【日々怪談】2021年7月8日の怖い話~ラブホテル
【今日は何の日?】7月8日:ナンパの日
ラブホテル
村松さんはバーでナンパした女と、とあるラブホテルに行った。
「じゃあ、俺が先にシャワー浴びるね」
そこはとても小綺麗とは言い難い、昔からある連れ込みホテル。タイルは色あせて黄ばみ、デザインも決して洒落たものではないため、余り長居する気になれない風呂場だった。
やけに水圧の強いシャワーで髪を洗っていると、空の浴槽からボコボコと音が聞こえた。
管路の具合が不調なようだ。排水の流れが悪いのだろう。
カラスの行水よろしく、村松さんは風呂場を出た。
「じゃあ、次はあたしね……」
そう言い、女が風呂場に行ってからの数分後、
「きゃあああああ!」
悲鳴が上がった。
急いで村松さんが駆け付けると、女は全裸のまま洗い場で腰を抜かしていた。
「風呂! 風呂の中!」
指差す女に促されるまでもなく、浴槽の中に横たわり、ボコボコと音を立てながら口から血を吐く男の姿が目に入った。
血塗れのYシャツと青いトランクスを穿いた男が、身体を震わせながら吐血している。
「うわああああ!」
村松さんは女の手を引いて部屋の外へ飛び出すと、自分は半裸、女は全裸のまま一階のフロントへ行き、事情を説明した。
「警察呼んでください!」
「……あ、それ違うんです……申し訳ありません。衣類の類は私が持ってきます。お金は返しますから」
――「ラブホテル」高田公太『恐怖箱 百聞』より