【日々怪談】2021年4月28日の怖い話~草むしり
【今日は何の日?】4月28日: 庭の日
草むしり
小松さんは、小学校の四年生の夏休みに母親から草むしりを頼まれた。
田舎なので庭は広い。だが家族の誰もがずぼらなので、背の高い草も低い草も生い茂り、荒れ放題であった。ヤブ蚊を始めとした虫も湧いた。
お手伝いをすれば小遣いをもらえるという約束だったので、小松さんは蚊取り線香をもうもうと焚き、張り切って草をむしり始めた。
三十分ほどの間に背の高い草を刈っては、それを順調に庭の隅にまとめていく。
娘だけにさせておくのも気が引けたのか、母親も参戦し、二人で手分けして庭の手入れを続けた。
小松さんが庭の一角に生い茂る草を分けると、地面に女性の顔が落ちていた。
最初はお面が落ちているのだと思った。だがよく見ると、仰向けになった顔の前半分、耳から前が地面から生えていた。かっと目を見開いて空中を見据えている。
怖くなった小松さんが母親の所に走っていき、今見たものを説明すると、母親は笑うでもなく疑うでもなく、
「あぁ、それならいいよ」
と言って、小松さんに家に上がるように指示した。
それ以来、一度も草むしりを手伝えと言われたことはない。
小遣いは約束通りもらえたが、何とも腑に落ちなかった。
今も庭は母親が時々申し訳程度に世話をしているが、全くの荒れ放題である。
――「草むしり」神沼三平太『恐怖箱 百舌』より
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