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7月書籍新刊『黄泉つなぎ百物語』怪談界を代表する49名が集結!内容紹介・試し読み・朗読動画

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「もっと怖い譚(はなし)はあるか?」
「ならこれはどうだ」

実話怪談の名手49名が恐怖の頂を求めて紡ぐ怪の数珠。
各々が持ち寄った「最恐話」でとこしえの闇を織る実話百物語!

ぱっと開けば、そこは奈落。
一分で読める空恐ろしい話、不思議な話が九十九話。
明けない夜はどこまでも深い闇に落ちていく……

無料で読める怪談話や怪談イベント情報を更新しています

あらすじ

第1夜「山にて」黒木あるじ

ひとり分け入った山中。夜、焚き火をしていると炎の中に知らない男の顔が…

第3夜「暗がりに浮かぶ」夜馬裕

母屋から離れた便所に浮かぶ男女の首。祖父母は死んだお前の両親だと言うが…

第12夜「怨みの黒猫」川奈まり子

前妻の愛猫を不注意で死なせた男。その後付き合う女性は皆、黒猫を飼っていて…

第84夜「十分間」営業のK

一族の中でただ一人霊感のなかった男は、購入した中古住宅で初めて恐怖を知る…

第95夜「ホラー好き」糸柳寿

ホラー映画の撮影に使われたマンションは本物の事故物件。なぜ分かるかと言うと…

第96夜「闇夜に跳ねる」郷内心瞳

深夜、農免道路から臨む田んぼの中でぼんぼん飛び跳ね続ける発光物体の正体は…

第97夜「飛ぶ女。飛ぶ男。」住倉カオス

金に困った男女が死ぬのは日常茶飯事の歌舞伎町。ホストクラブで起きた怪とは…

第99夜「朝がくる」平山夢明

寂れた山小屋に霊の調査をしにやってきた若者たちを襲った戦慄の恐怖とは…

冒頭+試し読み1話

 月の無い夜、怪しきはなしを好むやからが「百物語に興じよう」と荒れ寺の本堂へ集まった。
 辺りはいちめんの闇。蝋燭の揺らぐ灯。
 ヒトではないものも混じっているかもしれないな──誰かがそううそぶいた刹那、ひとりの男が「では、私の譚から」と口を開いた。
 こうして──長い長い夜がはじまった。

第1夜 「山にて」黒木あるじ

「若いころの話だよ」と前置きして、山形の老人がこんな出来事を教えてくれた。
 ある日、半ば思いつきで裏山へ足を向けたのだ──と彼は云う。
 日常からつかのま逃げだしたのか、独りで考える時間がほしかったのか。あるいは山に呼ばれ、なんとなく赴いたのか──理由については教えてくれなかったが、ともあれ彼は山へ入って枯れ枝をのろのろと集め、日が暮れるころに薪で火を起こし、暗がりのなか、じっと炎の前に座っていたのだそうだ。
 と、ぼんやり紅蓮を眺めているうち、ぱちぱち爆ぜる火中に妙なものが見えた。
 知らない男の顔が、一瞬だけあらわれては消える。何度も。何度も。
 男は、炎をまたいだ向こう側に這いつくばり、こちらを見上げるような姿勢であった。
 念のため確認したものの、もちろん自分のほかに人など居るはずもない。
 怖い──とは思わなかった。
 なにせ山なのだから、おまけに夜なのだから、こういうことも珍しくないのだろう。
 思うに自分は、妙なものを「見たような気」になっているだけなのだろう。
 男性はおのれをそのように納得させ、ごろりと横になった。
 翌朝、目を覚ました彼は下山の支度をはじめる。とはいえ荷物などほとんどないから、山火事など起きぬよう焚き火の跡をていねいに踏み消すだけである。
 ふいに──ぱき、と妙な感触が靴底に伝わった。
 首を傾げつつ焚き火跡を見てみれば、消し炭のなかに焦げた小動物の骨が混じっている。それも一匹や二匹ではない。ざっくり勘定しただけでも、ゆうに二十はくだらなかった。
 もしや、昨夜燃やしていたのは枯れ枝ではなく獣の骸だったのか。しかし何故、自分はそれに気づかなかったのか。無数の骨と昨日の男には繋がりがあるのか──なにもわからぬまま、男は山を下りた。
 帰ると、飼い犬が急死していた。家族によれば前の晩、なにかに怯えていたかと思うや、突然息絶えたのだという。
 愛犬は庭の隅に埋葬した。そこは、いまでも草が生えない。

(了)

朗読動画(怪読録Vol.93)

【竹書房怪談文庫×怪談社】でお送りする怪談語り動画です。毎月の各新刊から選んだ怖い話を人気怪談師が朗読します。

今回の語り手は 松永瑞香さん!

【怪読録Vol.93】心霊写真に秘められた謎が深まる…平山夢明、糸柳寿昭、営業のKなど四十九名共著『黄泉つなぎ百物語』より【怖い話朗読】

商品情報

著者紹介

ぁみ 怪談家、MC、作家、脚本、演出、YouTubeなど活躍中。怪談最恐戦・初代最恐位。主な著作に「レイワ怪談」シリーズなど。
我妻俊樹(あがつま・としき) 『実話怪談覚書 忌之刻』で単著デビュー。主な著作に「忌印恐怖譚」「奇々耳草紙」シリーズ。歌人。 
雨宮淳司(あめみや・じゅんじ) 実話怪談大会【超︲1】よりデビュー。主な著作に『恐怖箱 怪医』ほか医療系三部作。現役看護師。
伊計 翼(いけい・たすく) 怪談イベント団体「怪談社」の書記。主な著作に『怪談社THE BEST 天の章』『怪談社書記録 闇語り』など。
壱夜(いちや) ネットでの怪談朗読ほか、怪談イベントを主催。怪談最恐戦二〇一九、準優勝。共著に『現代怪談 地獄めぐり 業火』。
牛抱せん夏(うしだき・せんか) 女優。怪談師。怪談イベント、こども向けのおはなし会など幅広く活動。近著『呪女怪談 滅魂』。
営業のK(えいぎょうのけー) 金沢市出身。昼は営業職の会社員、夜は怪談ブロガーとして活躍。近著『闇塗怪談 朽チナイ恐怖』。
緒方あきら(おがた・あきら) シナリオライターの傍ら、小説執筆と怪談蒐集を行う。主な著作に『手繰り怪談 零レ糸』。
小田イ輔(おだ・いすけ)
 『FKB饗宴5』にてデビュー。主な著作に「怪談奇聞」シリーズ。近刊共著に映画原作『未成仏百物語』。
籠 三蔵(かご・さんぞう) 尾道てのひら怪談大賞受賞。主な著作に「現代雨月物語」シリーズ『方違異談』『物忌異談』。
加藤 一(かとう・はじめ) 「超」怖い話・四代目編著者。「恐怖箱」シリーズの編者も務める。近著『「忌」怖い話 大祥忌』。
神沼三平太(かみぬま・さんぺいた) 大学の非常勤講師の傍ら怪談蒐集と執筆を行う。主な著作に「実話怪談 草」シリーズなど。
川奈まり子(かわな・まりこ) 徹底した取材に基づく実話怪談を追究。主な著作に「実話奇譚」「一〇八怪談」シリーズなど。
黒木あるじ(くろき・あるじ) 『怪談実話 震』で単著デビュー。主な著作に『怪談実話傑作選 弔』、「黒木魔奇録」シリーズなど。
黒 史郎(くろ・しろう) 小説の傍ら、実話怪談も数多く執筆。主な著作に『黒怪談傑作選 闇の舌』、「異界怪談」シリーズなど。
下駄華緒(げた・はなお) ベーシスト。怪談師。元火葬場職員、葬儀屋。怪談最恐戦二〇一九・最恐位。主な著作に『怪談忌中録 煙仏』。
郷内心瞳(ごうない・しんどう) 宮城県で拝み屋を営む。主な著作に「拝み屋備忘録」シリーズ。同最新作に『怪談火だるま乙女』。
小原 猛(こはら・たけし) 地元沖縄の怪談、伝承の蒐集を行う。主な著作に『琉球奇譚 マブイグミの呪文』ほか「琉球奇譚」シリーズ。
糸柳寿昭(しやな・としあき) 実話怪談師。全国各地で蒐集した実話怪談を発表する団体「怪談社」所属。近著に『怪談聖 あやしかいわ』。
匠平(しょうへい) 北海道江別市出身。プロ怪談師として怪談ライブバー〈スリラーナイト〉で活躍中。近著に『北縁怪談 札幌編』。 
神薫(じん・かおる) 静岡県在住の現役の眼科医。『怪談女医 閉鎖病棟奇譚』で単著デビュー。主な著作に『怨念怪談 葬難』など。
朱雀門 出(すざくもん・いづる) 「今昔奇怪録」で日本ホラー小説大賞短編賞を受賞。主な著作に「脳釘怪談」シリーズなど。
鈴木 捧(すずき・ささぐ) 実話怪談コンペ【怪談マンスリーコンテスト】よりデビュー。主な著作に『実話怪談 花筐』。
住倉カオス(すみくら・かおす) 怪談最恐戦MC。フォトグラファー。怪談イベントオーガナイザー。主な著作に『百万人の恐い話』など。
高田公太(たかだ・こうた) 青森県弘前市在住。新聞記者の傍ら県内外の実話怪談を取材執筆。主な著作に『青森怪談 弘前乃怪』ほか。
橘 百花(たちばな・ひゃっか) 栃木県出身。実話怪談大会【超︲1】よりデビュー。主な著作に『恐怖箱 死縁怪談』など。
つくね乱蔵(つくね・らんぞう) 福井県出身。絶望系怪談作家の異名をとる。主な著作に『つくね乱蔵実話怪談傑作選 厭ノ蔵』など。
戸神重明(とがみ・しげあき)
 群馬県高崎市で「高崎怪談会」を主宰。主な著作に『上毛鬼談 群魔』、「怪談標本箱」シリーズなど。
徳光正行(とくみつ・まさゆき) テレビ、ラジオ、イベントの司会などで活躍。主な著作に岩井志麻子との共著「凶鳴怪談」シリーズ。
内藤 駆(ないとう・かける) 憑かれ体質の専門学校生。主な著作に『夜泣怪談』、共著に『現代怪談 地獄めぐり』など。
鳴崎朝寝(なるさき・あさね) 東京都出身。主な著作に『宵口怪談 無明』、松村進吉、丸山政也との共著に『エモ怖』がある。
ねこや堂(ねこやどう) 九州在住。実話怪談大会【超︲1】よりデビュー。主な共著に「恐怖箱 百物語」シリーズなど。
服部義史(はっとり・よしふみ) 北海道出身。主な著作に『恐怖実話 北怪道』『蝦夷忌譚 北怪導』『実話怪奇録 北の闇から』。
原田 空(はらだ・そら) 埼玉県生まれ。二〇一七年より夏の『「超」怖い話 』〈十干〉シリーズに参加。主な共著に『「超」怖い話 丁』。
春南 灯(はるな・あかり) 北海道旭川市出身、札幌在住。怪談イベント『雑談怪談』主催。主な著作に『北霊怪談 ウェンルパロ』。
久田樹生(ひさだ・たつき) 作家。ルポルタージュ怪談のほか、ノベライズも手掛ける。主な著作に『小説版 樹海村』『社畜怪談』など。
菱井十拳(ひしい・じゅっけん) ノンフィクション作家。主な著作に『羅刹ノ国 北九州怪談行』『怨霊黙示録 九州一の怪談』など。
響 洋平(ひびき・ようへい) 京都府出身。クラブDJ・ターンテーブリスト・怪談蒐集家。主な著作に「地下怪談」シリーズなど。
平山夢明(ひらやま・ゆめあき) 神奈川県出身。大藪晴彦賞ほか受賞歴多数。主な著作に『怪談遺産』『平山夢明恐怖全集』など。
深澤 夜(ふかさわ・よる) 栃木県出身。夏冬両方の「超」怖い話シリーズに参加。主な著作に『「超」怖い話 鬼胎』など。
真白 圭(ましろ・けい) 新潟県出身。第四回『幽』実話怪談コンテスト佳作入選。主な著作に「実話怪事記」シリーズなど。
松村進吉(まつむら・しんきち) 徳島県出身。「超」怖い話・五代目編著者。主な著作に『「超」怖い話ベストセレクション 奈落』など。
松本エムザ(まつもと・えむざ) 栃木県在住。バブル世代の残党として「エムザ」を名乗る。主な著作に『誘ゐ怪談』など。
丸山政也(まるやま・まさや) 第三回『幽』怪談実話コンテスト大賞受賞。主な著作に『信州怪談』、「奇譚百物語」シリーズなど。
三雲 央(みくも・ひろし) 実話怪談大会【超︲1】参加をきっかけに怪談の執筆を開始。主な著作に『心霊目撃談 現』。
夜馬裕(やまゆう) 怪談師ユニット・ゴールデン街ホラーズの一員。怪談最恐戦二〇二〇・最恐位。主な著作に『厭談 祟ノ怪』など。
幽木武彦(ゆうき・たけひこ) 占術家、怪異蒐集家。主な著作に『算命学怪談 占い師の怖い話』『怪談天中殺 占い師の怖い話』。
吉田悠軌(よしだ・ゆうき) 文筆業を中心にTV映画出演、イベント等で活動。主な著作に『恐怖実話 怪の残滓』など。
渡部正和(わたなべ・まさかず) 山形県出身。二〇一〇年より冬の「超」怖い話に共著参加。主な著作に『「超」怖い話 隠鬼』など。
※五十音順

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