「闇塗怪談」入門 シリーズの魅力を徹底解剖。作者の営業のKさんインタビュー!!
金沢市に実在する会社・細田塗料の公式ブログで、営業部の社員が商品とは関係のない実話怪談を綴っていることがYAHOO!ニュースにも取り上げられ、一躍話題になった「営業のK」さん。
現在はご自身のブログ「およそ石川県の怖くない話!」にて、夜な夜な恐ろしい実話怪談を綴っています。
怪談文庫の大人気シリーズ「闇塗怪談」は、その営業のKさんが書籍のためだけに書き下ろすとっておきの最恐怪談です。
現在1巻~6巻までが発売、次回第7巻『闇塗怪談 朽チナイ恐怖』(予約受付中)が来月6月末に発売になるということで、このGWにシリーズ既刊の一気読みはしてみてはいかがでしょうか?
怪談NEWSでは「闇塗怪談」の魅力を徹底解剖していきたいと思います。 それでは早速、著者の「営業のK」さんにインタビューしてまいりましょう!
目次
営業のKさんのルーツはどこ?
編集部(以下編):ご出身は石川県とのことですが。
営業のK(以下K):はい。石川県の金沢市生まれです。高校までは金沢で過ごし、大学時代は神戸市に住んでいました。ですから今でも関西に行くと.勝手にに関西弁に切り替わりますね(笑)
大学を卒業してからはずっと金沢に住んでいますが、営業という仕事柄、全国のいろんな場所に行っています。それから趣味のバイクでも日本中を回っています。その土地その土地の魅力、様々な特徴があって何度行っても飽きるということが無いんです(笑)
編:ズバリお聞きしますが、子供の頃から霊感とかありましたか?
K:はい。物心ついた時から自分は他の人には視えないモノが視えるんだ……と、悩んだ時期もありました。
実は長らく、「くだん」*¹という話の体験以降、そういう不思議な能力が身に付いたのかな、と思っていたんですが、母親に聞くと、どうも違うんです。生まれてすぐの頃から、かなり変わった反応をする赤ん坊だったみたいで、もしかしたら生まれつきなのかもしれませんね。
編:霊との初めての遭遇、最初の恐怖体験を教えてください。
K:これはまだ書いていない話なんですが、私の初めての霊体験は保育園の頃に視てしまった女の人の霊だったと思います。
私の通っていた保育園に迎えに来る女の霊なんですけど、実際にその霊に連れて行かれてしまった友達もいましたから。
編:さらっと怖いことを…。それはぜひ次回刊で詳しく書いていただきたいです。Kさんは視えてしまう体質とのことですが、除霊や浄霊というのはできますか?
K:いや、そういうのは何もできませんね。ただ、視たり聞こえたり感じたりするだけで……。だから、困った時にはいつもAさんや姫ちゃん、そして富山の住職と呼んでいる3人に助けてもらっています。
きっと、この3人と知り合えてなければ私はとっくにとり殺されていると思います。それ程凄い3人なんです。
Kさんの強い味方、霊能者Aさん、姫ちゃん、富山の住職――
編:闇塗シリーズにたびたび登場されるAさん、姫ちゃん、富山のご住職については、前から聞いてみたいと思っていました! (今回は、Kさんの監修のもと、イラストレータのののくえさんに、御三方を似顔絵を描いていただきました!)
それではまず、いちばん登場回数が多いAさんについて教えてください。
K:Aさんと最初に知り合ったのは趣味でやっているバンド関係の飲み会ですね。
勿論、お互いに別々のバンドに所属していますからその時が初対面なんですけど、とにかく『失礼な奴』という印象しか無かったですね。
編:失礼な奴…ですか?(失笑)
K:はい。最初に言われた言葉が「そんなに強い守護霊を持っているのに、まさに豚に真珠ですね」という言葉でした(笑)
編:…強烈ですね。Kさんの守護霊というのは?
編:なるほど、それは信じちゃいますね。
K:でも、決定的だったのは、それからしばらくしてのことです。私が知らず憑依されてしまった時があって。その時に突然 Aさんから電話をかかってきて、「Kさん、そのまま前に進んだら死にますよ」って言うんです。ハッと我に返って足元を見たら、気付かないうちにビルの屋上の端に立っていたということがありました。
編:それはまた強烈な……。AさんにはKさんの状態が視えていたんですね。不思議です。
K:それから、何度となく私はAさんに命を救われてます。とにかく私も今まで数多くの僧侶や神官、霊能者さん達を見てきましたが、その能力は本当に桁外れとしか言いようがありませんね。
そして、それは間違いなく死線を超えるほどの辛い修行の賜物なんだと思います。
容姿はとても綺麗で、まるでモデルさんみたいなんですけど、口は悪いし性格も……(笑)
だから一緒に歩いていると皆、羨ましそうな顔をするんですよ。でもそれは内面を知らないだけかもしれません(笑)なにしろ怖いお方なので(笑)
でも、今では掛け替えの無い仲間ですし、命の恩人でもありますから、私にとってもとても頼れる存在ではあります。
編:姫ちゃんはいかがですか?
K:姫ちゃんと出会ったのはある方からの依頼で、とある心霊スポットにAさんと一緒に行った時だったですね。
偶然、そこに廃墟探索にやってきた女子高生の1人が姫ちゃんでした。
やはり霊的な何かが分かるのか、Aさんも姫ちゃんも最初からお互いにかなり意識してましたね。
特に姫ちゃんはかなり対抗意識を燃やして張り合ってきていたのが懐かしいですね。 その後は完全にAさんの弟子的な立ち位置です。
編:でも強いんですよね? 姫ちゃん
K:ええ。あのAさんですら、「姫ちゃんだけは敵に回したくない」というくらいで。姫ちゃんの能力というのも規格外で唯一無二のものですね。
容姿は本当に何処にでもいる天然ののんびり屋さんなんですが(笑)
でもどんなに恐ろしい場所でも、その場にいるだけで良い意味でリラックスさせてくれますから貴重な存在です。
二人の能力は甲乙つけ難いのですが、全てがAさんとは対照的で楽しいですよ(笑)
編:最後に紅一点の逆、唯一の男性、富山のご住職について教えてください。
K:彼ともやはり心霊事件絡みで知り合いました。私の友人が悪霊に憑依されてしまった時に、知り合いの紹介で彼を頼ったことがきっかけでした。それが話しているうちにだんだんと意気投合してしまいまして(笑)
編:不思議とウマがあったような?
K:はい。 私と年齢も近くてとても面白 い奴ですよ(笑)
でも、髪型はいつ見てもボサボサですし、酒も飲むし肉も食べる。おまけにお姉ちゃんも大好きですから完全な生臭坊主ですね(笑)
編:えーと、俗世にも理解があると(笑)
K:ただ、住職自身の能力は相当なものです。
お寺には曰くつきの品々を預かって封印していますし、依頼を受ければ除霊も生業にしていますから相当なものなんだと思います。
ただ、すぐ近くに A さん、姫ちゃんという規格外の化け物がいるせいで、若干影がその…薄くなってしまいますけどね(笑)
編:いやいや、皆さんそれぞれ強烈な個性をお持ちですよね。そして頼もしい!
6巻のあとがきにもありましたが、最近は K さんのご自宅、ご家族にも障りがあることがあるとか…。ちょっと心配なのですが。
怪異は自宅の中にまで侵蝕してきている。そして、家族は――
K:そうですね……。もともと不可思議なことが起きたり、変な音が聞こえたりすることはままありましたが、ブログで怖い話を書くようになってから、そして更に本を出させて頂くようになってからは以前にも増して怪異と呼べる事象がより頻繁に、そして露骨に発生
するようになりましたね。
編:怪異のほうが自己主張してきたような感じですね。
K:怪談作家の諸先生方が怪異に悩まされているという話はよく聞いていましたが、やはりそういう所には集まってきてしまうのかな、と。
リビングでは目の前で重たい引き戸が何度も開いたり閉じたりを繰り返したりするのを妻と娘がはっきりと視ていますし、実際に家族全員が霊を実体として何度も視ています。
編:ご自宅の、家の中で……?
K:ぜんぶこの家の中でのことです。その度に A さんに助けを求めていますからなんとか無事で済んでますけど、それでも毎晩、階段を上ったり下りたりする足音は消えないですね。
家族全員がもう、その程度の事には慣れっこになってしまって(苦笑)
編:いやはやそれは、ご家族の理解があっての執筆活動でもありますね。
K:そうですね。家族の理解と支えなしには実話怪談を書き続けるのは無理だと思います。
私はずっと家の中で起こっている怪異について、私以外の家族は気付いてないと思っていたんですよ。それがある時、娘にこう言われました。
「お母さんから言うなって言われてるんだけど、最近、なんか家の中で変なことが起こりすぎてるよ? ずっと前から起きてたけど、最近ちょっと酷すぎるから……!」と。
その言葉を聞いて私は愕然としました。怪異に気付いているのは私だけではなかったんだ、と。
編:ショックですよね……。
K:でも「もう、辞めようか?」という私に対して、妻と娘は笑いながら「え? なんで? 別にいいよ。退屈しないから!」と返してくれたんです。本当は怖いんだと思いますから、この時だけは本当に感謝しましたね。
編:いいご家族ですね。Kさんがたまに書かれる優しい怪談のルーツを見た気がします。
片町酔いどれ怪談、趣味の音楽とバイク
編:さて、「闇塗怪談」とは別に大好評だった怪談 NEWS の連載「片町酔いどれ怪談」。金沢の夜の繁華街と言えば、やはり片町。Kさんもよく通われるそうですが、酒場と霊は関係が深いと思いますか?
K:酒場=夜の繁華街ですから、確かに不思議な事に遭遇する機会は多いですね。でも、それも片町という歓楽街の1つの顔ですから。
編:なんだかいつ霊が出てくるかそわそわして、おちおち飲んでいられない気もします…(苦笑)
K:いやいや、酒を飲んでると気が大きくなって、あまり怖さは感じなかったりもしますよ(笑)
編:お酒好きのKさんですが、バイクとギター(バンド活動)もライフワークだとか。そちらの趣味に絡んだ怪談も「闇塗怪談」には出てきますね
K:確かにツーリングに出かけると怪異に遭遇する確率も高くなるかもしれません。
まあ、それは私自身が1人でふらふらと辺鄙な場所ばかりに行っているせいもあるんだと思いますけど(笑)
中でも 4巻の『消セナイ恐怖』で「目印」*²というタイトルで書かせて頂いてるんですが、兵庫県の日本海側の温泉地にツーリングに出かけた時に出会ったバイク乗りの青年のことは、今でも忘れることができません。
彼の持つ雰囲気、そして話の途中で私自身が視てしまったモノ。そして A さんからの忠告……。それらが全て忘れられない、やるせないような恐怖として刻み込まれています。
またバンド活動に関する話には、2 巻『戻レナイ恐怖』に書かせて頂いた「年に一度の大切な夜」のように、怖いというよりも不思議で温かい話の方が多いのかもしれません。私の行きつけのジャズバーでの出来事なんですけど、亡くなられたバンドメンバーの方が今でも一年に一度その店に戻って来てくれるんです。店のスタッフも常連客も皆、それに気付いていて、それでも誰も怖がってなくて……。その日は本当に素敵な夜を過ごせるんです。
編:底冷えのするような話もあれば、心温まるような話もある。それが「闇塗怪談」シリーズの大きな魅力だと思います。霊、死者もまた人間だと思わされる話ばかりです。
それでは最後に、来月発売の 7 巻について教えてください。
K:はい。次作の第7巻ではシンプルな怖さに戻った話を書いてみたいな、というのがあります。実は最初に出した第1巻を読み返してみて、そのシンプルな怖さみたいなものを再発見しました。確かに文章は拙いのですが、淡々とした文章から伝わる怖さもあるのかな、と。そして、そんな私の思いを反映させられるような恐ろしい話が沢山集まって来ています。
それは読者の方だったり、飲み屋で知り合った方達だったりと様々なんですが、皆さん、とっておきの話を提供してくれて……。コロナ禍の中で本当に感謝しかありません。
具体的には地元の怖い話や身近な日常生活の中で起こる怪異、そして呪いの話などバラエティに富んだ内容になっていると思います。
怖いだけではなく優しい気持ちになれる話もありますので、その話ごとに色んな思いを感じながらお読み頂けると嬉しいですね!
編:ありがとうございます。7巻『闇塗怪談 朽チナイ恐怖』は 6月末発売です。皆さん、どうぞお楽しみ!
*¹ 「くだんというもの」(1巻『闇塗怪談』収録)。 半人半牛の姿で、 災いを予言するという生き物〈くだん〉。そのくだんに、Kさんが幼少期に近所のおじさんの案内で遭遇した体験談。続編「「件というモノ」 が4巻『闇塗怪談 消セナイ恐怖』に収録。
*²「目印」( 4巻『闇塗怪談 消セナイ恐怖』収録)。 ツーリングで意気投合したライダーの左腕にある傷。それは一族の業を背負う呪いの証だという。身の上話を聞くうちにKさん、そしてAさんまでもも巨大な闇に触れてしまう。
プロフィール
営業のK
石川県金沢市出身。
高校までを金沢市で過ごし、大学4年間は関西にて過ごす。
職業は会社員(営業職)。趣味は、バンド活動とバイクでの一人旅。幼少期から数多の怪奇現象に遭遇し、そこから現在に至るまでに体験した恐怖事件、及び、周囲で発生した怪奇現象をメモにとり、それを文に綴ることをライフワークとしている。
勤務先のブログに実話怪談を執筆したことが Yahoo!ニュースで話題となり、2017 年「闇塗怪談」(竹書房)でデビュー。好きな言葉は、「他力本願」「果報は寝て待て」。
ブログ【およそ石川県の怖くない話!】
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ののくえ
霊感は全くなく ホラー映画やホラゲは苦手、でも怖い話や怪談は好き。昔から民俗学に興味があったので 土着信仰系や人怖話に惹かれがち。4 年程前に YouTube で怪談朗読に出会い、THC オカルトラジオさんをきっかけに 怪談朗読者のごまだんごさん、りっきぃさん、鏡太郎さん、夢猿さん等のファンアートを描き始めました。
現在 YouTube やツイキャス、SNS 等でサムネやアイコンを描いています。
Twitter ID: @nonokue_no_pf 御用があれば お気軽に DM 等でご連絡下さい。