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【連載日記】怪談記者・高田公太のデイリーホラー通信【#17】実話怪談の書き方・構文を理解する/国家が破産する日/スマホ依存について

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新聞記者として日夜ニュースを追いながら怪異を追究する怪談作家・高田公太が、徒然なるままに怪談・怪異や日々の雑感を書き殴るオカルト風味オールラウンド雑記帳。だいたい2~5日前の世相を切ります。毎週月曜日と木曜日に更新!

2021年3月4日(木)

 調子は悪いまま。

 知人に不安を吐露し、なんとか心のやりくりをする。

 強めのうつ状態の時は、時間をまったく有益に使えない。

 仕事をする気にもならないし、仕事をしないからと趣味に時間を割く気にもならない。

 やれることと言ったら、何も考えなくてすむスマホのゲームか喫煙。あるいはその両方。

 「スマホ依存」という言葉があるが、個人的な体験から考えるに、その人の「依存以前」の精神状態がスマホ依存の原因となっているのではないだろうか。

 例えば、私は娘に四六時中スマホをいじることをほとんど許しているのだが、あまりにスマホにかまけて宿題が進まない時などは、「スマホ1週間禁止」を命じることもある。

 そんな時娘は仏頂面で私にスマホを返却し、その後こちらが思っていたよりもかなり大らかに時を過ごしている。

 絵描きをしたり、妻とクッキーを焼いたりと「スマホを奪われたからと、だから何?」と言わんばかりだ。

 これは依存ではないだろう。まったく禁断症状が出ていないのだ。

 対してうつの私は逃げるようにスマホに没頭する。

 もし家で独り落ち込んでいる時、手元にスマホもMacBookもなかったら、とても不安な気持ちになるだろう。

 どうやって逃避したらいいのか、追い詰められた心を路頭に迷わせることになる。

 そんなことにならないように、スマホをお守りのように握りしめ、外部からの刺激で自分が傷つかないよう、食い入るようにスマホを見詰める。

 これが依存を生む。

 私は恐らく依存している。

 カフェイン、タバコ、インターネット依存症の私は心身ともに不健康でありながらも、今のところしぶとく生きている。

 晴れやかな日も時にはある。

 しぶとく生きていると時々、そんな宝物を見つけることができるのだ。

 仄暗く、悍ましいほど複雑な心の洞窟には、まだ宝物が眠っている。

 いくら迷っても、その宝物はいつも私とあなたを待っているのです。

#依存症 #完全なるエッセイ #デイリーホラー通信とは

2021年3月5日(金)

 スタバで仕事。

 無事定員3名が埋まった「第2回オンライン怪談の書き方教室」の準備をする。

 怪談を書くことに興味のある人はいつでもDM下さい。

 3人集まったら次々とやりますので。有料の1000円です。

 ここで話せる範囲で言うと、怪談の書き方はまずは「構文」を覚えると取っ掛かりが楽だ。

 構文とは何ですか? と思う方もいるだろうが、実際怪談本を無作為に選んで10冊くらい読むと、書き出し、話の展開、オチ(サゲ)のパターンに法則性のようなものが見えてくる。

 「誰から聞いたか」は手厚く書くか、あっさり書くかの二択。

 怪異までの導入部分も、取材した怪談の内容が「突如起きた意味不明系」なら怪異直前くらいから書けばいいし、「因果関係が何か見える系」なら、因果関係を表す部分を、体験者のプロフィール的な記述を交えてしっかり書く。

 これらパターンを「てにをは」と「平易な文」を押さえつつ時系列の順番通りに書けば、それらしいものは割合簡単に書けるものだ。

 しかし、言葉にすると簡単そうなこの怪談執筆がなぜ上手くできないかというと、初手から「面白く書いてやろう」「怖く書いてやろう」「凄いものを書いてやろう」という力量に合っていない意気込みが出てしまい、結果「本人は楽しく書いていることは伝わるが、読者にとってはとても分かりにくい文」の羅列になってしまうからである。

 ここにハマりながら大量に書いても、ほとんど良い結果は出ない。

 誰かがその文章に「分かりにくいですよ」と教えてくれて、それを受け入れることができてからがスタートだ。

 まずは「分かりやすい普通の文章」の大量生産が最も為になる。

 「これでは誰が書いても同じではないか」と言われるくらいの文章を沢山沢山書いていると、段々と自分でも気が付かないうちに独自の手癖と思考回路が備わってきて、これが「自分らしさ」に繋がる。

 読者はちゃんとそこに気づいてくれるので、安心してシンプルな文章を紡いでいい。

 こうやって怪談作家を代表したような物言いをしてしまうと、決まって「そういうお前の文章は分かりやすいのか」という内なる声が聞こえてくるのだが、はっきり言う。

 ごめんなさい。

#怪談の書き方教室

2021年3月6日(土)

 WOWOWオンデマンドで韓国映画「国家が破産する日」を視聴。

 1997年の韓国通貨危機を巡る物語。史実を元にして書かれた脚本……ということで、登場人物たちはいくら頑張っても劇中にやがて来る未来から避けられない。

 ユニークなのは、ただ「IMFの介入でみんな不幸になりました」という描き方をしないで、ちゃんと危機を利用して金儲けできる人もいたことにも大いに触れている点。

 主人公を誰とするか、どの立場から見るかで感じ方が違う。

 悪役も含めキャラクターにどんどん愛着が湧き、ラストが物凄く良い感じだったので、シリーズ化してほしいと思った。

 暖かい日が続くね、と皆が油断していた頃にまた鬼寒い。こんなところで生活していたら、そりゃあ精神も不安定になりますわね。

 淹れたてのコーヒーの冷め方が悪魔的。

 前回の更新では実話怪談をがっつりと掲載した。

 怪談ってほんと良いもんですね。

 日記を書くより、実話怪談を書く方が文字数も埋まりやすく楽だ。しかし、ここに数に限りがある取材した体験談を投下しまくっていたら、恐らく本が出なくなってしまうだろう。

 また気が向いたら怪談も出します。

 何事もバランスです。

▲前回の実話怪談はコチラ▲

#国家が破産する日 #映画 #デイリーホラーとは

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書いた人

高田公太(たかだ・こうた)

青森県弘前市出身、在住。O型。実話怪談「恐怖箱」シリーズの執筆メンバーで、本業は新聞記者。主な著作に『恐怖箱 青森乃怪』『恐怖箱 怪談恐山』、『東北巡礼 怪の細道』(共著/高野真)、加藤一、神沼三平太、ねこや堂との共著で100話の怪を綴る「恐怖箱 百式」シリーズがある。Twitterアカウント @kotatakada 新刊『青森怪談 弘前乃怪』2/27発売中!

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