【日々怪談】2021年5月2日の怖い話~電気ポット
【今日は何の日?】5月2日: 緑茶の日
電気ポット
以前、東さんの家ではダイニングの片隅に電気ポットが置いてあった。
ある日の午後、お茶でも淹れて一休みしようと考えた。急須を取り出して熱湯を注ごうとした。そのとき、電気ポットの横の部分にある湯量確認用のスリットが目に付いた。
透明なガラスの内側から人間の目が覗いていた。
目だけではない。肌色の何かがスリットの内側にあるのが分かった。
よくよく見ると女の顔だった。目が合うと、ごぼっと口から泡を吐いた。
ぎょっとした。だがこんな所に顔があるはずがない。何かの見間違いに決まっている。
東さんはポットの蓋を開けた。当然女の頭はない。沸かしたばかりの熱湯がたっぷり入っているだけだった。
そのとき、電気ポットのタンクの内側に直接スリットがある訳ではないことも確認した。 つまり、もし先程の女の頭があるとするならば、スリットから覗くことができるだけの細いガラスの管の中に収まっているのだ。
シンクにポットを持っていき、逆さまにして湯を全部捨てた。
そして目の高さにポットを持ち上げ、スリットから内側を確認した。
スリットから見える湯量を信じるなら、捨てたはずの熱湯はまだまだたっぷりポットに残っていることを示していた。そしてその熱湯の中に先程と同様に揺れる女の首があった。
首筋から着ている服までもがはっきり見えた。セーラー服だった。女の鎖骨まで確認できた。
東さんはスリットにガムテープを貼り、すぐにポットを破棄した。
――「電気ポット」神沼三平太『恐怖箱 百眼』より
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