【日々怪談】2021年4月19日の怖い話~地図
【今日は何の日?】4月19日: 地図の日
地図
十年前、橋本は地図を作製する会社でアルバイトをしたことがある。
「では、この家に行って、お名前を地図に掲載してもいいかどうか許可をもらってきてください」
アルバイトの二人がペアとなり、上司に言われた住所の建物に行き、判子をもらうだけの簡単な仕事だった。
電車で二時間ほどかけ、着いた駅から徒歩で一時間。着いたのは、転々と住居が点在する山間の中にあるプレハブの平屋一戸建てだった。
「――という訳で、よろしかったら掲載許可をいただきたく思いまして」
「ああ、いいよ。判子ね、判子。えーと、何処だったかな? 中に入って待っててよ。ここは靴のままでいいから」
その建物で二人を迎えたのは初老の男性だった。
屋内では様々な動物が飼育カゴに収まっていた。
名前の分からない鳥、蛇、イグアナのような見た目の爬虫類、小さな犬も数匹いた。
そして、兎。
円錐形の角が一本、眉間から生えた兎。
――つの? こういう兎いるんだっけ?
角の生えた兎が入ったカゴが三つあった。つまりは計三匹。
――「 地図」高田公太『恐怖箱 百聞』より