【日々怪談】2021年7月21日の怖い話~ビデオ
【今日は何の日?】7月21日: ウェディングビデオの日
ビデオ
間島が高校生の頃。
クラスメイトの林の家に遊びに行ったときのことである。
如何にも裕福そうな造りの大きな二階建てで、十五畳以上はありそうなリビング、海外の映画のワンシーンに出てきそうな広いシステムキッチンなどがあった。
林の両親は不在で、二人はテレビを観たり、他愛のない話をしたりして時間を過ごしていた。
「ああ、そうそうこないだ押し入れで面白いもの見つけたんだよ」
「なになに」
ちょっと待ってて――と、林は二階の何処かからビデオカメラを持ってきた。
片手持ちの何の変哲もないビデオカメラだが、デザインの古さとサイズの大きさに年代を感じる。
「んでな、このカメラ、見つけたときから何かテープ入ってるんだよ。観てみるか」
「ああ、それいいな。お前の小さい頃とかそんなのが映ってるかもだな」
ビデオの出力端子から三色ケーブルでテレビに繋ぎ、再生ボタンを押した。
映ったのは、これまた年季の入った色味の結婚式の様子だった。
「これ、お前の両親の式か?」
「いや、違うな。……誰だろ?」
誰の結婚式か分からないが、これはこれで他人のプライベートを覗き見しているようで楽しかった。
暫く見ていたが、新郎新婦のケーキ入刀シーンがアップになったところで、映像はブツリと途絶えた。
砂の嵐。
途端、電話が鳴った。
電話の主は林の母だった。
用件は、親戚の叔母さんが亡くなったということだった。
電話を受けた林は、そこでビデオに映っている新婦が、その叔母さんの若い頃だということに気が付いた。
叔母さんは心臓を悪くして入院していたそうだ。
ビデオを取り出すと、テープが切れていた。
「もしや見ちゃいけなかったのかも。いや、関係ないかな。いや、分かんないな」
分かんないけど罪悪感がないこともない。そう間島は語った。
――「ビデオ」高田公太『恐怖箱 百聞』より
#ヒビカイ # ウェディングビデオの日