【日々怪談】2021年6月27日の怖い話~蝋燭
【今日は何の日?】6月27日:仏壇の日
蝋燭
齢八十七歳、病に罹ることもなく、老衰で大往生した父の通夜の日。
母が就寝した後、息子二人は仏間で酒を飲み交わしていた。
「おいおい、見ろよ」
兄が仏壇を指差し、言った。
「これはこれは」
二本の蝋燭の火が随分と高く燃えていた。
「何だっていうんだろうな。これは何とも」
「ちょっとな……おお!」
高い火は、見る間にぐっと膨らみ、二本の蝋燭の火が合体するまでになった。
そして仏壇の前に、炎で形作られた全長五十センチほどの龍が現れた。
仏壇の前に浮かぶ炎の龍。
「うおおおおおお」
龍は数十秒うねった後に消え、再びささやかな二つの火に戻った。
――「蝋燭」加藤一『恐怖箱 百聞』より