【日々怪談】2021年7月20日の怖い話~痒い
【今日は何の日?】7月20日:Tシャツの日
痒い
乾燥注意報の絶えない秋のことだった。
朝、起きたばかりの林田君は、うなじの下がとてつもなく痒かった。
掻くと、爪の間に凝固した血がわずかに挟まった。
汗疹、かぶれの類であろう。寝ている間に強く掻きむしってしまったようだ。
小さな瘡蓋が取れたせいで、ティッシュで拭きとる度に少量の血がついてくる。
何とも目覚めの悪い朝だ。
シャワーでも浴びようと、寝間着にしている白いTシャツを脱いだ。
見ると、後ろ襟にも点々と血が付着している。
風呂場の鏡に背を向け、患部の具合を確かめた。
血で滲んでいてはっきりしないが、その箇所の肌が荒れていることは分かった。
それと、背中にうねった長い髪の毛が沢山付いていることも分かった。
シャワーで流すと、一束の髪の毛が排水口に溜まった。
――「痒い」高田公太『恐怖箱 百舌』より