6月新刊『北縁怪談 札幌編』(匠平)内容紹介・試し読み・朗読動画
夜の街から心霊スポットまで!
札幌のプロ怪談師・匠平が蒐集した地元のリアルガチ実話!
北海道発!
メディアで大人気のプロ怪談師・匠平が、札幌の恐怖譚を纏めた実話怪談本!
大都会・札幌は最恐魔界都市!?札幌界隈の怖い話26話収録!
あらすじ
「厚別区の団地」
札幌市厚別区にある廃団地に忍び込んだヤンキー集団。彼らを襲った正体不明の怪異、その恐ろしい姿とは
「札幌D高等学校」
夜な夜な出没する日本兵…。サッカー強豪校として知られるあの病院跡の高校で、実際に生徒が見た噂の真相!
「事故物件スタジオ Nマンション」
YouTube撮影用に借りた札幌市内の一室。最恐の事故物件とされるその部屋で今も起きている怪奇現象の記録。
「すすきの花魁道中」
著者が働く怪談ライブバー・スリラーナイトに来店した男性が直前に見たのは、存在しないはずの……
「迷子」
行けども行けども出られない。そして奇妙な男が…。近郊の最恐心霊スポット・支笏湖で体験したリアル異界譚。
「北海道大学」
いつでも視界に入り込む不気味な男子学生…。現役北大生が語った、キャンパス内で本当にあった恐怖!
「東区本町の家」
若者たちが訪れたのは、仲間のひとりが幼い頃に住んだ怪奇現象アパート。異常事態が度重なり大変なことに!
「邪魔をするな。」
怪音、怪話、データの怪事等々…。本書を執筆中に、店内でリアルタイムに起きた著者自身の生々しい実体験。
著者コメント
自分の生活圏内には怪談の火種がどれだけの数くすぶっているのだろうか。
毎日のように歩く道、何気なく見ている風景、存在は知っているけど入ったことのない建物。
自分を取り巻いている当たり前の環境に人は疑問を抱かないし、案外無関心だ。
見てるけど視てないし、知ってるけど識らないし、気になっているのに気付こうとしないのだ。
今作『北縁怪談 札幌編』は僕の生活圏内の怪談を多く収集し、収録した。しかし、これは札幌に怪異が多いからというわけではない。
少しだけ自分のまわりの見方を変えただけなのだ。改めて自分の生活圏内を視て、聴いて、識ろうとした。そして、気付いたのだ。いつでも怪談になる可能性を秘めている噂、土着、伝承、都市伝説…つまり「怪談の火種」はどこにでもくすぶっていることに。
今作があなたの生活の中に隠れている火種を探し当てるヒントになれば作者としてはニヤけが止まらない。
試し読み 1話
すすきのB館ビル
僕の働いている怪談ライブバー・スリラーナイトすすきの店の楽屋でデスクワークをしていると、ステージ担当の怪談師「藤田第六感」がお客様たちの見送りを終えて楽屋に戻ってきた。
「今いたお客さん、カラオケの営業をしている人だったんだけど、メチャクチャ喋りがうまくて色々お話しさせてもらってたら、スゴい話聞かせてもらったわ!」
そうして藤田第六感は、聞いたという話をしてくれた。
半沢さんはカラオケの営業の仕事をしている。バーやスナックなどに行き、カラオケの設置をしてくれる店舗と契約を結び、機械の設置する日を決めるのが仕事だ。
しかし契約したにもかかわらず店の構造上、機械の配線を通すことができないという場合があるので、契約前にカラオケが設置できるか店の状態を確認するのだという。
カラオケの配線は基本、天井裏に通すため、確認のためには点検口を開けるのだが、時々変わったものが天井裏より出てくるのだという。
例えば、和紙でぐるぐる巻きになった包丁や、白い粉が大量に入ったパケなど――様々なものがあった。
そんな中、今までで一番記憶に残っているものを、半沢さんは藤田に話した。
その日、半沢さんはススキノにあるB館ビルに営業に行った。
B館ビルの最上階にはホストクラブが入っていて、今使っているカラオケ機種ではなく、半沢さんの取り扱っている機種に変更したいということだった。
ホストクラブの店内に入り代表と話をつけると、半沢さんはすぐに点検口を開いてチェックを始めた。
屋根裏を懐中電灯で照らして配線を見ていると、何か人形のようなものを発見した。
手を伸ばして取ってみると、それは藁人形だった。
いったいいつからそこにあったのかわからないが、その藁人形の胴体には、名前を書いた紙が貼ってある。そして、人形の右足には大量の釘が打ち込まれていた。
半沢さん、それをそのまま放置しておくわけにもいかないと思い、配線チェックを済ました後、藁人形を処分するため天井裏から取り出した。
代表には「配線を確認した結果、問題なくカラオケを設置できる」と伝えた後、
「こんなものも出てきましたが、こちらで処分しておきますね」
と何気ない風に言って店を後にしようとしたところ、代表が半沢さんをとめた。
「自分の店の屋根裏から藁人形が出てくるって、めちゃくちゃ怖いですよ? あの、藁人形って物を初めて見たんで、よく見せてもらえませんか?」
半沢さんからすればすぐに捨ててしまうつもりだったし、「どうぞ」と代表にそれを手渡した。
代表は藁人形をマジマジと見ていたが、「これ、マジでダメなやつだ」と言うとテーブルに捨て置いた。
その顔を見ると青ざめていて、額には汗まで浮かんでいる。
その様子に驚いた半沢さんは代表に声をかけた。
「どうしました? 大丈夫ですか?」
代表は何か怖いものを見てしまったかのような、そんな表情をしていた。
「すみません。藁人形に書いてあった『Ⅰ』って名前、数年前までこの店で働いていたヤツなんですわ。当時、ススキノでナンバーワンホストだったんで驚きました」
代表が知っている人の名前が書かれた藁人形となると、手に取って青ざめたのも納得がいく。
「Ⅰは本当に凄い奴で、私も信頼していたんです。ですけど、突然ホスト業界を引退してしまいました」
「どうしてですか?」
思わず訊いてしまった半沢さんに代表は、藁人形の大量に釘の打ち込まれた右足をジッと見つめながら言った。
「バイク事故です。バイク事故を起こしてしまって一命は取りとめたんですけど……」
右足を失ってしまったから引退したんです。
現在もB館ビルで、そのホストクラブは営業中である。
(了)
朗読動画(怪読録Vol.87)
【竹書房怪談文庫×怪談社】でお送りする怪談語り動画です。毎月の各新刊から選んだ怖い話を人気怪談師が朗読します。
今回の語り手は 怪談社の 上間月貴 さん!
【怪読録Vol.87】ホストって怖っ!すすきのの店から見つかった恐ろしい呪物…匠平『北縁怪談 札幌編』より【怖い話朗読】
商品情報
著者紹介
匠平 Shohei
北海道江別市生まれ。プロ怪談師。地元の高校を卒業後、当初は専門学校を経て整体師として勤務するが、その後、札幌・すすきのにオープンした日本唯一の怪談ライブバー〈スリラーナイト〉に語り手として転職。現在はエース怪談師として、札幌と東京・歌舞伎町にある同店の2号店を往復する多忙な日々を送りつつ、怪談最恐戦など各地のイベントにも怪談の語り手として参加している。著書に『北縁怪談』『実話ホラー 闇夜の訪問者』『実話ホラー 幻夜の侵入者』。YouTubeチャンネル「匠平のやりたいことやるチャンネル」配信中。
北海道の怖い話 好評既刊
北縁怪談
匠平
メディアやイベントで大活躍中、怪談ライブバー〈スリラーナイト〉専属怪談師・匠平が札幌から凍てつく恐怖を引っ提げて登場!室蘭のイタンキ浜で体験した血も凍る恐怖、土地に染み付いた因縁とは…「イタンキ浜の記憶」、札幌のとあるマンションを舞台に語られる衝撃の事故物件奇譚…「中央区円山のMマンション」、スリラーナイトで著者本人が実際に体験した恐ろしい怪奇現象…「深夜の店に響く怪音」、姉が突然変調を来たした原因は函館の史跡公園にいた悪霊の仕業…「G稜郭公園から来た女」など北海道各地の怪異譚を収録。
恐怖実話 北怪道
服部義史
北海道は「北怪道」。地元を愛してやまぬ著者が、あやしと不思議に満ちた道内の怪異譚を丹念な取材で聞き集めた実話怪談集。病院跡地のスロープで三人の男が見たものは…「U別炭鉱周辺の闇」、自殺があったと噂の湯船から聞こえる音…「S笏湖の廃墟」、はぐれた夫婦がそれぞれに体験した異界…「M周湖の霧人」、墓地でふざけた男の辿る末路…「T田墓地に眠る魂」他、札幌、千歳を皮切りに、旭川、富良野を通って釧路、弟子屈、そこから紋別、稚内と北上し、海岸沿いに石狩、小樽と下って道南の函館、松前に至る一大怪拓記。アイヌや開拓の歴史を背景に生まれたしばれる恐怖。北海道のもうひとつのガイドブックとして楽しんでいただければ幸いである。
蝦夷忌譚 北怪導
服部義史
大ヒットご当地怪談「恐怖実話 北怪道」の続編がよりディープになって帰ってきた!店の前に横たわる黒い影。跨いだその日から火の禍が…「手稲区のコンビニ」、不審死の続出する恵庭市のアパート。一体何が起きて…「アパートの変化」、祖母が死ぬ直前綯った縄で首を吊った祖父。連鎖する死の原因は…「独り暮らしの訳」、苫小牧市の家具付き中古住宅。いざ住むと調度品に不気味な変化が…「ある家の傀儡」、道内の民家や住宅地など生活圏内で起きた怪事件、恐怖譚全36話を収録!
実話怪奇録 北の闇から
服部義史
北海道在住の著者が全道から聞き集めた北の大地の怖い話、不思議な話。体験者の実在する生々しい怪談の数々は、まるで雪のように時に空恐ろしく、時に優しく胸に沁みる。・奇怪な現場写真も掲載する恵庭市の家は、屋根裏に強力な霊が棲みつく。霊と交わした共同生活の取引とは…「恵庭の家の話」・旭川市の路上でガードレールに凭れて座る少年霊。事故死した現場から動けない彼を視てしまった男は…「訓え」・夢に現れる夕張郡の田舎道と古屋。小学生の自分と友達は床下の甕を覗き恐ろしい出来事を体験する…「記憶」――他、web連載に書き下ろし18篇を追加した滋味深い北海道の実話怪談集!
北霊怪談 ウェンルパロ
春南 灯
旭川出身、札幌在住の著者が丹念な取材のもとに綴る地元・北海道の怪。ネットフリマで落札したアイヌの小刀に宿る、死者の念…「マキリ」、石灰山の洞穴=あの世に通じる穴が赤く灯る夜。死んだはずの大叔母が…「ウェンルパロ」、樺太からの引揚船がソ連に撃沈された三船殉難事件。その慰霊碑そばの海岸を彷徨う少女の正体とは…「符合」、三毛別羆事件の跡地で著者が耳にした死者の声…「羆嵐の現場にて」、オンコが群生する離島に残る恐ろしき天狗伝説…「天狗の棲む島」他、道内の歴史や事件に絡んだ実話怪談、全46話収録!
この記事が気に入ったら
フォローをお願いいたします。
怪談の最新情報をお届けします。