【日々怪談】2021年4月17日の怖い話~ナビ
【今日は何の日?】4月17日: いなりの日
ナビ
杉田さんの話である。ある日車で三十分ほどの友人の家まで遊びに行くことになった。
道中には県内でも有名な渋滞の巣がある。このため、友人宅には何度か訪れたことはあったが、渋滞回避目的でカーナビを利用した。
いつもなら駐車場から県道に出て、それから大きい国道に出るようにカーナビから案内されるのだが、その日に限って普段全く通らない細い路地を案内された。
いつもの道が工事か何かで渋滞しているのかとも思ったが、画面表示を読んでも、別段道が混んでいる訳ではないようだ。
不思議に思いながら案内されるがままに路地を通っていくと、左手に稲荷神社があった。町内の氏神様である。そのときは何も気にせずに通り過ぎた。
友人宅からの帰り道にもナビをセットし、自宅の駐車場までの案内を開始した。調子良く走っていると、やはり唐突に細い路地に案内された。
「目的地周辺です。案内を終了します」
ナビが終了した。自宅からはまだだいぶ離れている。
ここは何処だろうとゆっくり車を進めると、昼間通り過ぎた稲荷神社の脇の道だった。
もやもやした気分で家に戻った。
週末、妻が車で出かけた。夕方戻って来たので、ナビの調子を訊ねた。先日のことが気になっていたからだ。
しかし、特に変なところはなかったとの答え。最近国道に出る道に道路工事があったかどうかも訊いたが、それもなかったという。
翌日出かける際に、やはりカーナビが稲荷神社の脇の道を案内して止まった。
そのとき気付いた。
年始に色々あって、今までずっと初詣に行っていなかった。もう半年以上経っている。
慌てて一升瓶を提げて初詣に行った。
それ以来、カーナビの挙動は元に戻ったという。
――「 ナビ」神沼三平太『恐怖箱 百舌』より