【日々怪談】2021年7月11日の怖い話~行列
【今日は何の日?】7月11日:名護の日
行列
初夏、東京郊外の国道。
若松さんは一人、歩道を歩いていた。
大型書店で立ち読みを済ませた後に立ち寄ったラーメン屋で、思いの外、手酌酒が進んでしまい、店を出たときには深夜二時を過ぎていた。
この時分ともなると車道を走るのは大型トラックがほとんどだ。
程よい酩酊感を感じながら、マイホームまで三十分ほどの道のりをゆっくりと歩く。
嫁と息子は実家に遊びに行っているため、急いで帰る必要もない。
のんびりと休日を過ごしたせいか余り疲れはなく、足取りは軽い。
〈ああ、楽しい……にしても、この時間だと誰も歩いてねぇもんだな。この一本道を前にも、後ろに……〉
と、若松さんは歩を進めながら、振り返った。
眼前に女の顔があった。
「ひっ」
驚き、小さく声が漏れた。
こんな真後ろに人がいたとは――歩みを止めたら衝突寸前の距離だ。
少し小走りをして、もう一度振り返った。
まだ女は真後ろにいた。
そして、女の後ろに何処まで続いているか分からない程の行列が整然と並んでいる様が目に入った。
「おっ! おおおおお!」
今度は堪らず、大声をあげた。
列をなす者達は、皆一様に青白く光っていた。
そこまで確認したのち、若松さんは一度も振り返ることをせず全速力で走って家に戻り、吐いた。
――「行列」高田公太『恐怖箱 百舌』より