獲得で首位。2位は南条さん(13%)、3位は稲森誠さん(10%)、4位は女子高生怪談師あみさん、みちくささん(8%)。

まずは、会場・配信ともに1位となった中山功太さんが決勝進出決定!

そして残り1枠。

会場票で同率1位のあみさんと、配信票で2位の南条さんのいずれかとなりますが、どちらも持ち点が同点で甲乙つけられない状態に。

そしてここは選出方法に則り、敗退した9名の出場者による投票で決定する展開に。

結果は5票対7票となり、南条さんが本戦に進出決定!

惜しくも3位となったあみさん。「出直してきます!」と威勢よくコメントされましたが、今回の最恐戦で大注目となった急先鋒の若手怪談師です。「ドスドス!」と共に、あみさんがフィーバーする展開に期待です。

予選通過した2人のコメント

中山「本日出場してみて思ったのは、皆さん、話術があり、話も怖い。芸人を20年やっていますが、この調子では本戦で敵わないなと思いますので、気を引き締めて、稽古に次ぐ稽古で臨みます。幸い実体験があるので、現在身に降りかかっている、本当に怖いと思う話を本戦では真剣にさせていただきます。全力で頑張ります!」

南条「怪談最恐戦、2018年は予選に出れず、昨年は予選で敗退した。今年3回目の挑戦で念願だった本戦出場ができました。言葉が出ないくらい嬉しいですが、ここがゴールではないので。本戦のためにあたためている話をしっかり練習して、本戦出場を先に決められた方に負けないよう、しっかりお届けさせていただきます。」

・本戦出場にあたり、どの出場者が気になりますか?

中山「僕はずっと夜馬裕さんの話が恐いと思っていて。あとはシークエンスはやともくん、伊山亮吉くんとか匠平さん。特に伊山くんがめちゃくちゃ上手くて怖いんですよ。そして田中俊行さんもいらっしゃいますし。でもハニートラップ梅木は大丈夫です。彼パチプロなんで(笑)」

南条「東京予選ははやともさんのブロックで2位だったので、もしも抽選であたることになったら、今度は負けたくないです!」

まとめ

今回の怪談最恐戦で初開催となった、敗者復活・不死鳥戦。

予選会敗者といえど、実力派揃いで個性的な出場者たちによる対決は、東京と大阪で開催された予選会に引けを取らず、レベルの高い接戦だったと思います。

会場で観覧する立場であれば、大阪予選会出場者の怪談を東京で聴けるという美味しさもありますし、配信にせよ会場にせよ、観客の投票で勝者を決められる‘‘推し‘‘の楽しみも味わえるのも魅力だったのではないでしょうか。

そして何より、出場者の怪談をもう一度聴ける、という贅沢が今回はじめて実現しました。

南条さんが終演後に「今回の東京予選は1次審査で落ちたけれど、映像審査で大会前に怪談を皆に披露できる機会があったことが嬉しかった。予選会はブロック2位だったけど、この敗者復活戦で、もう一話怪談を語れた。今回3話も怪談を話すことができたことが、とても楽しい」と仰っていました。出演者の側としても、リベンジである以上に「語りたい」という真摯な気持ちを思う存分ぶつけることができたのが、敗者復活戦だったのではないでしょうか。

怪談最恐戦は5分という短い制限時間ゆえに、観客目線でも、この人の違う話を聴きたい、あるいはもう少し長い話を聴きたいと思う出演者がこれまで沢山いたかと思います。また、予選会のブロック分けや順番によって、勝敗結果や語り手の印象は大きく左右されます。予選会で一話聞いただけではピンと来なかったけれど、敗者復活戦で改めて聴いてみると魅力的だった、と感じた出場者もいたかもしれません。

そして何より、1か月ほどの期間でブラッシュアップしてきた出場者ばかりで、各々の伸びしろや語りの深化も含めて応援したいと思える怪談師が、たくさんいたのではないかと思います。

今回の勝ち抜きは中山功太さんと南条さんの2名。OKOWAチャンピオンとして名を馳せる芸人の中山さんは言わずもがな百戦錬磨ですが、南条さんは3年目の挑戦で、予選会は1次審査も含め4回戦って掴み取った勝利です。お二人ともバックグラウンドは全く異なりますが、勝負強さと粘り強さが半端ない点で共通しています。

怪談コンテストは異種格闘技に例えられることがありますが、この敗者復活戦を見るに、やはり勝負の世界なのだと思います。

11月の本戦は、計12名でのトーナメントとなりますが、今年のファイナリストも豪華な面々。

激戦が予想される決勝戦まで、あと1か月。勝者を予測しつつ、楽しみに待ちましょう。

まとめた人

卯ちり

実話怪談の蒐集を2019年より開始。怪談最恐戦2019東京予選会にて、怪談師としてデビュー。怪談マンスリーコンテスト2020年1月期に「親孝行」で最恐賞受賞。ブックレビュワー、イベントレビュワーとしても活躍中。

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