【日々怪談】2021年4月2日の怖い話~ 絵本
【今日は何の日?】4月2日:国際子どもの本の日
絵本
「いやさ、思わず持ってきちゃったんだよねぇ」
げっそりやつれた蒲田は、ファミレスのテーブルに突っ伏した。その横には古びた絵本が投げ出されている。茶色く染みが付いており、古いものであることが分かる。
「トイレに出るんだわ」
心霊スポットから絵本を持ち帰って以来、トイレに子供が出るのだと蒲田は言った。
年の頃は小学校二年生ぐらいの男の子だという。
「もうあれから部屋に帰れなくてさ、ついさっきこれ取りに戻ったときもいたんだよね」
トイレのドアの隙間から、その子がじっと見ていたらしい。
返しに行くというので、真っ昼間に蒲田を車に乗せてそのスポットに向かった。
蒲田は絵本を抱えて廃墟に忍び込むと、絵本を置いてすぐ帰ってきた。
だが子供は消えなかったらしい。蒲田は部屋を飛び出すと、我が家に転がり込んだ。
「荷物は全部捨てていいですから!」
翌日、携帯で管理会社に連絡する蒲田は、何度も何度もそう電話口で叫んでいた。
――「 絵本 」神沼三平太『恐怖箱 百舌』より