竹書房怪談文庫 > 怪談NEWS > 新刊情報 > 2月新刊『青森怪談 弘前乃怪』内容紹介・著者コメント・試し読み・朗読動画

2月新刊『青森怪談 弘前乃怪』内容紹介・著者コメント・試し読み・朗読動画

Pocket

弘前市を中心に活動する怪談家たちが蒐集した地元青森の本当にあった怖い話!

十和田湖畔のキャンプ場の怪
津軽霊場を歩く子供達の霊
RAB青森放送のブースで録られた異音
馬の蹄の音がする中町こみせ通り
岩木山神社の山の神
死者が呼ぶ入前崎の断崖絶壁

その他、伝染病の隔離病棟のあった総合病院に纏わる怪異を著者二人が証言する「隔離病棟二話」、殺人事件の現場跡地に生家があった著者が幼少期の怪奇的記憶を綴る弘前の随筆など、全38話収録。

無料で読める怪談話や怪談イベント情報を更新しています

あらすじ

「女生徒」

授業中、突然何かに憑かれたように暴れ出し教室から脱走した少女。見つかったのは意外な場所で…

「度胸部屋」

度胸部屋と呼ばれる学生寮の一室。踏み入れた者は気が狂うと言われるそこで一夜を明かした先輩は…

「防犯カメラ」

施錠したはずの門が朝になると開いている現象が多発する津軽地方の保育園。その怪異の理由は…

「怪談随筆「新・津軽」四、五所川原市」

津軽霊場・賽の河原や水子人形堂で有名な金木町。早朝に祠を目指す子供達の群れはいったい…

「エンジェル様」

こっくりさんに似た降霊遊びエンジェル様にハマった筆者の姉。どうしても帰ってくれない霊の名は…

「呼ばれ、止められ」

釣りに行くはずが、無意識のうちに遊歩道を外れ、林の中を彷徨っている。いったい何に呼ばれて…

「コン!」

無言電話の主は死んだ彼女なのか?イエスなら1回ノーなら2回。受話器を叩いて返された答えは…

「ねがい」

夢に現れた十一面観音。願いを述べてみよと言われた矢先、息子が事故に。母が答えていた内容は…

著者自薦・試し読み1話

怪談随筆「新・津軽」 五、黒石市

 黒石市には、江戸時代から続く造りが通り全体に残された、「中町こみせ通り」がある。
 藩政時代に作られたアーケードに覆われたこの通りは、青森観光の中でも目玉の一つとされている。
 こみせ通り以外にも、魅惑的な温泉と飲食店が点在し、心惹かれるものがある。
 中町の蔵を改装したイベントスペース「音蔵 こみせん」で怪談イベントを開いた折は、こみせ通りの味わいと夏の夜の静けさが、怪談に一層の魔を潜ませた感があった。
 以前私が弘前市鍛冶町のスナックでボーイをしていた頃、同じ雑居ビルのスナックで働く黒石市出身の若者から、ある体験談を聞いたことがある。
 長尺故、ここで記し直すのは控えるが、怪談の内容は、ある倒産したガソリンスタンドに纏わる話であった(『恐怖箱 蝦蟇(竹書房文庫)』に「六号の家」として収載)。
 確かに黒石も県内の街並みの例に漏れず、シャッターが閉まったままの商店が目に付く町だ。
彼の話を聞きながら、黒石で生まれた二十歳の若者が、意図せずに「時代の隆盛と没落」を背後に置く実話怪談を語ったことを感慨深く思ったものだ。
「通りを歩いていると、目に見えない馬の足音が聞こえた」
 とは、黒石市在住の私がかつて働いていた飲食店の同僚談。
 小さな話であるが、確かに蹄が道を打つ音が聞こえてきそうな景色に誰もが納得する。
 高校時代、黒石から電車通学していた同級生の話にこんなものがある。
 兄が買ってきたアイドルグループ「男闘呼組」のカセットテープに異音が入っていた。
 異音は、うー、あー、という唸り声に時折お経のようなものが混じっていたという。
 そのテープは気味が悪いながらも保管しているのだが、誰かに聴かせようとすると見つからず、一人又は兄と部屋にいると、ひょいと床に転がっていた。
 同じ高校に彼の幼馴染の男子生徒がいたのだが、唯一彼は聞いたことがある。
 私が彼の家を訪問したときも、やはり見つからず、翌日「起きたら枕元にあった」と報告があった。
 彼は面白半分に嘘を吐くようなタイプではなかったので私は信じたが、この程度の情報では、読者の中に疑う者もいるだろう。
 だが、この怪しさが良いではないか、と私は思うのである。
 実はこの世の怪談はおしなべて怪しい情報で構成されている。
 ならば、あれは嘘、これは本当と判断することなど、誰にもできないはずだ。
 少し夜のこみせ通りを歩いた後に、妙な声が入ったテープの話を聞けば、それだけで信憑性は増すというものだ。
 他には、その昔、黒石市にあった廃病院へ肝試しに行った方曰く、「病院の中に入ろうとして侵入口までの途中にあるボイラー管の間を通ろうとしたら、管がキャンキャンキャンと高い音で鳴り出した」というのもある。
 これも、怪しくて好きな話だ。

(完)

著者コメント

青森のランドマークや方言、因習が出てきたからといって、果たしてそれが「青森ならでは」と言えるのだろうか。どの県にもそれらはある。代用可能なご当地感に何の面白みがあるだろうか。こうして「怪談随筆」が生まれた。私が青森にしかない空気を吐き出すように文章を綴れば、これぞ「ならでは」と呼べるだろうと思ったのだ。我が故郷の冷えた空気を感じてくれたら嬉しい。
 

朗読動画(怪読録Vol.68)

【竹書房怪談文庫×怪談社】でお送りする怪談語り動画です。毎月の各新刊から選んだ怖い話を人気怪談師が朗読します。

今回の語り手は 糸柳寿明 さん!

【怪読録Vol.68】その人物の顔が…弘前公園で出遭った理解しがたいモノ――高田公太『青森怪談 弘前乃怪』(高田公太/編著 鉄爺、鶴乃大助、高野真、小林龍司)

商品情報

青森・東北のご当地怪談 好評既刊 

恐怖箱 青森乃怪

高田公太

幽霊・人霊だけにとどまらぬこの世の異談――神仏の顕現、式神、妖かし、憑き物筋など、にわかには信じがたいが確かに存在するモノ、現実に起こった怪事件の数々を著者自らが取材して纏めた異形の実話怪談集!

東北巡霊

怪の細道

高田公太、高野真

幽霊・人霊だけにとどまらぬこの世の異談――神仏の顕現、式神、妖かし、憑き物筋など、にわかには信じがたいが確かに存在するモノ、現実に起こった怪事件の数々を著者自らが取材して纏めた異形の実話怪談集!

著者紹介

高田公太 Kota Takada

青森県弘前市出身、在住。新聞記者を生業とする傍ら、県内外の実話怪談を取材執筆する中堅怪談作家。主な著作に『恐怖箱 青森乃怪』『恐怖箱 怪談恐山』、高野真との共著に『東北巡霊 怪の細道』がある。

鉄爺 Tetsuji

弘前乃怪代表。音声ストリーミングサイトの先駆け「ねとらじ」時代から怪談活動をする。

鶴乃大助 Diasuke Tsuruno

怪談好きが高じて、最近ではイタコにも直あたり。いかつい怪談ロックンローラー。

高野真 Makoto Koya

仙台市在住の抒情系怪談作家。弘前市と怪談に心奪われ、弘前乃怪に加入。高田公太との共著に『東北巡霊 怪の細道』がある。

小林龍司 Ryuji Kobayashi

大道芸人として活動しつつ、実話怪談を蒐集。弘前乃怪のマスコット的存在。

この記事が気に入ったら
フォローをお願いいたします。
怪談の最新情報をお届けします。

この記事のシェアはこちらから


関連記事

ページトップ