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2月新刊『大阪怪談』内容紹介・著者コメント・試し読み・朗読動画

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京橋在住の著者が独自の全力取材、大阪の本当にあった怖い話!

話題作『関西怪談』のホラー作家・田辺青蛙が、地元大阪の怖い話を徹底取材して書き下ろす、なにわ限定実話怪談集!

梅田地下街で異界に迷い込む…
天王寺駅で頻発する怪奇現象
侍の亡霊が暴れる堀江の交差点
森ノ宮に縄文人の霊が…
茨木で語り継がれる怪異
八尾の墓地に響く怪音

――などを収録。古の伝承から現代の恐怖体験まで大阪各地の怪談奇談が満載!

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あらすじ

「大阪城の怪談」

観光客で賑わう大阪城天守閣。北川館長が語った、警備員が実際に体験した数々の怪奇現象とは!? 

「たたり地蔵」

拝むと祟る――禁忌の地蔵が某所に実在する。地元の人が語る真実と哀しい由来が明らかに。

「天満橋の某デパートに纏わる話」

京阪の駅の傍にある賑やかな商業施設の陰に魔が潜む――。ここで従業員が体験した恐怖とは…

「読経」

環状線の某駅のベンチに座っていると何者かが頭上で読経を――。著者自身の身も凍る実体験!

「信貴生駒スカイラインの幽霊」

夜の山中でソロキャンプをしている最中、木々の奥の闇から恐ろしい姿の異形が迫りくる!

「大川の龍」

かつて龍王宮があった桜ノ宮駅近くで、目を疑う存在を目撃する!それはUMAか、神様か――

「犬鳴山」

泉佐野市の修行場・犬鳴山での修行に参加した女性。死を覚悟する過酷な修行ののちに神秘が…

「千人つか」

かつて大阪の街を襲った戦火の記憶――この地に刻まれた悲しみと、今も語られる不思議な体験。

著者自薦・試し読み1話

たたり地蔵

 大阪市内の川沿いにある地蔵堂でこんな話を聞いた。

 詳しい場所は伏せてほしいと言われているので、明記はしない。

 その地蔵堂には賽銭箱もなく、お堂には二つの南京錠が取り付けられている。

 由来書きもないのに、何故か近隣に住む人はその地蔵を拝むと「祟る」と言われていることを知っている。

 私も大阪のお地蔵さんを調べている郷土史家の方から「あそこの地蔵さんは祟るからな、拝んだらあかんねんで」と話を聞いていた。

 気になったので、その地蔵堂を管理している町内会の方に聞いたところ、実はもともと「たたり地蔵」ではなく「たたみ地蔵」と呼ばれていたことを知った。

 いつ、どうして「たたみ」が「たたり」になったのかは不明だそうだが、たたみ地蔵と呼ばれるようになった理由は教えてくれた。

「ここでペスト(黒死病)で亡くなった人が使ってた畳を積み上げて、焼いていたんです。

 その横にね、慰霊をかねてこの地蔵堂を建てたんですよ。

 ペストにかかった人の吐瀉物や血やらが畳にまで染み透って、真っ黒になったらしいですね。

 明治期のペスト大流行で、患者数が一番多かったんが、大阪なんですよ。聞いた話やし、昔の記録やから間違ってるかも知れんけどね、地蔵の建立には当時の遺族や医療関係者も関わったらしいです。

 で、知ってはるやろうけど、明治政府は青山胤通と北里柴三郎の二名をペストが流行し出した時に、海外に派遣して調査と原因究明と、日本への感染拡大防止を命じたんです。

 でもペストは結局、日本に入ってきた上に感染が大きく広がってしまってね、国民総動員で疫病と戦うことになったわけです。

 知ってます? 最初に国内外の伝染病の研究所に、個人で投資したんは福澤諭吉でね、北里柴三郎に資産を随分とつぎ込んだそうですよ。『北里を殺してはならぬ』と言って感染症は研究者の感染防止策も重要やと言い張ったらしいですね。流石一万円札の人ですね。

 そのかいがあったかどうかは不明ですけど、大阪は感染者数も多かったからか、ペストは鼠と飛沫感染やというのが割と早いこと、みんなの共通認識になったみたいです。

 だから集めてね、感染を広げないように、畳や遺品に触れんようにと伝えてここで燃やしてたんで「たたみ地蔵」――それを誰かが「たたり地蔵」と聞き違えはったんと違うかな。

 畳は積みあがってね、とんど焼きの塔みたいになっとったそうですよ。当時は、周りに高い建物もないから、燃える様子は遠くから見えたやろし、目立ったんと違うかなあ。

 その横に名もないお地蔵さんがいたら、まあ誰かが名付けなくっても「たたみ地蔵」と呼ばれて不思議やないでしょう。

 でも、このお地蔵さん拝むと良くないことがあるっていうのはホンマでねえ、私もよう手を合わせません。町内で、冗談で手を合わせたり拝んだりした人がおりましてね、やっぱりちょっと良くないことが起きたんですよ。

 どういうことかっていうと、人によって色々とあって言いにくいんやけど……。まあ、わたし自身だけの話をしますとね、犬の散歩で歩いてたら、なんもない場所でズザーって転んでね。

 もう、痛くて痛くって、家に帰ってズボンを捲ってみたら内出血で足が黒くなっててビックリしまして。そりゃペストになったような黒い色とは違うけれど、これは、と怖くなってしまいまして。

 本当はこういうご時世になったから、伝染病の記憶や記録ということで、一般の人にも知って貰った方がいいから案内板でも作ろうかって話も出てるんですけど、どうもね、拝む人が出てきたら困るなっていう気持ちもありまして。

 だから、感染症関係の記録として、こういうお堂がありますよということは書いていただいて構いませんが、場所とか細かいことはね、特定されないように変えてください」

 固く閉じられたお堂は、今日も人の行きかう路地の途中に佇んでいる。

著者コメント(たたり地蔵について)

 手塚治虫の『陽だまりの樹』の中で、手塚治虫の曾祖父・手塚良庵が大坂の適塾で、天然痘、コレラ、赤痢などの様々な伝染病と戦う様子が書かれています。

 大阪は今まで、何度も疫病と戦ってきた町でもあるのです。

 コロナ禍の中で、当時の記録や伝承を思い返し語ってくれる人が取材中に何名かいました。

 当時のパンデミックの記憶を伝える地蔵に纏わる話が特に印象深かったので、紹介用にこの話を選びました。

 他にも大阪市内には昭和のはじめ頃の疫病禍に見つかった「ごて地蔵」などもあり、その話も『大阪怪談』に収録されています。

 ええ? 大阪にそんな話が? と取材中に驚かされることが多くて『大阪怪談』は書いていてとても楽しい本でした。

 怪談は記憶や記録を伝える手段でもあるのではないかと気づかされたので、出来ればこの先も大阪に纏わる話を沢山残していきたいと思っています。

朗読動画(怪読録Vol.70)

【竹書房怪談文庫×怪談社】でお送りする怪談語り動画です。毎月の各新刊から選んだ怖い話を人気怪談師が朗読します。

今回の語り手は 牛抱せん夏 さん!

【怪読録Vol.70】環状線沿いのとあるラブホに霊が!――田辺青蛙『大阪怪談』より【怖い話朗読】

https://youtu.be/1BiHJkczoS0

商品情報

  • 書名:大阪怪談
  • 著者名:田辺青蛙
  • 発売日:2021/2/27 ※発売日は地域によって前後する場合があります。
  • 定価:本体680円+税
  • ISBNコード:9784801925014
  • シリーズ:ご当地怪談

著者紹介

田辺青蛙  Seia Tanabe

『生き屏風』で日本ホラー小説大賞短編賞を受賞。著書に『関西怪談』『魂追い』『皐月鬼』『あめだま 青蛙モノノケ語り』『モルテンおいしいです^q^』『人魚の石』など。共著に「てのひら怪談」「恐怖通信 鳥肌ゾーン」各シリーズ、『京都怪談 神隠し』『怪しき我が家』『怪談実話 FKB饗宴』『読書で離婚を考えた』など。

田辺青蛙作品 好評既刊 

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