宗教施設から異世界転生⁉「地下の丸穴」あらすじ・感想まとめ – 2chの怖い話
「地下の丸穴」とは
地下の丸穴は、ネットの怖い話業界では知らない人がいないくらい有名な名作である。ジャンルで言うと「異世界系」であるものの、ほかの異世界系と大きく異なり、現世界→異世界ではなく、異世界→現世界というストーリー仕立てになっている。
なお、題名にもなっている「地下の丸穴」は、その名の通り地下にある丸い穴(輪)を指す。そこに飛び込んだ主人公が現世界に戻ってくるというもので、ストーリーは異世界・現世界のどちらでもリアルに展開されている。
「地下の丸穴」のあらすじ
舞台は1991年。当時、高校2年生だった投稿者が住んでいた地域は、見渡す限りの田んぼや山がある片田舎だった。そこに突如、新興宗教施設が建設される。
ある日、投稿者は同級生たちと宗教施設に肝試しに行くことになった。軽い気持ちで施設に行ったが、そこで不思議な体験をする。果たして、地下の丸穴とは一体なにか?
起:深夜の宗教施設で肝試し
投稿者が高校2年生の時に建設された新興宗教施設。その敷地面積は東京ドーム数個分の広さであった。学校で生徒たちは「悪魔教」と騒ぎ立て、暇つぶしと好奇心から施設の周辺を観察するも、信者たちとの交流もなくとくに問題がなかったため、自然と話題にならなくなっていた。
施設への興味が薄れていたころ、高校3年生の時に友人から同施設に肝試しに行かないか、と誘われる。その友人の実家はスーパーを経営していて、なんでも、店にかわいい女性が買い物に来るというのだが、その女性が新興宗教施設に出入りしているのを彼の親が見たというのだ。
退屈していたため、誘いに乗る投稿者。メンバーは、スーパーが実家の友人(以降、A)をはじめとする5人。投稿者と、同じクラスのAとBとC、後輩のEの男5人で宗教施設に肝試しに行くことになった(同級生のDと後輩のFも誘ったが、当日来なかった)。
深夜であるにも関わらず、敷地内の建物には明かりが。巨大な門は開く気配がない。普通なら関係者以外は施設内に入ることができないが、Aが通用門の存在を知っていたため、敷地内に侵入することができた。
敷地内を散策するもとくに収穫はない。またしばらく歩いていると、施設と施設の間に灯かりがついた公衆トイレの建物を発見する。Aが「休憩しよう」と言い出したが、他の同級生は見つかったらヤバいから早く帰ろうと及び腰であった。しかし、Aはそんな彼らをよそに、臆することもなくトイレに用を足しに入る。
承:トイレにある地下に続く階段
用を足したAが、トイレから「面白いものがある」と声をかけてきた。扉を開けたところ、そこには地下に続く階段が…。「下に降りてみよう」とのAの誘いに、さすがに投稿者たちは躊躇する。
Aは「お前怖いんじゃろ?」と馬鹿にしてきたが投稿者は挑発には乗らず、Bも「帰ろう」と地下に降りることを拒む。しかし、CとEは面白そうだと同調し、3人は地下へ続く階段を降りることに。仕方なく、投稿者とBはトイレの中で待つことになった。
投稿者とBは、しばらくトイレ内で待っていたが、5分経っても3人が戻ってくる気配がない。先に帰ろうと思うも、懐中電灯は地下に降りたメンバーが持って行ったので、しぶしぶ待つことに。
すると、「ザッザッザッ…」とトイレに向かってくる複数の足音が聞こえてきた。不法侵入をしているので教団の人間に見つかるとマズい。しかし、足音はだんだんトイレに近づいてくる。逃げ場もなく、捕まるよりはということで、2人は地下に降りることを決意する。
階段を降りていくと、突き当たりに扉があったので開けて入る。扉を開くと、そこに部屋があった。恐る恐る部屋に入る2人。部屋は15畳ほどで、真ん中に巨大な鉄製のフラフープのようなものがぶら下がっていた。
扉を閉めてAたちを探すが見当たらない。2人が小声で話していると、真上のトイレに複数人が入ってくる音が聞こえ、話し声も聞こえてきた。そのうちに話している人数が増えていく。やがて地下の階段を降りてくる足音が聞こえてきた…。
転:地下の丸穴で消えた友達
部屋の中で2人は恐怖で固まっていたが、近づいてくる足音に動揺したBは、「うあああ!」と悲鳴をあげながら部屋の奥へと走り出し、前述のフラフープ状の丸い輪を飛び越えた。その瞬間、Bの姿が忽然と消えてしまう…。
投稿者は目の前でBが消えたことに唖然とし、放心状態になっていた。扉とフラフープの間に立ち、消えたBを探すがどこにもいない。
逃げ場がなくなり、教団関係者に見つかったら施設に入ったことを謝ろうと思っていたそのとき、扉がゆっくりと開いた。扉の隙間から、「王冠のようなものを被った老人」が顔を覗かせている。しかも悪意に満ちた満面の笑みで…。
一瞬で「まともな人間ではない」と感じるほどの表情。話が通じる相手ではない…。その無機質で悪意に満ちた笑顔の老人に、一瞬でもこちらを見られたくないと考えた投稿者は、悲鳴をあげながらその丸穴の中に飛び込んだ…。
結:見覚えのない家族と、存在しない友達
投稿者が目を覚ますと、そこは病院だった。状況をつかめず、しばらくボッーとしていると看護師が部屋に入ってくる。投稿者が目を覚ましたことに気づくと、慌ててどこかに駆け出して行った。
しばらく後、担当医や他の医師たちがやってきて話しかけていたが、意識があいまいでまだボーッとしていた。
徐々に意識がはっきりしだしたころ、医師から「長いあいだ寝ていたんだよ」と言われる。時間の感覚が分からなくなっていたので、長いあいだと言われてもピンと来ない。
しばらくすると、母親と妹らしき人が病室に入ってくる。「よかった…」と泣いて喜ぶ母親。「お兄ちゃん、おかえり…」と泣き崩れる妹。
しかし、投稿者に妹はいない…。3歳の年の差がある兄ならいるが、妹はいない。
そして、母親も、自分の知っている顔ではなかった…。
混乱して「誰ですか?誰ですか?」と何度も聞く投稿者。医師が、後遺症で時間が経てば元に戻る、と母親と妹らしき人物に話している。
そして医師から、「2年間近く寝ていたから記憶が完全ではない」と告げられる。現実を飲み込めず、ショックを受けることすらできなかった。母親らしき人物は号泣している。
「トイレに行く」と言って立ち上がろうとするも、2年間寝ていたせいか足が異常に重く立ち上がれない。医師や看護師、妹らしき人物に手伝ってもらってようやく立ち上がることができた。
トイレに行き、用を足しながら地下の丸穴に飛び込んだときのことを思い出す。あの夜に、トイレに入ったことでこんな状況に陥ってしまった…。
そして用を足し終わり、ふと鏡で自分の顔を見る。そこに映っていたのは、まったくの別人であった…。
その後、投稿者はパニックを起こし、大変だったと周りの人から聞かされた。1ヶ月経っても、両親や見舞いに来た友達のことを思い出せず、「自分は●●じゃない。あなたを知らない」と言い続けていたそうだ。
そして、一緒に肝試しに行った友達のことを聞くも、そんな人間は存在しない、と言われてしまう。地下の丸穴に入ったきり戻ってこなかったAもCもEも、地下の丸穴に飛び込んだBも、存在すらしないという…。
さらに、「ここは神奈川県」だと言われたが、それは投稿者にとって聞いたこともない地域であった。東京も、まして日本そのものすら分からず、通貨単位の円も知らない…。日常単語だけは違和感がなかったため、会話はできたようだ。まさに時空を超えてしまったわけだが、それらのすべては「記憶喪失」で片付けられてしまうことになる。
医師や周りの人間に何度も説得をされるうちに投稿者自身も記憶喪失を受け入れ、退院後はカウンセリングに通いながら新しい人生をスタートさせることとなった。自分のことも両親や友達のことも忘れていたが、あの宗教施設のことだけは、はっきりと覚えていたそうだ。あの悪意に満ちた笑みを浮かべる老人の顔も、覚えている。
目覚めてから半年後の20歳には高校に復学。都会暮らしにもそれなりに馴染んできた頃、本屋で、肝試しした新興宗教の名前を目にし、驚愕する。それは世界的に有名な宗教団体となっていた。
宗教団体の関連本を読み漁るも、調べても元の世界に戻れるわけでもない。やがて意味のない行為であると気づき、見て見ぬフリをして人生を送ることに決めた。
その後:17年後に届いた不思議な手紙
それから17年の時が経ち、投稿者は都内で働く普通のサラリーマンになっていた。婚約者もできた。そんな時、自宅に匿名の手紙が届く。
その内容は、「あなたを見つけるのに時間がかかった」「あなたは●●(名前)です」「また手紙を送ります」というもの。●●に心当たりはなかったが、もしかして以前の名前だったのかも、と考える投稿者。
しばらく後、2通目の手紙が届く。そこには、「私の名前は●●です。どうやらここにはあなたと私しか来ていないようです」「伝えなければならないことがあるので、○日に△にひとりで来てください」と記されていた。
投稿者は会いに行く決意をする。しかし、何があるか分からないので、その前にこれらの文章を書き残そうと思ったと書き込んでいる。そこでこの話は終わっている。
投稿者が実際に会いに行ったのか、その後どうなったのかは投稿されておらず、またパラレルワールドに戻ったのかどうかは不明である。地下の丸穴で消えたA、B、C、Eの行方も分からない。また、続編も存在しない。
2ちゃんねる住民たちの関心は、この投稿者たちが肝試しをした新興宗教=現宗教団体はどこのことを指すのか、ということに移っているようだ。
作り話説が強いが、そうであっても秀逸な内容となっているので、興味があるのであればぜひご一読あれ。
カテゴリ――2chの怖い話
地下の丸穴を読んだ人の感想
スーパーを経営している実家のAだが、初めに肝試しに行こうと誘い、トイレに行くことを提案したり、階段を下りるよう誘導したりと、投稿者を陥れた張本人なのではという疑惑を持った。 この話は、心霊モノや殺戮などの、現実性が乏しいいかにも作り物といった話と違い、終始現実味があって誰にでもいつでも起こり得そうな話なので、私は異世界モノの荒唐無稽さが苦手なのだが、読んでみたいと思えた。 私の住んでいるところも田舎で田んぼの真ん中にある新興住宅地であり、高い塀にかこまれた巨大な敷地に何をやっているか全く分からない施設がある。なのでこの話には我が事のように入り込んでいけた。
「地下の丸穴」は以前にも読んだことがあるのだが、なぜか新興宗教施設のトイレに友達が入ったところまでしか覚えておらず、スタートが異世界(こちら側から見てだが)というのに驚いた。やはり、パラレルワールドは存在するのかも知れない。そして、投稿者がその後どうなったのか不明なところが非常に気になる。元の世界に戻れたのか、それとも時空の番人のようなものに消されたのか。その新興宗教に入信すれば、なにかが分かるのだろうか。 ただ、どちらに転んでも、どちらかの家族、もしくは両方の家族を悲しませることになるわけで、結末を知りたいような知りたくないような不思議な気分だ。
この話を読み始めた時、「田舎にある巨大な宗教施設」「高校生同士でつるんで行く肝試し」、こういったシチュエーションに非常なるワクワク感を覚えた。自分も若い頃、そういった経験をしていた方だったので、なんというか甘酸っぱい郷愁すら感じてしまった。ただ、読み進めていくうちに、なんとも言えないフワフワとした感覚を覚えだした。例えて言うと、外国のファンタジー映画のワンシーンを手に汗握りながら観ている、そんな感覚だろうか。話の後半、実はこの肝試しが投稿者にとっては異世界の話であった、という展開になった時、フワフワ感の正体が分かった気がした。個人的な見解だが、実は投稿者はそんな肝試しは一切経験していないのでは?と感じた。なんらかの理由で記憶喪失になり、意識を失い、彼の精神の中ではそういった冒険をした錯覚をしているのかもしれない、そう思えてならない。もしかしたら、彼が幼い頃に観たドラマや映画などの記憶が記憶喪失中に脳内を駆け巡っていたのかもしれない。
不思議な話で、不気味な話、なんとも奇妙な心残りのする話だった。怖いというよりは、この本人の夢物語なのではないだろうかと疑ってしまうような内容であるが、もし本当だったら色々な世界の不思議な現象が繋がることになる。とても興味深い話だと感じた。異次元が実際にあるのだとしたら、なんとも近い世界で平行して進んでいるのかとか、色々考えさせられる。この人が目撃した老人の笑顔が想像だけど離れなくなって怖くなった。他にも思い出したことがあるのだろうか。
タイトルから想像していた話とは違い、最後まであっという間に読むことが出来た。高校生なら肝だめしで不気味な新興宗教の施設にも行ってしまうかも。自分なら…?日中は信者も見かけないが夜になるといそいそと集会に参加しているのを見かけたりする。興味があるのとは違い、知りたい。どんなことをしているのかをただ知りたいという好奇心は誰しも持っているからこそ、この話は面白い。トイレから通じる地下への階段。不気味な王冠を被った老人。一目見ただけで話が通じないと感じてしまうような表情。丸穴を通ったあとは自分ではなくなっていた。全国にいる記憶喪失の人たちはみんなこの丸穴を通ったのではないかと思ってしまう。テレビ特番で、気がついたら知らない土地にいて記憶もなくなった人が出ていたりするのが、この丸穴のせいだとしたら…想像が止まらない素晴らしい話だった。
この話は怖いというよりも不思議な話だと感じた。肝試しから何か怖い体験をする流れはよくある話だが、展開として興味深かったのは、自分が元々いた世界が異世界であったということ。最初にあらすじを聞かなければ後半までそれに気づかない上手い流れになっている。そしてこの話の終わり方も秀逸で想像を膨らませる。何かあった時のためにこの話を記したということで終わり、その後の続編がないことで、元の世界に戻ったのかもっと良くないことがあったのか…気になる話だ。
タイトルの穴=闇=恐怖の象徴ということで、分かりやすく頭に入り、更に異世界→現世界というストーリー仕立てにまず興味が湧く。 丸穴に飛び込む直前の『「王冠のようなものを被った老人」が顔を覗かせている。しかも悪意に満ちた満面の笑みで…。』のシーンの不気味さ、 そして現世界に戻った投稿者の混乱や、前の世界はなんだったんだろうという謎が…。 最後に届いた匿名の手紙のくだりは、その後の話が非常に気になり、某掲示板でよく話題になるのも頷ける。 ホラー系の話が得意な方、謎を残したまま終わる話が大丈夫な方は、読んで損はないのではないだろうか。
謎の宗教施設も、丸穴を通ったら人が消えた…という状況も普通に恐ろしいですが、何よりも「目覚めたら自分の知らない日常が待っていた」というのが一番恐怖でした。宗教施設に行ってからこうなった、との記憶が残っている状況であれば、医者も母親も妹もみんな役者で、何かの陰謀があって自分を騙しているのではないか?そのうちもっと恐ろしいことが起こるのではないか?と疑心暗鬼になりそうです。17年後に手紙をくれたのは、投稿者と同じように丸穴を通ったB?直接会って伝えなければならないこととは…?平和に生きていても、何かのきっかけで記憶喪失、はありえない話ではないし、後日談がない分かえって想像が膨らんで、よりジワジワと怖さを感じる話でした。
結局施設に潜り込んだ登場人物たちはどうなってしまったのか、真実の行方が知りたいという膨大な探究心が沸き起こってしばらく何も手につかない程、ストーリーに引き込まれてしまった。しばらくして我に返り、「地下の丸穴」についてネットで検索してしまう程のミステリーを残す文章であった。これは実話なのか、空想の物語なのかを最後まで読み手に迷わせる話の展開、創造力がありまさに秀逸な内容であった。
怖い話と言うか、読み物として普通に面白かった。これはファンタジーだ。 現在の世界のほうが、当人にとっては転送された違和感のある似て非なる世界という点も面白い。 いわゆる「異世界転移モノ」は今、大ブームのジャンルで、昨今では主人公が現世へ帰還することなく、そのままその世界に馴染んで生きていくものも多い。 この話もその後17年も過ごしているので、それに近いものがある。 興味深いのはその17年後の手紙によりまた話が動き始めているところで、この感触は「前世モノ」にも近い。現世ではなく前世に重きを置いた前世モノ。 非常に物語的ではあるが、やはり続きは読んでみたい。
ただ怖いだけではなく、非常に奥が深い話で、読んだあともしばらく考えさせられる。 最近の物理学ではパラレルワールドの存在が真剣に議論されており、この話はあたかもそれらを先取りしたかのようだ。 一番興味深かったのは、まったく違う世界と「脳」で繋がっていた点だ。 投稿者は、2年間植物状態だった人間の脳の世界に生まれ変わった。そこはまったく知らない世界だった。 ひょっとすると、「意識」というものはパラレルワールドの壁を超えて今もどこかと繋がっているのかもしれない。
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