【日々怪談】2021年6月1日の怖い話~シリョウ
【今日は何の日?】6月1日:写真の日
シリョウ
健太が高校生の頃の話だ。
健太には晃士という漫画家志望の友人がいた。
ある日、晃士が健太を墓場に誘った。
理由は、漫画の背景に墓場のシーンがあるので資料として写真を撮りたいとのことだった。
二人は学校が終わってまだ明るいうちに近所の墓場へ行った。
晃士は着くなり早速、鞄からデジカメを取り出して、一枚シャッターを切った。
パリッ。
聞き慣れないシャッター音が響いた。
横に立つ晃士を見ると、既にカメラを下ろしていた。
晃士の眼鏡は、大量の細かいヒビで真っ白になっていた。
二人は一目散に帰った。
後に二人で確認したところ、撮れた一枚の写真は何の変哲もない墓場の風景だった。
――「 シリョウ」高田公太『恐怖箱 百眼』より