【日々怪談】2021年3月18日の怖い話~ 赤腕
【今日は何の日?】3月18日:春の睡眠の日
赤腕
二〇〇九年の夏の夜半過ぎのこと。
仕事で疲れ果て、帰ってくるなり寝床に潜り込んだ。
エアコンをフル稼働しても寝苦しい夜で、眠いのになかなか眠れない。
漸く眠気が襲ってきたところで、不意に寝込みを襲われた。
ぐいぐいと首を絞めてくる感触がある。
薄目を開けると、宙空から腕が伸びていた。
右腕だった。
肩から肘までが黒く、肘から先は真っ赤だった。
片手のみで力が入らないせいなのか、首を絞められているというよりは片手で首筋をにぎにぎされているような感触だった。
(ああ、これはアレだな……)
人じゃない、これ人じゃない。
まあでも、片手だけなら力も入らず大したこともできまい。
生きてないから、ひんやりしててちょっと気持ちもいい。
これはこれでアリなんじゃないか……。
睡魔とにぎにぎのコンボが心地よく感じられてきたので放置していたら、腕は現れたときと同じようにフッと消えた。
と同時に――。
ミシミシミシッ。
部屋が音を立てて揺れ、押し寄せていた眠気が吹っ飛んだ。
「なっ、何だ! 地震か!?」
慌てて飛び起きテレビを点けると、駿河湾で震度六弱の地震が起きたことが報じられていた。
……今となっては、このくらいの震度じゃ誰も驚かない、地震予知のお話。
――「赤腕」加藤一『恐怖箱 百眼』より