【日々怪談】2021年3月6日の怖い話~ 待機
【今日は何の日?】3月6日:弟の日
待機
変な夢を見た。
夢の中の自分は、自転車で山ひとつ越えた隣の集落まで出かけている。
そこで、苔むした墓前の前に膝をついて、一生懸命謝っているのだ。
墓碑銘はよくわからない。
ただ、ひたすら「ごめんなさい、ごめんなさい」と繰り返しているうちに目が覚めた。
「……兄ちゃん、兄ちゃん大丈夫?」
目覚めると弟に揺り起こされていた。うなされていたらしい。
「いや、変な夢見たわ」
妙にハッキリ記憶に残っている夢の話を弟にすると、弟は「ゴメン」と謝った。
「なんでお前が謝るんだよ」
「いやあ、それが昨日、この部屋で克也とコックリさんやったんだ」
コックリさんはなかなか現れなかったが、あれやこれやと念じてようやく呼び出した。
弟たちはおよそくだらない質問を重ねた後、「お帰り下さい」と帰ってもらった。
が、克也が「聞き忘れたことがある」と言い出した。
そこで、もう一度「コックリさん、コックリさん、たびたびスミマセンがいらっしゃいましたら……」と呼び出したところ、二度目のコックリさんは間髪を入れずに現れた。
「まるで待ちかまえてるみたいに反応速かったから、どこから来たのか訊いたんだ」
すると、十円玉はこう動いたという。
〈――ココデジットシテタ〉
「なんか関係あるかな? なんかあったらマズイから先に謝っとく。ゴメン」
「ゴメンっておまえ……」
しばらくの間、その部屋で寝るのはやめた。
――「待機」加藤一『 禍禍―プチ怪談の詰め合わせ』より