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目撃者はもう一人いた。「流血ビール瓶事件」の真相は―「超」怖い話・夏組の怪談エッセイ〈3匹がごにょごにょ〉10

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得てして本当のことは、闇に飲まれるか煙に巻かれる運命にある。

もちろんもう一人目撃者はいたのです。
深澤夜、かく語りき―― 

   * * *

 どうも深澤夜改めまして目撃者Bです。
 僕個人は飲み屋やバーは好きなのですが、お酒を嗜みませんのでビール瓶を渡されてもどうしたらよいのか判らないのでございます。これは酒屋に返すものなんですか?
 バトンを受けとるはずが凶器を受け取ってしまった。僕はこれをどうしたらいいんだ。
 アルコールはもう、空気中に漂うぶんだけでも結構酔えるレベルで弱いんですが、それにしてもこのビール瓶にべっとりとついた液体、これはアルコールじゃなくて血では――。
 ちなみに僕はメガドライブ派なので、ビール瓶といえばベルトスクロールアクションの名作「ベアナックル」です。ビール瓶はね、一回殴って割っておくとなんと攻撃力アップ。酷い。これがバイオレンス。
 昔、友達の家でベアナックルをやっていたら、ちょうどそのお宅が初盆だったのですね。
 かなり長い竹の先に提灯を付け、それを高々と掲げて迎え火にしてたんですよ。近所ではあまり見かけないやり方に思えましたが。
 僕らは無事にラスボスを倒して夕方には解散することにしたんですが、外に出たところ庭先でちょっと騒ぎになっておりました。
 なんだか、提灯に火を入れずに掲げておいたら、勝手に火が点いたっていうんですよね。
 怖くはないし、田舎だとどこにでもありそうな話ですけどちょっと心に残るいい話。と、ここまで書いてその日遊んでたのはベアナックルじゃなくて「天地を喰らう」だった気もしてきた。どっちだったかな……。

 ところで台風です。
 九月に入っていきなり台風が連続という、なんかそういう予算でもあるのかという感じがしますが、昨年ぶりにかなり強いやつという予想もありますので西日本特に九州地方の方どうぞお気を付けを。
 台風といえば嵐を呼ぶ男、我らが松村進吉(三匹がごにょごにょ第一回参照)ですが、氏がビール瓶を装備してバイオレンスな行為に及んだという噂があります。
 先週の記事を拝読しまして、「ああ、そういうこともあったなぁ。懐かしいなぁ」と思いましたが、こう、これだけだとちょっと誤解の余地があるなと愚行いたしまして、四代目をちょっとフォローさせていただこうと思う次第です。僭越ながら。冬班に悪い影響がでてもよろしくない。
 四代目は大変面倒見の良いお方です。まずその点だけどうぞお間違いなきよう。
 あの場はああ仰いましたが、その後「恐怖箱 しおづけ手帖」で松ちゃんと僕に仕事をさせてくださいました。たぶん僕らのために動いてくださったんだと思います。
 出版の折りには、(普段ご自分で関わっていない本に言及することはあまりございませんでしたのに)ブログのほうで「どうだ。どう出る」とばかりに宣伝してくださいましたこともちゃんと覚えておりますよ。以来僕は代表作を尋ねられると、単著よりも「恐怖箱 しおづけ手帖」と答えるようにしています。
 我ら夏班の親父のようではありませんか。

 ご自宅の湯葉パーティーにも僕ら三人を招いてくださいまして、大変目をかけていただいた記憶がございます。
 なんでも自慢の囲炉裏をお持ちということで、そこに鉄鍋をかけて豆乳を投入してポン酢でいただくという。
 ただ囲炉裏で練炭を焚いているでしょう? しかも酒飲み揃いですんで、揮発する空気中のアルコールも凄い。僕は冒頭に書きました通りアルコールを全く受け付けない体質ですので、アルコールと二酸化炭素的なものにすっかりやられて後半窓から顔を出してグロッキーになっていたので物理的に記憶がございません。意識を保っていられたら、きっと凄いイイ話が聞けただろうに勿体ないことです。
 アッ、あんまりフォローになってないぞこれ。
 四代目は基本的に柔軟で、発想の豊な方でして、特に企画力がすごい。
 ですので時に、持ち込まれた企画に対してお怒りになることもございます。本気だからこそそういうこともございましょう。
 そうなるとまぁ、イエスと言わせるのは不可能でしょうねえ。
 僕の知る限り二度ほど、松ちゃんの件は二度目でして一度目は池袋の居酒屋で――ってやめようか、この話。
 気が付くと血だまりの中に割れたビール瓶を装備した松ちゃんが立っていた記憶しかありません。
 その前後のことは思い出せません。不思議なこともあるものですね。
 以上、現場からお伝えいたしました。

★9/10(木)は編集部都合によりお休みになります。次回をお楽しみに!

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著者紹介

村進吉(まつむら・しんきち)

1975年、徳島県生まれ。2006年「超-1/2006」に優勝し、デビュー。2009年からは五代目編著者として本シリーズを牽引する。2017年『「超」怖い話 丁』(竹書房)より共著に深澤夜と原田空を迎え、新体制をスタート。近著に『怪談稼業 侵蝕』(KADOKAWA)、主な既著に『「超」怖い話 ベストセレクション 奈落』(竹書房)など。

深澤夜ふかさわ・よる)

1979年、栃木県生まれ。2006年にデビュー。2014年から冬の「超」怖い話〈干支シリーズ〉に参加、2017年『「超」怖い話 丁』より〈十干シリーズ〉の共著も務める。単著に『「超」怖い話 鬼胎』(竹書房)、松村との共著に『恐怖箱 しおづけ手帖』(竹書房)がある。

原田空(はらだ・そら)

1978年、埼玉県生まれ。2006年にデビュー。2017年『「超」怖い話 丁』より〈十干〉シリーズの共著者として参戦。共著既著に『恐怖箱 蟻地獄』(竹書房)、深澤との共著に『恐怖箱 蛇苺』(竹書房)がある。

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