あらすじ
「役所の地下」(青森県)
地下階で残業中、煙を纏って彷徨う謎の人々の群像に遭遇する…!青森市内のとある役所の実話。
怪談随筆「弘前を歩く(中学校へ)」(青森県)
黒木あるじ、高田公太など怪談作家に所縁ある文都・弘前。数多ある怪奇な噂や心霊譚を交え追体験する怪談紀行!
「あの世の景色」(岩手県)
県内の病院で入院中。居るはずのない人間たちに代わるがわる覗かれて…
「掛歌」(秋田県)
山中にあるキャンプ場で、突然に不可解な怪に…。後三年の役の古戦場で見舞われた恐怖体験!
「出羽怪」(山形県)
障る庭木、浜辺の化け物、異形の天狗など、山形各地の奇譚を纏めた民話的連作
「旭座幽霊」(山形県)
山形市内にかつてあった映画館・旭座。ここでかつて囁かれた幽霊譚が今も続いている!
「あいつアレルギー」(宮城県)
謎の発疹に蝕まれる少年の躰。判明した原因は、郷土の武将・伊達政宗への恨みだった!
「長子が死ぬ土地」(福島県)
子供の不幸が絶えぬ土地、その歴史的因縁とは…。小説『贄怪談 長男が死ぬ土地』の元になった実録奇譚。
まえがき (黒木あるじ)
ようこそ、戦慄の大地へ。
奥羽地方。現在の青森・岩手・宮城・福島にあたる陸奥国と、秋田・山形にあたる出羽国の総称──つまりは現在の東北を指す。
とはいえ東北六県を〈奥羽〉とひと括りにして語るのは、いささか乱暴に感じてしまう。
青森県北端から福島県南端まで距離にしておよそ六百キロ。地形の差異、気候や文化、さらに藩制も手伝って風土は大きく異なる。方言も郷土料理も、人々の心性も他種多様なのだ。雑多にまとめられる代物ではないのだ。
にもかかわらず、長らく奥羽は十把ひと絡げにされてきた。それは──何故か。
〈白河以北一山百文〉とは「福島県の白河より北は無価値な土地である」という意味の、半ば侮蔑的な言葉だ(ちなみに東北最大手の新聞社『河北新報』の名は、この言葉に由来
する)。つまり奥羽は人の住む処ではないと蔑まれていたのだ。奥羽に棲むのは人間ではないのだ。それゆえ、瑣末な地域差など問題視されなかったのだ。
「いやいや、それは過剰な被害者意識だよ」と、あなたは笑うかもしれない。ならば訊こう。恐山、イタコ、なまはげ、オシラサマ、即身仏──なんでも佳い。奥羽または東北、みちのくと聞いて思い浮かべる諸々にどんな印象を抱くだろうか。
異界。異質。異形。異文化。そんな単語に集約される「自分たちと異なる」モノをイメージするのではないか。では、何処と、誰と比較して「異なる」のか。そこには、植民地へ向けるまなざし、中央集権的な傲慢が見え隠れはしないだろうか。これらの論を以て「奥羽の民が人として顧みられなかった」とは、本当に言いすぎだろうか。
さて、顧みられなかった者が死後にどうなるか、怪談好きの諸兄姉はご存知だろう。
怨むのだ。呪うのだ。障るのだ。祟るのだ。
我が身を見よとばかりにあらわれ、声を聞けとばかりに哭くのだ。
本書は、そのような咆哮響く「怨嗟の地」にまつわる奇録をまとめた一冊である。加えて執筆陣はいずれも六県在住者あるいは出身者。すなわち「人にあらざる民」の末裔なの
だ。それを思えば、読後になにが起こっても不思議ではないと思うのだが。
平地人を戦慄せしめよ── 柳田國男『遠野物語』序文の一節である。
よろしい、ならばその令に従おう。戦慄の宴をはじめよう。異界の異界たる所以を、存分に味わっていただこう。北の夜は長い。どうか、ご覚悟のほどを。
朗読動画(怪読録Vol.94)
【竹書房怪談文庫×怪談社】でお送りする怪談語り動画です。毎月の各新刊から選んだ怖い話を人気怪談師が朗読します。
今回の語り手は 和泉茉那 さん!
【怪読録Vol.94】あの世にいっても温泉に…山形・宮城の怪奇譚!—黒木あるじほか『奥羽怪談』より【怖い話朗読】
商品情報
著者紹介
黒木あるじ(くろき・あるじ)
山形県山形市在住。怪談作家として精力的に活躍。「怪談実話」「無惨百物語」「黒木魔奇録」「怪談売買録」各シリーズほか。共著では「FKB饗宴」「怪談五色」「ふたり怪談」「怪談四十九夜」「瞬殺怪談」各シリーズ、『実録怪談 最恐事故物件』『未成仏百物語』など。『掃除屋 プロレス始末伝』『葬儀屋 プロレス刺客伝』など小説も手掛ける。
平谷美樹(ひらや・よしき)
岩手県出身・在住。小説家。二〇〇〇年『エリ・エリ』で第一回小松左京賞受賞。二〇一四年、歴史作家クラブ賞・シリーズ賞受賞。『でんでら国』『鍬ケ崎心中』、「風の王国」「草紙屋薬楽堂」シリーズなど多数。実話怪談では「百物語」「怪談倶楽部」シリーズ、『黄泉づくし』など。
高田公太(たかだ・こうた)
青森県弘前市出身、在住。新聞記者を生業とする傍ら、県内外の実話怪談を取材執筆する中堅怪談作家。主な著作に『恐怖箱 青森乃怪』『恐怖箱 怪談恐山』、共著に『青森怪談 弘前乃怪』『東北巡霊 怪の細道』など。
小田イ輔(おだ・いすけ)
宮城県出身・在住。「実話コレクション」「怪談奇聞」各シリーズ、共著に「怪談四十九夜」「瞬殺怪談」各シリーズ、『未成仏百物語』、「瞬殺怪談」「四十九夜怪談」各シリーズなど。原作コミック『厭怪談 なにかがいる』(画・柏屋コッコ)も。
葛西俊和(かさい・としかず)
青森県出身。実家はリンゴ農家を営む。怪談蒐集にいそしむ傍ら、青森県の伝承や民話、風習についても情報を集めている。単著に『降霊怪談』『鬼哭怪談』、共著に「怪談四十九夜」シリーズ、『怪談実話競作集 怨呪』『獄・百物語』など。
津村しおり(つむら・しおり)
青森県出身。小説家。二〇二〇年マドンナメイト文庫より『青春R18きっぷみちのく女体めぐりの旅』でデビュー。鉄道旅とご当地グルメと官能を網羅した作風で好評を博し、シリーズ第二作『青春R18きっぷ夜行列車女体めぐりの旅』を上梓。
鶴乃大助(つるの・だいすけ)
怪談好きが高じて、イタコやカミサマといった地元のシャーマンと交流を持つ。いかつい怪談ロックンローラー。弘前乃怪実行委員会メンバーであり、津軽弁による怪談イベントなどを県内外で精力的に行う。共著に『青森怪談 弘前乃怪』など。
鷲羽大介(わしゅう・だいすけ)
岩手県出身。非正規労働者として貧困に喘ぎながら、怪異の蒐集と分析に乏しいリソースを注ぎ込み続ける。「せんだい文学塾」代表。共著に「江戸怪談を読む」シリーズ『猫の怪』『皿屋敷 幽霊お菊と皿と井戸』のほか「瞬殺怪談」「怪談四十九夜」各シリーズなど。
大谷雪菜(おおたに・ゆきな)
福島県出身。第三回『幽』怪談実話コンテスト優秀賞入選。ウェブを中心にライターとして活動中。共著に『実録怪談 最凶事故物件』『世にも怖い実話怪談』など。
斉木 京(さいき・きょう)
福島県出身、東京都在住。幼少の頃から怪談や妖怪に傾倒。
単著に『贄怪談 長男が死ぬ家』、共著に『田舎の怖イ噂 』『怪談 生き地獄 現代の怖イ噂』『5分後に呪われるラスト』『5分後に残酷さに震えるラスト』など。
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