奇妙な風習に彩られた超ディープな村怪談「裏S区」あらすじ・感想まとめ – 2chの怖い話
裏S区とは・あらすじ
裏S区は2chのスレ「洒落怖」発祥の怖い話である。
舞台は、九州のとある地域にあるS区と裏S区。S区に住んでいた投稿者は、裏S区出身のAと同じ学校に通っていて仲も良かった。
しかし、あるときAは人が変わったように投稿者をいじめだす。そして投稿者は裏S区と呼ばれる地域の特異性を知ることになる…。
起:飛び降り自殺を目撃
事件が起きたのは、投稿者が高校生の時である。投稿者はS区と呼ばれる地域に住んでおり、裏S区と呼ばれる地域もあった。投稿者には仲の良いAという友人がおり、Aはその裏S区の地域出身であったが、投稿者と同じS区の学校に通っていた。
高校1年生の時、それまで仲の良かったはずのAが、いきなり投稿者をいじめ始めた。うっすら笑いながら、何も言わずただただ殴る蹴るの暴行を毎日のように投稿者に加えるA。投稿者が理由を聞くも、Aは答えない。
ひたすら耐える日々を過ごしていたが、ある日いきなりAが学校に来なくなった。それからしばらくして投稿者は教師から奇妙なことを聞かれる。「投稿者がAをいじめたのではないか」、「Aは投稿者のことが怖いと言っている」と。
いじめていたのはAのほうなのに…。事実とは反対のことを言われ、何もしてくれない先生や周囲に憤った投稿者は学校に行かなくなる。
そして、投稿者は登校拒否をしていた期間中に、ある恐ろしい出来事に遭遇した。
住んでいるマンションで飛び降り自殺が起き、その場に居合わせてしまったのである。投稿者がエレベーターホールでエレベーターを待っていたところ、「ギぃーーーーー」という奇怪な声の数秒後、「どーーーーん!」と大きな音が聞こえた。自殺者が自転車置き場の屋根に落ち、その音を聞いてしまったのだ。しかし、本当に恐ろしい体験はここからだった。
投稿者は恐々としながら自転車置き場を見下ろしていたが、前を向きなおして、ふと螺旋階段のほうを見た。すると、自殺したはずの人間がゆっくり降りているのが見えた…。
そしてエレベーターが到着した「ピン」という音がして振り返ると、「どーーん!」という音が再び聞こえた。エレベーターの中から音がする…。それは一度ではない。エレベーターの中からは「どーーん!どーーん!」という音が繰り返し聞こえてくる。
恐怖がピークに達したのか、投稿者は発狂状態になり、意識を失ってしまった。
承:裏S区出身者の事情
病院に運ばれた投稿者は1週間ほどで回復したが、「どーーん」という音がずっと耳から離れなかった。その後、投稿者は学校に復帰したが、Aはまだ戻ってきていなかった。
ある日、投稿者は昼休みに早退をする。その帰り、以前、学校に郷土史の授業に来ていたおじさん(以降、Bさん)に出会った。その人は、Aの叔父にあたる人物だった。
投稿者はBさんとは面識があったが、この時はいつもと様子が違った。Bさんは投稿者を見ると「あ~・・・」と言い出し、お経を唱え始めたのである。精神的に追い詰められていた投稿者は、Aの親戚ということもあり、その態度に腹立たしくなってBさんに殴りかかってしまう。Aへの怒りも混じり、罵倒しながら蹴り続けていた。
するとBさんは急に笑い出し、蹴られながら、「ははは、やっと会えたわ。はははそりゃAも****やなー。ははは」と訳の分からないことを言い始める。投稿者が言い返すも、「○○君、ちょっと黙っとき。おじさんが良いって言うまで黙っとき」と要領を得ないことを言う。
そんなやり取りを続けていると、「どーーーーーん」と耳元で音が鳴った。投稿者は驚いて振り返ると、そこには、のっぺりとした細面の顔があった。通常ではありえないが、何かに隠れているわけではないのに顔の半分だけ見えた状態で、さらに血だらけのままピクピクしながら笑っていたのである…。その顔を見た瞬間、投稿者はBさんに殴られて意識を失ってしまう。
目が覚めると投稿者は家にいた。リビングでは投稿者の両親とBさん、Aの叔母(以降、Cさん)が話し合っている。
投稿者はBさんを見た瞬間、怒りが込み上げてきて殴りかかるが、両親に止められた。数分後、投稿者は落ち着きを取り戻す。すると、Bさんは投稿者に殴ったことを謝罪し、何が起きているかを話し始めた。
Aたちが住んでいる裏S区と呼ばれる地域は霊の通り道であり、そこに住んでいる者はほとんどが霊感を持っているという。霊感が原因で発狂してしまう人間も少なくないそうだ。
Bさんが投稿者を見るやいなやお経を唱えたのは、投稿者にナニかが憑いているとすぐ分かったからだそうだ。殴ったのは霊を追い払うためだった。
Aも発狂したのかと思ったが、Bさんによると違うらしい。Bさんの家系では「霊を見つけた時は笑うことが対処法」で、Aは投稿者に憑いたものを追い出そうとして動いていたのだと。笑うことには、霊に対して「こっちは余裕だ、お前ごとき」と知らせる意味があるらしい。笑うと同時に憑かれている人を叩くことで霊が逃げ出すそうだ。しかし憑いたものが強力過ぎて、Aは恐れをなして休んでいるのだという。
本来はお経を唱える必要があるらしいが、Aは見様見真似で笑いながら殴るという方法のみで除霊しようとしたため、投稿者はいじめられているようにしか感じなかったのだろう。
Bさんに「ベランダに何か見えるか?」と聞かれて見てみると、そこには、気絶する前に見たものとは別のナニかがいた…。それは今も投稿者に憑いているそうだ。家の中には入れないらしいが、投稿者は再び発狂しそうになる。
転:Aの遺書
投稿者に憑いているものは2つあるとBさんは続ける。1つは飛び降り自殺した霊、もう1つは厳密には霊ではなく、Bさんの家系では「****」と呼ばれるものらしい。口に出すと移るので決して言葉にしてはいけないという。投稿者はBさんがソレを何と呼んでいたかは忘れてしまったらしいが。
飛び降り自殺した霊は、たまたまそこに居合わせたことで憑いてしまったようで、ベランダに見えていたのはその霊だった。Aが追い払おうとしたのは、もう1つの「****」だったようだ。
投稿者はBさんとCさんから御祓いを受け、ベランダの霊は見えなくなった。「****」もBさんとCさんが祓ってくれたらしい。
次の日からは普段通りに学校に行くようになった。しかしその日にAに異常が起きたらしく、家出の手紙を残してAが行方不明になった。
Aが行方不明になって3日目の朝、投稿者は再び「どーーーん!」という音を聞く。怖かったが、家の中だったので夢だと思うことにした。しかしその後、Aが飛び降り自殺をしたこと、自殺した時間帯が朝方であったことを知る。
Aは遺書を残しており、そこには「ごめん、本当にわるかったね。多分俺らの家系はちょっと頭がおかしいのが多いんやと思う。自分の家系のせいにしたくないけど、お前を殴ったのは本当に悪かった。ごめん。」と、投稿者に対する謝罪の言葉が綴られていた。
Aの通夜が行われたが、それは一般的なものとは大きく異なっていた。Aの遺影は飾られておらず、代わりに棺桶にAの名前を書いた紙がびっしりと貼られている。Bさんが言うには、遺影を置くと見るに耐えないほど顔が奇怪に変形してしまうそうだ。棺桶に名前を書いた紙を貼るのは、こいつは「****」ではないと示す意味があるとのこと。
そして通夜会場で、投稿者はAの父親から話しかけられ、Aが家出する時に残した手紙を見せてもらった。
その内容は、「〇〇にあいつが憑いてたけど、今はずっと俺を殺そうと見張っている。おじさん(Bさん)が投稿者を御祓いしたから俺に来たようだ。お父さん(Aの父)は御祓いできないだろうから、別居しているお母さんの方に行ってみる」というものだった。
結:憑きモノの正体
Aの葬儀から数日後、Bさんが投稿者に憑いていたものの正体を語った。どうやら「****」はAのおばあさん(Bさんの母親)で、飛び降り自殺した人も裏S区出身で「****」に追いかけられていたそうだ。「****」が投稿者に取り憑いた理由は不明だが、以前Aの自宅に行ったときに取り憑かれたのではないかという。
投稿者は螺旋階段で見た人(飛び降り自殺をした人の霊)や、Bさんに殴られる前に見た半分だけの顔のことも聞いた。
螺旋階段で見たのは自殺した人が、自分が死んだと気づかずに自分の体を取りに行こうとしていた場面ではないかとのこと。霊体は体を取りに行くのを邪魔されると呪いをかけるそうだ。投稿者は邪魔はしていないと言ったが、エレベーターを呼んだときの「ピン」という音に反応し、邪魔されたと思って取り憑いてしまったのだという。
半分だけの顔はそれがまさしく「****」らしい。Aの父親は自分の母を消せないので御祓いを避けていたが、Aが死んだことで腹を決めて御祓いをしたという。
Bさんが帰ることになり玄関まで見送った。Bさんが玄関を出た直後に、「あはははははは!」という笑い声が聞こえた。Bさんが一人で玄関前で笑っている…。「早く帰れ!」という怒鳴り声も聞こえた。しばらくして声が聞こえなくなり、投稿者の父が外を見ると、Bさんはまだエレベーターホールでニヤニヤしていたそうだ…。
その後、投稿者と両親は有名な神社で御祓いを受け、家も引っ越した。引っ越し先もS区だったが、他の地区の学校に転入し、それ以降は裏S区に近づくこともなかった。
裏S区は現在、新S区と名前を変えているが、地域性自体は変わっていないと投稿者は語る。Bさんとは一切関わりを絶ったので、その後どうなったのかは分からない。
カテゴリ——2chの怖い話
裏S区を読んだ人の感想
怖いけど面白い。最初はAに何かが取り憑いたのか?と思ったものの、まさか投稿者に取り憑いていたとは思いませんでした。しかもAはイジメで投稿者を殴っていたのではなく、助ける為だったとは。意外な展開で驚きましたね。あと怖かったのは取り憑いていたものですね。その正体はAのおばあさんということですけど、普通の人間がそういう物に変異してしまうとか怖すぎでしょう。ラストのBさんが笑うところも、ゾワゾワきました。除霊はしたようですけど、まだ家の前に何かがいるんだな・・と。そんなところで生活するなんて無理ですよね。そりゃあAの両親も引っ越したくなるというものです。ただ怖いだけでなく裏設定もしっかりできていて、”怖いけど面白い”と感じる話でした。
起の部分で投稿者に襲いかかった怪奇現象とAの変化を読んだ時には、この先どういう恐怖が待っているのかを想像してドキドキした。特に自殺を目撃してからの怪奇現象は、エレベーターという中の見えない箱が目前にあって、一瞬そこから何か現れるのではないかと先を見るのが怖かった。そのため音だけで投稿者が気絶してしまった展開は残念である。中盤は恐怖と共にAさんのカッコよさや友人思いの部分が強調されていて、物語のアクセントとして良かった。そして同時にAさんの自殺を密かに準備していた気がする。結の最初の方は勿体なかった。Bさんのネタばれ解説のような感じになってしまい、先を期待するような怖さがないのが残念だ。ただ最後のBさんの笑い声は、いろいろ想像できてザワリと鳥肌が立った。Aさんのお祓い方法をまねていたのか、それともBさんそのものが憑依されてしまったのか、先の見えない表現で余韻の残る怖さを上手く表現したものである。
初めのうちは一体何がなんやら分からず難解に感じました。想像しにくいと言ったら分かるでしょうか?状況を想像するのに手間取る感じで読みにくい。しかし、読み進めていけば、「あー、そういうことだったのか!」と謎の解けた感覚に襲われますね(笑)。怖いというよりも、意味を理解するので精一杯。まぁ、結局のところ裏S区というよりも、Aの家系にまつわる話だったような気がしないでもない。裏S区の人みんなが霊感を持っているようには到底思えない物語になっていたのが残念でした。怖さもそれほどでもなかったなぁという印象です。
その後どうしたのかと気になる終わり方でしたが、Bさんが無事であってほしいなと思います。憑かれるということを耳にしたことはありますが、実際にそういった体験をしたことも、した人にも出会ったこともないため、どんなものかと思いましたが、奇妙すぎるものに狙われ憑かれるのは本当に身も凍る思いでした。御祓いをしようとしてくれたAが亡くなったのは残念でしたが、再び聞かれた「どーん」という音に、終わったのではなかったのかと恐怖心がよみがえりました。
Bさんはもともと霊の存在自体を知っていたと思うし、裏S区の霊の番人的な存在ではなかったかと予測してみる。たまたま投稿者に取り憑いたのではなく、Bさんが霊を成仏させたくなかったせいで、裏S区にこのような例の通り道的な噂が広まったのではないかと思います。そう考えるとAと仲の良かった投稿者は取り憑かれるのも時間の問題だったと思うし、その後の裏S区も名前は変わってもかつてと変わらずの状態で、霊が彷徨っている可能性が高いのかなと思ってしまいました。
霊の通り道である裏S区でほとんどの住人が霊感を持っているのは分かったが、かわいそうなことにAはその霊感的な能力がなかったせいか、ターゲットにされてしまったのではないかと思います。実際にストーリーを読んでも、取り憑かれたのは投稿者とAだけですし。霊の通り道というか、Bさんが母親の霊と知っていながら成仏させたくないという曖昧な気持ちを持ってしまったせいで、このような悲しい結末になったのだと思います。投稿者は引っ越して関係を絶ったと言っていますが、今でも裏S区にはBさんとその母親の霊は現存していると思います。
正直、読んでいて最後まで話の全容がつかめないまま進み、よく分からないまま終わってしまう感じの内容であった。絶叫するとか怖いというよりは、気味が悪いとか奇怪な感じがする話だなという感想を得ました。結局、この話に出てくるAやBさんが話している怖いものの正体は基本的にはいわゆる霊であり、その霊に対する怖さ、対処方法が変わっているという内容であり、恐怖を感じることはなかった。また、裏S区というよりは、そのAの一家が変な家系なのではないかという感想を抱かざるをえなかった。
とても複雑なストーリーで登場人物が多いことや、名前のない****はAのおばあさんとのことだが謎すぎて何度読んでも理解しきれなかったです。少し話が複雑すぎていた気がします。自殺した人が自分が死んだと気づかずに自分の体を取りにいくという表現は、とても怖い映像がイメージしやすくて身震いが止まりませんでした。投稿者を笑って殴る理由も何となく納得できましたが、いずれにしても謎が多く怖さを感じるというよりもミステリーを深く感じました。ミステリーのジャンルでは秀逸な作品だと思いました。
かなり筋書きのしっかりとした話に思えた。例えば、ショートショートであるならば、前半に一見意味不明の出来事が次々と起こり、後半にその理由が明かされるという手法がとられることがある。この話はそうした小説の構成に類似している。ただこれは、投稿者が自分に起きたことを後になってすべて消化した上で語るために再構成しているためかもしれない。なぜならばこれを作り話とするには、未消化のまま終わっている部分が多くあるからだ。だがそこにリアリティがある。 しかしなお解せないのは、例えばAが"お祓い"をはじめた時になぜそれを説明しなかったのか。 そしてAに説明できない理由があったならばBはなぜ説明できたのか。 さらには裏S区にそうした歴史があるのだとしたら、なぜ住人たちは未だにこうも要領を得ないままなのか。 それらの点には疑問が残るが、事実とは得てして要領を得ず、物語のように上手くは完結しないものではある。
憑き物の正体を伏せ字にすることによって怖さが倍増されている。伏せ字の名前を想像するだけでこちらも呪われるのではないかという恐怖があった。最後Bさんは一体何を祓おうとしていたのか、伏せ字の憑き物が帰ってきたのか、それとも憑き物となったAなのではとも考えたが、最後まで正体が分からないところも怖かった。完全な、めでたしめでたしでないところが後を引く怖さだった。それにしてもAは、どうして投稿者が取り憑かれていることを本人に教えなかったのだろうか。そこが少し疑問に思う。
「裏S区」という言葉自体は聞いたことがあったので、怖いんだろうなと思いながら読んだがなかなか不気味な話で面白かった。土着の文化の違いによる勘違いが徐々に紐解けていくのが興味深かった。後半、Bさんという人物によって、前半では「理解できないがゆえに感じる恐怖」が、「一応の説明がつき辻褄は合うようになったが理解には苦しむ異質さ」に話の内容がシフトしていくことになるのだが、それでも怖さを失わないところが非常にリアルで良いと思う。「ドーン」という大きな音というのが余韻として残るのもいい。
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