【日々怪談】2021年4月5日の怖い話~ ドライヤー
【今日は何の日?】4月5日:ヘアカットの日
ドライヤー
ある日の風呂上がり。バスルームを出てすぐの鏡付きの洗面台にて。
陽子さんが櫛で髪を梳かしながらドライヤーを当てていると、点けっぱなしだったバスルームの明かりが急に消えた。
「あれ?」
他の電灯は点いている。停電という訳ではない。
バスルームの曇りガラスのドアに顔を向ける。
「電球が切れたかな」
と、
「熱い!」
頭部を焼かんばかりの熱を感じて、思わず声が出た。
反射的にドライヤーを手から離そうとするも、離れない。
腕が動かない。
「痛い痛い! 熱いぃ!」
目の前の鏡を見ると、ドライヤーの熱風を噴出する口から手が伸びており、陽子さんの髪を掴んでいた。
「いやぁぁぁぁっ!」
あまりの熱さに、意識を失った。
目覚めると、洗面台の前で倒れていた。
バスルームの明かりは点いていた。
抜けた髪の毛が、床に一束落ちていた。
――「 ドライヤー」高田公太『恐怖箱 百聞』より