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第1回最恐小説大賞受賞作『怪奇現象という名の病気』の世界。作者の沖光峰津さんに聞く、怪と恐怖と霊体験!

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第1回最恐小説大賞を受賞した注目の短編連作ホラー 『怪奇現象という名の病気』(沖光峰津)が、8/28に発売となりました。その世界観と背景を作者の沖光峰津さんに伺いました。

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最恐小説大賞とは?

小説投稿サイト〈エブリスタ〉と竹書房がノールール、ノータブーで募る全く新しいホラー小説の賞です。 心霊、サイコ、サスペンスなどジャンルは不問、とにかくいちばん恐い話を決めようという目的のもと生まれた、バーリトゥードなコンテストです 。第1回は433作品が応募、 短編連作の怪奇現象という名の恐怖』(沖光峰津) と長編のヴンダーカンマー』(星月渉)W受賞に輝きました。

『怪奇現象という名の病気』のあらすじ

主人公は精神病院で常駐警備員のアルバイトをする青年。中田哲也、二十歳。
彼は入院患者と気まぐれに交流し、語らううちに奇妙な違和感を抱き始める。
患者らの語ることの大半は幻覚や妄想で間違いないのだが、まれに何度聞いても一貫して話の辻褄が合い、あたかも事実であるかのように突拍子もない話を語る人たちがいることに気がついたのだ。

彼らは本当に心の病気なのだろうか。
彼らの見たものが幻覚ではなく、怪奇現象――幽霊や妖怪の類だったとしたら?

哲也は患者たちに聞き込みをはじめ、やがて自身も恐ろしい怪異に巻き込まれていく……。

民話的風景に底知れぬ不気味さが漂う患者たちの10の追憶。
最後に待つ意外な結末と真実も見逃せない、ノスタルジックな短編連作ホラーです。

気になるプロローグ&第1話をこちらで全文公開していますので、まずはここからCHECK!

第1回最恐小説大賞受賞のノスタルジック短編連作ホラー『怪奇現象という名の病気』を試し読み!

沖光峰津さんインタビュー

作者の沖光峰津さんに作品誕生の背景、執筆裏話などを伺いました。

――「怪奇現象という名の病気」は心の病を抱えた人たちの入院施設のある心療内科、精神病院が舞台となっていますね。この着想はどこから?

沖光:最初に病院に関係した怪談を書こうと思い立ち、その中でもテーマを「心」と決めました。どこかで聞いたような怪談、それが心の病に起因するものだったら、或いはその逆であったなら面白いのではないかと着想がわき、
心に悩みを抱えた人たちがやってくる心療内科の病院を舞台にしました。

――短編連作の形で、各話、色々な症状を抱えた患者さんが登場しますね。統合失調症、うつ病などの気分障害はよく耳にしますが、脳期質性精神障害など初めて聞きました。かなり色々調べられたのでは…。

沖光:はい、結構調べました。今はインターネットがありますから調べるのも楽になりました。外国語の文献も完全ではありませんが意味が取れるくらいには翻訳してくれますし。自分の知らないものを調べるというのは楽しいもので、苦ではなかったです。

――プロローグを除き、全部で10の短編が収録されていますね。一つ一つは独立して楽しめ(怖がれ)ますが、主人公の哲也をめぐる謎、縦糸となる物語もありますね。ネタバレしない程度にお伺いしたいのですが、最初から全体の構想、設計図を作られているのですか?

沖光:はい、初めに全体の構想が浮かびました。それでは小説一冊分にページが足りなかったので短編を幾つか追加して現在の形になりました。実はそこから発展させて、主人公や病院の謎などさらに大きな物語となる続編の構想も既に完成しております。

――なんともう続編の構想まで!もちろんこの1冊だけでもきちんと完結していますが、確かにもっと知りたくなりますね。ホラーでこういうのもおかしいですが、主人公に愛着が湧いてきました(笑)全10篇の中で、いちばん思い入れのある作品、また登場人物を教えていただけますか?

沖光:第七話の「狸」がいちばん好きですね。

――わかります!私もこのお話の印象は強くて。自分の正体は実は狸だ、人間に化けたまま戻れなくなってしまったんだと言う入院患者の山下さんのお話ですね。

沖光:はい。私は怖すぎる話より物の怪に化かされて呆気に取られる話のほうが好きなんです。狸の山下勝也は今書いている続編にも出てきます。

――えー!そうなんですね。それはもう、この本を読んだ方は絶対読みたくなってしまうはず……(笑)

沖光:それから最終話の園田俊之も好きですね、この二人は続編でも主人公の味方として出てきます。

――どちらも嬉しい再登場ですね。ところで、沖光さん自身は、霊感、心霊体験がありますか?

沖光:あとがきにも書いているのですが、今でも鮮明に覚えているのは高校生のときの体験。中学の同級生がバイク事故で亡くなり、その日の夜、寝ている私の所へ現れてくれたんです。幼少のころも時々何かを見ていたみたいで、幼稚園くらいの頃にお寺で厄払いみたいなことをやらされました。あまり覚えていないんですが。

――子供はそういった感覚が鋭いと聞きますが、沖光さんも霊感があったんですね。

沖光:そうですね。今はさっぱりですが二十歳くらいまでは異常に勘が鋭かったです。

――この小説で沖光さんが描きたかったこと、伝えたかったことは何ですか? もちろん最恐小説大賞への応募作で受賞作ですので、「怖さ」というのはあると思うんです。短編の中にはかなりぞっとする話もありました。ただ、先ほど「怖すぎる話よりも物の怪に化かされて呆気に取られるような話が好き」とおっしゃっていたように、沖光さんの狙い、この作品の本髄はそれだけではないのでは?

沖光:実際に幽霊を見たとか、祟りや呪いを受けたという人は少ないでしょうが、何かわからないが不思議な体験をしたことがあるという人は少なからずいるのではないかと思っています。異様に勘の鋭い人や、妙に運の良い人、逆に不運にばかり遭う人など、少しだけ普通の枠におさまらない人が周りに居ませんか? 科学では解明されていない不思議な能力が人間にはまだあるのかも知れない、それが心霊体験にも関係しているのではないかと私は考えています。この小説を通して、心霊現象が全て出鱈目だと一蹴するのではなく、心理――つまり心と怪異の関係を考える発端になれば嬉しいですね。

――最後に、最恐小説大賞に輝きましたが、沖光さんの考える恐怖、「最恐=もっとも怖いもの」とは何でしょう。

沖光:やはり人の心ですかね。「可愛さ余って憎さが百倍」という言葉がある通り、恨みや呪いも心一つでどうにでもなる。勘違いや些細な行き違いで大事にもなる。嫌いだと思っていた人でも心から話し合えば好きになったりすることもある。だからこそ、心の通じない動物霊や妖怪変化などは怖いと昔から言われたりしますよね。

――どうやっても通じない恐怖。こちらがどう働きかけても動かしようもないは確かに怖い。その一方で、如何ようにもなる不安定なもの、それもまた恐怖ですよね。自分に返ってくる……そんな怖さがあるように思います。
今日はありがとうございました。

著者紹介

沖光峰津 Minetsu Okimitsu

大阪府堺市出身。堺市在住。小説投稿サイト「小説家になろう」と「エブリスタ」で小説を書く。
本作『怪奇現象という名の病気』でエブリスタ×竹書房「第1回最恐小説大賞」を受賞し、デビュー。
パソコンや電気製品を弄るのが好きで、必要もないのにパソコンが増えていく。下手くそなのにゲームも好き。ネットゲームでは仲間に迷惑ばかりかけている。

沖光峰津Twitter

怪奇現象という名の病気

沖光峰津/著

(目黒詔子/装画)

定価:本体1400円+税

発行:竹書房

エブリスタ×竹書房が募った恐怖の頂点、第1回最恐小説大賞短編連作受賞作。

荒唐無稽な話が突如真実味を帯びてくる瞬間の不気味さ…入院患者が自身の体験を語る10の怪顧録!

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