【日々怪談】2021年4月24日の怖い話~ たわわに実る
【今日は何の日?】4月24日: 植物学の日
たわわに実る
門井さんが大学時代の話である。終電を逃がしてしまい、仕方なく県境の峠を歩いて越えようとしていた。
ショートカットになるかと迷い込んだ細い道を辿っていく。
街灯はぽつんぽつんと点っている。その光を頼りに歩みを進める。
疲労もだいぶ溜まっていた。ひたすら足下を見つめるようにして歩く。
ざっと強く風が吹き付けた。
視線を上げると、五メートルほど先にある街灯の脇から一本の樹の枝が伸びていた。
よく見れば、その枝から何やら丸いものが下がっている。
それは今し方吹いた風で揺れていた。
大きさは拳大。生い茂った葉の間から、紐のようなものでぶら下がっている。背よりは高い所にあるが、手を伸ばせば届きそうな高さだ。
最初は果物かなとも思ったが、どうもそうではなさそうだ。布で作った球を、紐でグルグル巻きにして括り付けたように見える。
しかし頼りなく照らす街灯の光だけでは、その正体はよく分からない。
気になった門井さんが樹に近寄って見上げると、それは二頭身ほどの小人の頭だった。
それは、樹の枝で首を括っていた。
見上げると、さらに上のほうの枝に、同じように首を括った小人達が鈴なりにぶら下がっていた。
――「 たわわに実る 」神沼三平太『恐怖箱 百聞』より
#ヒビカイ # 植物学の日