【日々怪談】2021年8月13日の怖い話~怪談を聞いていたら
【今日は何の日?】8月13日:怪談の日
怪談を聞いていたら
和田の部屋に集まってきたのは暇人ばかり三人。
よく晴れた昼日中、野郎の部屋に集まってくるような連中だけあって、特に色気のある話も出てこない。
自然と、話題は怪談になった。心霊スポット巡りをした武勇談を自慢しあうのだ。
薄気味の悪い廃病院に潜り込んだ話などを聞いていると、にわかに窓の外が暗くなった。最前までの青空は一気にかき曇り、辺りは宵の口のような暗さになった。
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……。
「なんだ、今の。雷か?」
「いいねぇいいねぇ。怪談にお誂え向きの雰囲気ってやつで」
かえって興がのっていい、などと余裕のあることを言い出した、その矢先。
「ゴホッ、ゴホッ」
咳き込む声がした。
友人の誰かかと思って和田が顔を上げると、目の前の悪友二人は和田の背後を凝視している。
「……なに?」
悪友は唇に人差し指を当てた。
「ゴホッ、ゴホッ」
再び咳き込む声が聞こえた。
さっきよりもハッキリと、和田の背後からだ。
振り返る。
そこにあるのは万年床を押し込んだ押入だけだ。
三人は顔を見合わせた。先ほどまでの元気は消え失せていた。
押入を開けることも、話を続けることもできなくなった。
〈……出ようぜ〉
目配せして部屋を出ると、天気はあっという間に回復。
悪友二人は顔を見合わせ、「ちょっと用事できたから帰るわ」と足早に立ち去った。
そして、和田だけが残された。
「……今夜、どうやって寝りゃいいんだよ、くそっ」
布団は押入の中にある。が、一人で開ける勇気はない。
――「怪談を聞いていたら」加藤一『禍禍―プチ怪談の詰め合わせ』より
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