【日々怪談】2021年5月30日の怖い話~不燃ゴミ
【今日は何の日?】5月30日:ゴミゼロの日
不燃ゴミ
引っ越したその日の夜のこと。
ダイニングテーブルの真ん中に、薄く発光する五十センチ程の老婆が浮かんでいた。
酷く恨めしげな顔をしてこちらを睨んでいる。
何だか気持ちが悪かったので、掃除機のヘッドを向けてスイッチを入れた。
老婆は拍子抜けする程あっけなく吸い込まれてしまった。
ゴミパックは不燃ゴミの袋へ入れて、翌日の指定日に出して捨てた。
翌々日、一回り大きくなった老婆が鎮座する形で食卓の上に浮いていた。
そこに浮いているだけで実害がある訳でなし、これは捨てても戻ってくるものなのだ。
家族全員の意見が一致したので、放っておくことにした。
それどころか、落雷で家の付近一帯が停電した折には、老婆の身体から発せられる光を蝋燭代わりに食卓を囲んだりしたので、意外に重宝している。
――「 不燃ゴミ」ねこや堂『恐怖箱 百眼』より