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6月新刊『第六脳釘怪談』(朱雀門出)内容紹介・試し読み・朗読動画

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日常が転変する奇怪な実話怪談!

不可思議な世界観が病みつきになる朱雀門出の人気実話怪談シリーズ〈脳釘怪談〉第6弾!

歪んだ怪奇世界を覗く、朱雀門実話怪談開幕!

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あらすじ

「伊吹山でUFOを見た話」

琵琶湖の北東にそびえる霊峰・伊吹山。古くから様々な伝承の残る此の地で、実際に起きた説明のつかぬ怪事

「こぶん」

深夜の路地裏で目撃した、血に塗れたおぞましい光景。その日から、日常に悪夢のような怪異が刺し込まれる!

「白い鱗」

海釣り中に遭遇した溺死体は、不気味にも小舟についてくる。よく見るとまるで妖怪!?その奇怪過ぎる姿とは。

「新・真実の世界」

生首をつまむ大鬼、首吊り死体が連なる部屋、頭だけの怪物など子どもの頃に目撃した信じ難い怪事を集めた十二連作

「ペットは笑うよね」

飼い犬がニヤァと厭らしく笑うとき、誰かが死ぬ…。どこかで聞いた話だなと思った人は是非とも読んでください。

「腕ごろごろ」

朦朧とする意識のなか、何故か自分が居たその部屋にはおぞましい景色が広がっていた!血生臭い事故物件(?)奇譚

「ギガントコップ」

深夜。誰もいない郊外の国道で、奇妙なものを見た。道路に進撃していたのは、恐ろしく巨大なアレだった!?

「×」

オカルトに没頭し突然失踪した従兄。親戚とともに家探しに訪れると奇妙な印が…。そして絶望の結末が!

著者コメント

脳釘怪談シリーズも第六と冠するほどに続き、これもご支持くださっている皆様のお蔭と感謝しております。

本シリーズの面白さや独自性は、奇妙さにあると思っております。いくつも巻を重ねても、そんな怪談としての面白さを追求するばかりです。

さて本書、第六脳釘怪談ですが、自分とは別のルールや行動原理をもつ闇の存在たちに触れてしまったような、これまでに自分が培ってきた常識を壊すような奇妙な出来事を様々にご紹介できたと思っております。それ自体なんなのか、なぜそのタイミングでそんなことに出遭ったのかなど、よくわからないことばかりで、もしかすると原因あるいは関連する事象かと思えるものはあるけれども、全く違う可能性もある……そんな意味不明で不安になる体験の数々をお楽しみください。

例として試し読みの一話を以下に公開いたします。本編ともども楽しんで頂けましたら幸いです。

試し読み 1話

五十二 先生が首を吊っています

 浜村さんという四十代後半の方から伺った話である。
 中学の頃の、ある放課後のこと。水泳部に所属していた浜村さんはプールサイドで部活をしていた。もう年の暮れも近いという寒い時期で、泳ぐことはなかったが、部活自体は休みではなく、ランニングや腕立てなどのトレーニングをしていたのだという。
 顧問をしていた氷川先生は水泳をしていたわけではなく学生時代は柔道をしていたそうで、夏よりもむしろ冬のトレーニングの指導の方が力が入っていたという。
 細身で強いて言えばイケメンの部類なのだけれど、そんな優男に見えて、実態はサドが入ったようなしごきをしていた。その日も、五百回のスクワットで疲れたと音を上げていたところに、追加の二百回を言い渡されて、浜村さんは心の中で先生への呪いの言葉を吐いていた。
 ガガガガガー。
 というノイズが唐突にスピーカーから流れた。今から校内放送が流れるのだ、と浜村さんはそう予想した。その予想は当たっており、実際に放送が流れるのだけれど、その内容は意外すぎた。
「氷川先生が職員室で首を吊っています」
 明瞭な女生徒の声だった。ただ、誰だとは特定できない声だった。
 周囲がざわついた。そのざわめきには浜村さんの声も混じっていた。
 そうなるのは理解できる。とても正常な放送とは思えない。しかし、ちゃんと聞こえたという者と、単なるノイズだったという者がいた。
 当の氷川先生には、はっきりと聞こえていた。先生は部員を見まわして、
「ちょっと、放送室に行ってくる」
 と告げてプールを出て行った。納得できる行動だった。ただ、浜村さん達、水泳部員は誰も付いて行かなかった。誰なのか知りたい気持ちはあったが、生徒の自分達が行くのはどうかと思ったようである。だから、そこからは先生からの伝聞になる。
 放送室には誰もいなかった。すでに他の先生は駆けつけていたけれど、その先生が着いたときにはすでに誰もいなかったという。
 あんな放送をしたのは誰なのか、先生も生徒も見当がつかなかった。しかし、悪質なので、犯人を突き止めて指導しなければならないということになっていた。
 結局、誰の仕業かはわからず終いであった。
 その騒ぎは時が経つにつれ忘れられていった。
 半年後のことである。
 首吊り、が起きた。
 氷川先生ではない。職員室でもない。
 その中学の先生ではあるけれど、氷川先生と同じくらいの年齢の女の先生であった。
 一人暮らしの自宅で首吊り自殺をはかったのだ。
 人気があって、浜村さんも好きだっただけにとてもショックだったが、さらに追い打ちをかける事実を知った。氷川先生と不倫関係にあって、それで揉めての死であったの
だという。

(了)

朗読動画(怪読録Vol.90)

【竹書房怪談文庫×怪談社】でお送りする怪談語り動画です。毎月の各新刊から選んだ怖い話を人気怪談師が朗読します。

今回の語り手は 怪談社の 上間月貴 さん!

【怪読録Vol.90】その歌はキケン!?ロビーに鳴り響く讃美歌の正体とは…朱雀門出『第六脳釘怪談』より【怖い話朗読】

https://youtu.be/58S-YjGjRPY

商品情報

  • 書名:第六脳釘怪談
  • 著者名:朱雀門出
  • 発売日:2021/6/29 ※発売日は地域によって前後する場合があります。
  • 定価:本体680円+税
  • ISBNコード:9784801927018
  • シリーズ:脳釘怪談

著者紹介

朱雀門 出  Iduru Suzakumon

大阪府生まれ。2009年、「今昔奇怪録」で第16回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞。著書に受賞作を収録した『今昔奇怪録』『首ざぶとん』、実話怪談では「脳釘怪談」シリーズ。共著に「怪談五色」シリーズ、『京都怪談 神隠し』など。

おもな朱雀門出作品 好評既刊 

脳釘怪談

学生の頃に帰り道で“自分の顔”が落ちているのを見た奥さんの話をめぐって…「自分の顔が落ちている」、両親に建ててもらった豪邸に住み始めた矢先、息子が奇怪な行動をし始める「シタ仏壇」、その場にいないのに写真に写り込む同僚の生霊、なぜ?「血プリン屋」、誘われて遊びに行った“かおるちゃん”の家での恐怖、夢だと思っていたのに…「かおるちゃん」など、脳の奥底が痺れるような不気味さ、じんわりと纏わり憑く怪異、拠所ない身の震え…日常の隙間の不可解を覗き込む38編を収録。

脳釘怪談 呪殺

廃屋めいた屋敷に魅入られた男の顛末「おれんち」、祖父の遺品にあった古びた箪笥、開かない引き出しに隠された秘密「引き出しに目玉」、新しく入ってくるバイトにはなぜか“変なオジサン”が多い。彼らが語る奇妙な話「イルカの首」、机の裏に見つけた落書きの意味が分かるとき…「ブンスウ予言」、朽ち果てた廃村で出会った少女のおもてなし「なまぬるいカルピス」、独占欲の強い彼女を裏切った男は…「ジンダ筋」など36話を収録。脳の奥底に痺れが走る。なんだ、この厭な気配は。読むうちに毒される、それは呪いのように……。

第五脳釘怪談

Twitter投稿企画、竹書房文庫ランキング1位 実話怪談シリーズ最新刊!伝説の実話怪談〈脳釘怪談〉のシリーズ最新刊が満を辞して登場!キャンプ中に突如体験した戦慄の出来事とその顛末…「呼ばれる」 ・恐ろしい夢を見てしまう禁忌の部屋では過去何が…「食人の間」 ・関ヶ原古戦場で不気味な風体のものたちに出遭う…「欠けた人」 ・怖い話を綴る業なのか、怪談作家や家族の身に起きたリアル恐怖譚…「ある怪談作家の家」 ・無人の部屋で勝手に点いたモニター、映し出された恐怖とは…「窒息オーディション」 ――などファン待望の恐怖満載、60話を収録。

怪談四十九夜 埋骨

【編著】黒木あるじ

【共著】我妻俊樹/小田イ輔/川奈まり子/神 薫/朱雀門 出/鈴木呂亜/つくね乱蔵/冨士玉女/吉澤有貴

黒木あるじの元に集う最恐の実話怪談の書き手たちが49話を書き下ろす人気シリーズ最新作!古民家に泊まったところ掛け軸が鳴りだした。翌朝調べると意外な真相が…黒木あるじ「かけじくのおと」、来るものを拒むがごとく“入れない”心霊スポットに足を踏み入れた時…つくね乱蔵「入室条件」、一枚の心霊写真が見た者たちを呪いの連鎖に引き込んでいく…川奈まり子「感染」、祠へのお供え物を食べた子どもが迎える衝撃の結末…繰り出される怪異の数々に焼き尽くされ、骨まで恐怖に染まっていく――。

京都怪談 神隠し

【共著】 朱雀門出 舘松妙 田辺青蛙 花房観音 深津さくら

京都に所縁のある作家たちが書き下ろす〈京都〉が舞台の実話怪談集。花房観音、田辺青蛙、朱雀門出の実力派とともに、怪談師として活動する深津さくら、新進気鋭の舘松妙の五名がそれぞれの〈京都の怪〉を披露する。たびたび出没する鬼の目撃例をまとめた怪異譚「鬼の話」、心霊スポットで異形に追いすがられる戦慄「深泥池」、著者自身も巻き込んだ死の連鎖「死神」など洛中洛外の恐怖譚を収録。京都は怨念の土地――令和も続く古都の念は魅惑的に貴方に取り憑くに違いない。

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