【日々怪談】2021年6月23日の怖い話~繰り返す
【今日は何の日?】6月23日:不眠の日
繰り返す
広島に住む中学生の橋本さんは、その夜、妙な予感がしていた。
眠れない嫌な時間が過ぎていく。夜が更けていくに従って、不安感は増していった。
布団の中で何度も寝返りを打つ。
ふと何かに呼ばれるように暗がりの中で目を開いた。天井を見上げる。
すると、ぼんやりとした暗闇に落ち武者がくっきりと浮かんでいた。
着物を着込んではいたが、その服装は乱れていた。戦闘の後なのだろうか、口から血を滴らせている。
目はカッとを見開き、橋本さんを睨み付けていた。
それを見た刹那、あまりの恐ろしさに意識を失った。
落ち武者を見てから二週間が経った。
その夜は珍しく早く寝付いたが、深夜に首の後ろに違和感を覚えて目を覚ました。
橋本さんはベッドから上半身を起こした。
何があるのかと後ろを振り返った。
そこには、あの落ち武者がいた。
落ち武者は腕を伸ばし、橋本さんの首の後ろを優しく優しく丁寧に撫で擦っていた。
――「繰り返す」神沼三平太『恐怖箱 百聞』より