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3月新刊『西浦和也選集 獄ノ墓』内容紹介・著者コメント・試し読み・朗読動画

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伝説の怪談を、後日談含め大幅に加筆! 
書き下ろしも収録した西浦和也待望のベスト版!

「あのまま家にいたら、巻き込まれちゃうよ」
累々と絡み合う実話の恐怖――「執着」(書き下ろし)より

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あらすじ

希代の怪談蒐集家・西浦和也の代表作を大幅に加筆し、本書だけの書き下ろし実話怪談を多数収録した、記念すべき初のベスト版!
・一本のホラービデオが原因で巻き起こる惨劇、そして恐怖は連鎖して…「黄色いゴムボール」
・繰り返し見る気味の悪い夢に潜む戦慄の正体…「夢の話」
・キャンプ場で遭遇した怪異と身も凍る恐ろしい顛末…「闇で叫ぶ声」
・土地に滲みついた禁忌、その真実に辿り着いた者に訪れる絶望の記録と、忌まわしき後日談を纏めた連作…「獄の墓」
——ほか収録。日常の脇に口を開けた忌み地、絶対に其処を探ってはならない…。

著者コメント

今回、初の総集編として発売させていただきます『西浦和也選集 獄ノ墓』は、 これまで起きたことをもう一度時系列順に並べ直し、できるだけ当時のことや、 以前は書けなかったこと、後日談も含めて再構成した最後の獄の墓となります。

また今年2021年は、東日本大震災から10年目ということで、震災直後の4月に被 
災者の方からお預かりした話「なじょすっぺ」も再録しました。「私にとっては、とても辛い話なんですが、両親の子供であったことを忘れないためにも聞いてください」という体験者さんの言葉が、10年経った今も忘れられません。
怪談とは「怖いだけ」ではなく「大事な想いを記憶するもの」「自分を奮い立た せるもの」と改めて教えられた話です。

書き下ろし「闇で叫ぶもの」ほかも収録しましたので、初めて読まれる方も、そ 
うでない方も是非お読みください

著者自薦・試し読み1話

なじょすっぺ

十年前の東日本大震災で、K子さんの住んでいた気仙沼は津波によって、ほとんどすべての家が流されてしまった。

職場で被災した彼女は難を逃れたが、実家は流され両親の行方もわからなくなってしまった。そのため職場の仮眠室に寝泊りしながら、時間が許す限り自宅跡や避難所を回っては、両親を探していたが、行方はようとしてわからなかった。

そしてひと月が経ち、四月に入った頃のことだった。

――バタバタバタ……バタバタバタ

夜、仮眠室で寝ていると、布団の周りを誰かが走り回っている。

初めは店長が様子を見に来たのかと、足音がするたびに起き上がっていたのだが、なぜか起きると足音は途切れてしまう。灯りをつけて辺りを見回しても、当然誰かがいるはずもない。

そんなことが何回も続くので、気になったK子さんは店長や仲間のスタッフに尋ねてみたが、誰も仮眠室には入っていないし、今までそんな音を聞いたこともないという。

何の音だろうと思いながらも、震災以来、毎日が慌ただしく疲れていたこともあり、それ以上気にすることはなかった。

その日の夜も仮眠室の布団に横たわり、うとうとしていると例の足音が聞こえ始めた。

――バタバタバタ……バタバタバタ

(まただ……放っておいて早く寝てしまおう)

寝返りを打ち、掛け布団の中に頭を突っ込もうとした時だった。

『なじょすっぺ……K子ぉ、なじょすっぺ』

それは行方不明の父親の声だった。

『なじょすっぺ……なじょすっぺ……家もタンスもなんもかんも流されちまった……』

今度は母親の声が聞こえた。

「父ちゃん、母ちゃん!」

慌てて布団から飛び起きるが、仮眠室の中は真っ暗でふたりの姿は見えない。

『……なじょすっぺ……なじょすっぺ』

ふたりの声は部屋の中を、バタバタという足音とともにぐるぐる回っている。

(そうか。ふたりはいつも私のことを心配して、きてくれていたんだ)

K子さんの目にはいつしか涙が溢れていた。

「わがった! おらがまた、家さ建ててやっがら 待っててけれ!」

暗闇に向かってK子さんが大きな声で誓うと、

『わがった、K子……』

暗闇からふたりの安心したような声が聞こえ、バタバタという足音も止まった。

暗闇にもう足音が聞こえることはなかった。

あれから十年、きっとK子さんは、今なお復興に頑張っている東北で、両親との約束を守ったに違いない。

(完)

朗読動画(怪読録Vol.74)

【竹書房怪談文庫×怪談社】でお送りする怪談語り動画です。毎月の各新刊から選んだ怖い話を人気怪談師が朗読します。

今回の語り手は 星川慶子 さん!

【怪読録Vol.74】あ、あの男は!? 不動産屋だけが知っている物件の恐怖―西浦和也『西浦和也選集 獄ノ墓』より【怖い話朗読】

商品情報

好評既刊 

現代怪談 地獄めぐり

実話怪談の蒐集家でありライブや番組出演、イラストレーターやゲーム制作者としても精力的に活動する西浦和也、事故物件に住み続けることで恐怖体験を伝道する芸人・松原タニシ、緻密な取材と執念で怪異を掘り下げていく川奈まり子、怪談の語り部として皆を震え上がらせる牛抱せん夏、そして新人ながら今後が楽しみな内藤駆など強者たちがそろう実話怪談アンソロジー!

著者紹介

西浦和也  Nishiurawa

不思議&怪談蒐集家。心霊番組「北野誠のおまえら行くな。」や怪談トークライブ、ゲーム、DVD等の企画も手掛ける。イラストレーターとしても活躍する。単著に「現代百物語」シリーズ、『実録怪異録 死に姓の陸』『帝都怪談』、共著に『現代怪談 地獄めぐり』などがある。

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