竹書房怪談文庫 > 怪談NEWS > イベント・配信 > 【怪談コンテスト】怪談最恐戦 > 8/23怪談最恐戦2020東京予選!最アツ現場レポート前編【卯ちりイベントレビュー】

8/23怪談最恐戦2020東京予選!最アツ現場レポート前編【卯ちりイベントレビュー】

Pocket

8月23日、怪談最恐戦の東京予選会が開催されました。

前週16日に開催された大阪予選会に続き、白熱の怪談バトルが繰り広げられた今大会は、21名の出場、3名×7ブロックというボリューム。

年々注目度が高まり、それに比例してクオリティ・バラエティともに拡大しつつある第3回目ですが、今年の最恐戦は100名を超える応募となり、二次審査での動画投票も含め、出場を決めるまでにも大接戦の戦いがあったのは、言うまでもありません。

怪談最恐戦は、怪談ファン・観客の皆さんにとっては、既に活躍中の人気怪談師たちによる総合格闘技的オールスター戦としての魅力がありつつも、公募のコンテストという性質上、新人発掘の側面もあります。

既に人気のある怪談師が実績を得ることで、さらに評価が高まったり、一方でコンテストやイベント出演未経験の出場者が、怪談最恐戦をきっかけに活動を始めたり……。

そういった背景もあり、3年目となる今回の東京予選会は、ゲスト審査員を怪談番組プロデューサー陣で固め、また審査講評や審査結果内訳を公表することで、より「勝敗」という結果が面白いイベントになっていたのではないでしょうか。

東京予選会の審査員は、DVD「実話怪談俱楽部」の門澤清太さん、Channel恐怖の高橋宏行さん、そして「怪奇蒐集者」の小林忠さん。怪談番組・DVDのプロデューサー揃い踏みで、今回は番組出演オファーの特別賞「実話怪談倶楽部賞」もありました。

当記事では、各ブロックでの出場者たちの接戦の攻防に触れつつ、勝因は何か? 勝ち負けの基準はどこにあったのか?を考察し、イベント全体をレポートします!

無料で読める怪談話や怪談イベント情報を更新しています

Aブロック

本日のトップバッターは伊山亮吉さん。昨年は決勝進出を逃したものの、最恐戦は3回連続出場です。

伊山亮吉さん

別々のお客さんから聞いた話というネタのフレッシュさ、情景描写の巧さもさることながら、一番手として存分に会場の雰囲気を盛り上げてくれた点でも高評価となりました。会場・ネットの観客審査、ゲスト審査員3名の投票結果は伊山さんで満場一致。出演者や審査員からもえづくのをツッ込まれ、愛される伊山さん。さすがです!

一方、ごとうさんは実体験をカジュアルに語ることで怖さが引き立ち、みちくささんの一人称視点で語られる怪談も、個性が光るお話でした。

大吟醸ごとうさん
みちくささん

審査では三種三様のテクニック系と評されたAブロックですが、怪談語りの場数と場慣れが効いている伊山さんが、やはり「強い」のだと感じます。

Bブロック

昨年度のファイナリスト、夜馬裕さんが圧勝で勝ち抜き。

夜馬裕さん(今月末に単著『厭談 祟ノ怪』発売!)

「自分の好きな怪談を、自分の好きなスタイルでしか語れない」と断言する夜馬裕さんですが、自身の作り上げた怪談のスタイルが、総合的に評価されているのだと思います。厭な話に特化したネタ、一筋縄ではいかない話の展開、語る話の陰惨な内容にそぐわない嬉々とした表情……。ますます磨きのかかった「夜馬裕節」ですが、5分という短い尺の怪談よりも、本来は長尺で発揮される方でもあります。ファイナルでは制限時間が長くなると思うので期待しましょう。

会場票は割れたものの、ぬらぬらさん、弟ひろのりさんも、それぞれ魅力的な「厭な話」を語ってくれました。審査講評では粒ぞろいとコメントがありましたが、芸人としてスキルのあるお二方の語り口も、初見ながら引き込まれました。

ぬらぬらさん
弟ひろのりさん

Cブロック

賞レース常連、怪談最恐戦のみならずOKOWAでもお馴染みの匠平さんが、納得の勝利。

匠平さん

今回の匠平さんの語りは、なんといっても(DJ響さんの眼鏡を上げるクセという)掴みのトークが巧いというのと、5:59というペナルティのつかない制限時間ギリギリを攻めていくカンの良さが凄いと思います。

それらのスキルは、会場にいるお客さんの雰囲気を体感で把握しながらパフォーマンスをする中で培われたに違いなく、スリラーナイトでこなすステージ、イベント出演、制限時間のある賞レースの出場といった、経験値の賜物です。

ゆえに匠平さんは最恐戦の場でも圧倒的に強いのですが、一方やまげらさんは既出のお話で挑んでいたのも、潔く感じました。語られた怪談は川奈まり子さんの著作でも拝読できる話ですが、後日談が気になるところです。コンテストの勝敗という点では既出作品は不利かもしれませんが、話の出所が明瞭なのは良心的だと思います。

やまげらさん
やまげらさんが語ったエピソードが収録されている『一〇八怪談 鬼姫』(川奈まり子/著)

そして今回、ぱんちさんが実話怪談倶楽部賞に選出され、番組出演オファーとなりました。YouTubeで活動されているぱんちさんですが、醸し出す表情や雰囲気と、自身でストックされている怪談の「濃さ」が、素敵にマッチしていたと思います。また、「(昨今話題になることが多い)あおり運転に絡めて話を膨らませてもいい」という小林審査員からのアドバイスもありましたが、この指摘はかなり興味深いと思います。配信での語りと怪談ライブや番組での語りの、それぞれの媒体で希求される面白さの違いといえばいいのでしょうか。YouTubeの配信では、チャンネル登録者のリスナーに対して、短い更新スパンで話をアップロードする回転率とニッチさが求められると思いますが、番組ではより一般向け、不特定の初見の人に刺さる「怖さ」の要素が必要、ということなのかもしれません。

ぱんちさん

そしてOAされた実話怪談倶楽部では、ぱんちさんが見事MVKを獲得! これからの活躍にますます期待です。

レビュー

以上の前半戦、いかがでしたでしょうか。

観客としては、新しい「推し」を見つけたり、応援している怪談師に審査票を投じて活躍を応援したりと、能動的な楽しみ方ができるのが最恐戦の良いところ。

前半A~Cブロックにおいては、審査結果(会場・ネット・3名のゲスト審査員)はすべて一致していたため、結果に驚くことはなかったように思えます。既に実力が評価され、活躍しているお三方の圧勝となったため、ほぼ予想通りと感じた方が大半ではないでしょうか。

しかしながら、後半のD~Gブロックに突入したとたんに票が割れ、審査に悩む人が増えてきたのが、今回の東京予選会の面白いところ。

後半各ブロックが、個性の殴り合いの印象が強いメンバーで組まれたことで、会場とネットの各観客票、ゲスト審査員お三方の評価が異なる展開となっていました。

後半ブロックについては後述しますが、キャラクター性が強い語り手たちを前に、観客の皆さんが何を基準に評価の甲乙をつけたのかが興味深く、怪談に対する観客個々の批評眼も鍛えられた審査だったのではないかと思います。

ネームバリューも様々、性別年齢のバラエティに富んだ語り手に対し、話芸(いかに怖さを伝える語りができているか)という明確な最恐戦の審査基準でジャッジするのは難しく、好き嫌いで決めるとしても、迷う点はあったかと思います。

たとえば、叫んだり大声を出す語りは(特に配信ではノイズに感じて)好まれない傾向にあるものの、今回の出演者の多くは大声の場面を作っていました。また、パフォーマンスの技巧が目につきやすい、作り込まれた語りよりも、実話怪談の感触を感じやすいナチュラルな語り口のほうが好まれる傾向もあります。

それらを加味し、語りに優劣をつけるとしたら「キャラクターを出しすぎている語りは好きじゃないけど、キャラ立ちしている人には惹きつけられる」とか、「大声は苦手だけど、あの人のオーバーな表現は耳障りじゃなくて面白い」とか、「語る順番が良かったから」などの「気づき」があったのではないかと思います。

特に、青柳マコトさん、宮代あきらさん、ガンジー横須賀さんの決勝進出は、それらが複雑に絡み合った結果でしょう。後半では、勝敗結果とキャラクター性について考えながら、レポートしていきたいと思います。

まとめた人

卯ちり

実話怪談の蒐集を2019年より開始。怪談最恐戦2019東京予選会にて、怪談師としてデビュー。怪談マンスリーコンテスト2020年1月期に「親孝行」で最恐賞受賞。ブックレビュワー、イベントレビュワーとしても活躍中。

アーカイブ

9月6日までアーカイブでご覧になれます(有料¥2000)

▼画像をクリックしてリンク先へ▼

この記事が気に入ったら
フォローをお願いいたします。
怪談の最新情報をお届けします。

この記事のシェアはこちらから


関連記事

ページトップ