【日々怪談】2021年3月11日の怖い話~ パンダ
【今日は何の日?】3月11日:パンダ発見の日
パンダ
「なんかさー、掌のど真ん中が変色してんだよ」
常田はそう言って掌をさしだした。
見せてもらうと、確かに掌の窪みの辺りの色が変わっている。
「どこかにぶつけた?」
「記憶にねえなあ」
変色っぷりが凄い。
青タン赤タンといったレベルの痣ではなく、炭化したように黒くなっている。さながら巨大なシミか黒子といった風情だ。
さらには妙な形の痣だった。
「パンダか?」
「やっぱパンダに見えるよなあ」
掌の中央に、マジックでパンダを描いた。そう言われれば、誰もが疑わずに納得するだろう。偶然できた痣にしてはできすぎだ。
常田は言った。
「まあ、偶然にしちゃ面白いよな」
「偶然かなあ……」
首を捻りながらも、試しに訊いてみた。
「なんか、パンダに悪さとかした?」
「パンダの祟り……ってしてないしてない。あ、でも待てよ」
心当たりはやはりあるらしい。
「道ばたにパンダのぬいぐるみが落ちてたんだわ」
「パンダか」
「うん。目障りだからなんとなく蹴っ飛ばした」
あーあー、なるほど。
「それか」
「それだな」
痣は三日ほどしたら消えた。
――「パンダ」加藤一『 禍禍―プチ怪談の詰め合わせ』より