【日々怪談】2021年5月22日の怖い話~カベタマゴ

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【今日は何の日?】5月22日:たまご料理の日

カベタマゴ

 小学生時代の駒形さんは、特撮番組の怪獣ケシゴムを集めるのが好きだった。
 日曜日の早朝に、走って五分ぐらいの所にある駄菓子屋の前に行き、お小遣いから二十円でガチャポンをするのだ。それが何よりも楽しみだった。
 その駄菓子屋は店主が老人だったためか、朝六時ぐらいから店を開けていた。
 両親がまだ寝ている間に家を抜け出す。その駄菓子屋までわくわくしながら行き、おじいちゃんおばあちゃんに挨拶してガチャポンを回す。
 既に持っているものとダブったりしてハズレの週もあれば、自分が好きな怪獣が出るアタリの週もある。
 今週はアタリだった。
 ほくほく顔で家へ走る。その途中にある中学校の路地の前で、来るときにはなかった、ただならぬ雰囲気を感じた。
 駒形少年は立ち止まった。
 その路地から、壁の方向に向かって何か薄く赤茶けたものが滑るように飛び出してきた。
 それは卵だった。
 卵は路地から現れると、壁に吸い込まれるように空中をスーッとまっすぐ移動し、壁に触れた瞬間、パシャッという軽い音を立てて砕けた。
 卵の黄身と白身が混ざった液体が撥ねて壁に広がり、重力に従って壁面を垂れ始めた。
 駒形少年は、壁に付いたドロリとした黄色い跡と、今し方卵が飛び出してきた路地とを交互に見た。
 おかしな雰囲気はまだ消えていない。
 駒形少年は、じっと路地を見据えた。
 予想通り二個目の卵が現れた。
 先程と同じ勢いで壁にぶつかり、湿った軽い音を立てて砕けた。
 その音を合図に駒形少年は路地まで走って、路地の奥を怖々覗き込んだ。
 誰もいなかった。
 路地は私道で、奥に門がある。その間には隠れる場所は一切ない。
 振り返って、今度は中学校の壁を確認した。
 だが、やはり二つのドロリとした黄色い跡が重力に引かれるままに、線を描きながらへばり付いているだけだった。
 駒形少年は家まで一目散に帰った。
 両親はまだ寝ていた。母親の布団に潜り込んだ。

 夕方見にいくと、中学校の壁には卵の中身が壁を伝わった痕が残っていた。
 数えてみたところ、都合六個分の卵が壁面に砕けていた。

――「 カベタマゴ 」神沼三平太『恐怖箱 百聞 』より

#ヒビカイ # たまご料理の日

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