【日々怪談】2021年5月7日の怖い話~虫食い

Pocket

【今日は何の日?】5月7日:コナモンの日

虫食い

 もう夏になろうという時期に、仰木さんは台湾に旅行に行った。
 夜の屋台を楽しんだ後にホテルに帰ろうとして、狭い公園の横を通り掛かった。
 公園の街灯に沢山の羽虫が群がっている。その中に酷く大きな虫が一匹いた。
 でかい虫だな。流石、南国だ。
 そんなことを考えながら公園に足を踏み入れた。
 街灯に引き寄せられるようにふらふらと歩いていくと、その巨大な羽虫がこちらに振り返った。それは羽虫ではなく、人の頭に蛾の羽が生えたものだった。それが上下左右に飛びながら、大きく真っ赤な口を開ける。口には次々と周囲の羽虫が飛び込んでいく。口を閉じてくちゃくちゃと音を立てながら咀嚼する。
 その顔と目が合った。仰木さんは我に返って立ち止まった。気が付かないうちに、すぐ目と鼻の距離にまで近寄っていた。
 立ち止まったことを確認すると、顔はチッと舌打ちした。
 そしてバタバタと羽ばたいて高く舞い上がり、暗闇の中に消えていった。

――「虫食い」神沼三平太『恐怖箱 百眼』より

#ヒビカイ # コナモンの日

この記事が気に入ったら
フォローをお願いいたします。
怪談の最新情報をお届けします。

この記事のシェアはこちらから


関連記事

ページトップ