竹書房怪談文庫 > 怪談NEWS > 新刊情報 > 6月新刊『上毛鬼談 群魔』(戸神重明)内容紹介・試し読み・朗読動画

6月新刊『上毛鬼談 群魔』(戸神重明)内容紹介・試し読み・朗読動画

Pocket

丸ごと1冊、群馬県の本当にあった怖い話!

高崎市の古墳の祟り

桐生市の火葬場跡地の亡霊…

群馬の怪奇案内人として怪談会やメディアで大活躍の著者が、県内で起きた怪奇事件・恐怖体験を徹底調査、全力取材で書き下ろす、ご当地実話怪談集。

無料で読める怪談話や怪談イベント情報を更新しています

あらすじ

「美しい橋」

橋の上に立つと意識を乗っ取られ、死の誘惑にかられてしまう…高津戸峡のはねたき橋の魔!

「深夜の碓氷峠」

ヘアピンカーブでドアを叩き、乗せてくれと合図を送ってくる死霊のヒッチハイカー

「高崎の古墳と銀杏の木」

古墳に向かって石を投げる遊びをしていると、突然石が投げ返される。石にあたった者は…

「太田の魔犬」

飼っているプードルが狂ったように吠える相手に死が訪れる。犬は死を予知しているのか?

「薗原湖には気をつけろ」

湖畔をドライブしていると聞こえてくる「助けて…」という女の声。やがて女は姿を現して…

「谷川岳、死のザイル」

魔の山、谷川岳の断崖絶壁を登攀中に聞こえてきた銃声。その正体は15年前の事件に…

「マタンゴの森」

昭和の頃、桐生駅そばの火葬場跡地で目撃されたゾンビ。かつてそこでは悍ましい事件が…

「呪われた男」

いじめで自殺した少年が最期に掛けた壮絶な呪い。前橋の一家が背負う禍々しき運命とは…

著者コメント

――愛して憎め、風の東国――。

一冊すべて地元の群馬県を舞台にした怪談集は、これが三作目となります。本書では、既刊二作と同様に、群馬県内の名所や名物を紹介していますが、〈負け続けてきた国〉である苦い歴史や、過去に起きた陰惨な事件事故に関連したヘビー級の怪異をこれまでよりも数多く取り上げました。滅びつつある〈上州弁〉にも御注目。

より怪物化した〈シン・群馬怪談〉をお楽しみいただければ幸いです。

試し読み1話

「大音量の彼女」

 私が主催する「高崎怪談会」は、私が選んだ出演者だけが怪談を語り、観客に聴いていただく回もあれば、来場者は誰でも体験談や蒐集した話を語ることができる回もある。これは後者で、ある寺の講堂を借りて参加者が車座に座り、順番に持ちネタを語っていったときのことだ。その席で五十代の男性Vさんが語った話を取り上げてみたい。
 高崎市街地に住む彼は、若い頃にRさんという女性と交際していた。夜遅くに彼女の家に電話をかけたり、訪問したりすると、常にテレビとラジオを大音量で点けていた。非常にうるさくて話しづらい。理由を訊くと、何者かの泣き声や足音が頻繁に響いてきて落ち着かないので、聞こえないようにするためなのだという。
 Vさんが少し体調を崩したとき、無理をして会いに行くと、Rさんは渋い顔をした。
「今、あなたの身体に人の顔をした、蛇みたいなのが巻きついてるの。あたしにゃ何もできないけど、その相手に、離れて下さい、ってきつく言ったほうがいいよ」
 体調が悪いことは内緒にしていたので、Vさんにとっては寝耳に水だったそうだ。
 Rさんから言われた通りにすると、たちまち快復した。
 後日、Rさんを車の助手席に乗せて夜のドライブに出かけたときのこと。
「向こうから来るの、生きた人間じゃないよ」
 Rさんがそう言うので、車の速度を落として前方を凝視すると、喪服を着た女が歩いてくる。スカートを穿いているので性別がわかったが、その女には首がなかった。
 擦れ違ってからバックミラーを覗くと、女の姿は消えていた。
 以前からVさんは、俺も怪奇現象を見てみたいものだ、と思っていたので、
(とうとうやったぞ! 凄えもんを見たぜ!)
 うれしくなり、翌日、目撃談を勤務先の同僚たちに語って自慢した。
 だが、その晩のこと。
 彼が仕事帰りに車を運転していると、左手の前方から人影が歩道を歩いてきた。近づけば、喪服を着た女で首がない。
(一昨日の女きゃあ!)
 その刹那、女の胴体が蛇のように長く伸びた。こちらに向かってくる。
 轟音と激しい衝撃――。
 女に吸い寄せられたかのように、対向車が突っ込んできたのだ。
 Vさんの車は運転席が半分ほど潰れてしまった。彼は重傷を負って、救助されるまでの間、少しも動けず、救急車で病院へ搬送された。
 首のない喪服の女は、いつの間にか、いなくなっていたという。
 対向車の運転者は、
「急にあのときだけ、居眠りをしてしまって……」
 と、後日に謝罪してきた。
 Vさんは死にかけて長いこと入院していたが、彼女のRさんは、頻繁に連絡を取ることも会うこともできなくなると、他の男性と交際を始めて去っていった。

 おまけにVさんは、この話を「高崎怪談会」で語ったところ、その夜のうちに激しい腹痛に襲われたそうである。

朗読動画(怪読録Vol.88)

【竹書房怪談文庫×怪談社】でお送りする怪談語り動画です。毎月の各新刊から選んだ怖い話を人気怪談師が朗読します。

今回の語り手は 怪談社の 上間月貴 さん!

【怪読録Vol.88】死を運ぶ化け物車いす!?群馬県高崎市の実話—戸神重明『上毛鬼談 群魔』より【怖い話朗読】

商品情報

著者紹介

戸神重明  Shigeaki Togami

群馬県出身在住。単著に『怪談標本箱』シリーズ(「生霊ノ左」「雨鬼」「死霊ノ土地」「毒ノ華」)、『群馬百物語 怪談かるた』、『恐怖箱 深怪』。その他、『田舎の怖イ噂』『恐怖箱 煉獄怪談』『怪 異形夜話』など共著多数。地元の高崎市でイベント「高崎怪談会」を主催、その傑作選を纏めた『高崎怪談会 東国百鬼譚』では初の編者も務めた。多趣味で昆虫、亀、縄文土器、スポーツ観戦、日本酒などを好む。

シリーズ好評既刊 

群馬百物語 怪談かるた

群馬県出身在住の著者が紡ぐ地元の実話怪談。飛び降り自殺の多発するマンション。落下地点に何が…(高崎市)、血吸い岩と呼ばれる公民館の奇岩。その上に寝た者は…(前橋市)、殺人現場の路面に何度も浮かぶ赤黒い染み…(伊勢崎市)、富岡製糸場の乾燥場を撮ると写真に妙なモノが…(富岡市)、殺害現場に建つ供養の〈姫地蔵〉。それが笑うのを見た者は…(桐生市)、人を呼び寄せる魔の廃墟、伊香保の森に何が…(渋川市)、夜桜の下に浮かぶ生首の群れ…(沼田市)、戦闘機の亡霊が爆音をあげる…(太田市)他、全て実話の怪奇百!

高崎怪談会 東国百鬼譚

群馬県高崎市で地元の怪談家を中心に開かれてきたご当地怪談会〈高崎怪談会〉。今回は主催の戸神重明のもと、籠三蔵、北城椿貴、しのはら史絵、春南灯、マリブル、夜馬裕――高崎怪談会の歴史を彩ってきたゲスト6人が大集結。2015年よりこれまで20回以上開催されてきた中でも特に忘れがたい恐怖譚と、新作書き下ろしを贅沢に収録。「高崎の四つ辻」「高崎郊外の古寺」(戸神重明)、「赤城山の夜道」(マリブル)他、群馬の怖い話もが満載!

この記事が気に入ったら
フォローをお願いいたします。
怪談の最新情報をお届けします。

この記事のシェアはこちらから


関連記事

ページトップ