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【連載日記】怪談記者・高田公太のデイリーホラー通信【#5】

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新聞記者として日夜ニュースを追いながら怪異を追究する怪談作家・高田公太が、徒然なるままに怪談・怪異や日々の雑感を書き殴るオカルト風味オールラウンド雑記帳。だいたい10日前の世相を切ります。毎週月曜日と木曜日に更新!

2021年1月 14日(木)

 クラスター発生のニュースがメディアを賑わす毎日。クラスター、クラスターというが、それは目に見えない。これってもう怪談じゃん、と思う。

 世界中が目に見えないものの恐怖を味わっている。

 締め切りが少し延びた気配を夜に感じ、進行を少し緩める。しかし色々とあるので、緊張感は漂う。

 大寒波で、冷え込みが凄い。会社でタバコを吸えないので、いちいち寒い思いをしてタバコを吸う。

 締め切りが近い時の兼業作家の気持ちは複雑だ。

 まずサラリーマンの定時が来ても、まったくさっぱりしない。家に帰れば定時のない仕事が待っている。

 飯を食って、横になるとあっという間に時間が経つ。しかし、いつかは起きて執筆を進めないといけない。なんとなく、今少し仮眠をとっても大丈夫なんじゃないかという妄想に駆られる。だが、それは無理だ、絶対に朝まで寝てしまうと分かっている。

 一瞬、専業作家に憧れるが、竹書房の一社依存で専業はあり得ない。まったく爽やかな気持ちになれないまま、MacBookを立ち上げる。

 歳のせいか、ディスプレイの字がよく見えない。見えるのだが、識字に自信がない。

 昨夜、手をつけた原稿が誤字脱字、誤用ばかりと気がつく。十年以上作家をやっているというが、作業時間だけをぎゅっと詰めれば三年くらいになる気がする。

 ああ、しんどい。眠い。

 と思いながら仕事をする。

 良いものを作らなければ、と考えた頃には少し泣きそうになっている。

 聴いた音:YELLO「Solid Pleasure」、Girls in Airports「Dive」など

#クラスター #大寒波 #兼業作家 #中年 #老眼

2021年1月 15日(金)

 夜に配信「オカルトロニカ2」を視聴。

 あまたある怪談配信の中でも頭三個くらい抜きん出た完成度。チケット代2500円でもこの体験は安い。

 身内びいきなしで、住倉カオスを褒めるためLINEした。

 怪談を語る、書くにおいて、やはりセンスの有無は大きい。

 「センス」という言葉を使うと、何かを切り捨ててる印象を持つかもしれないが、センスというのは後から付いてもくるので、そんなつもりはない。

 ただ、真剣にやってんのか? という話はしたい。

 真剣にやってたら、なんとなーくみんなと同じことやっていいわけないのだ。真剣にやってたら、どうしたら人は飽きないか、どうやったら人は楽しいかを絶対に考えるし、それを考えるために色んなことを知っていないといけないのだ。

 感覚的なものだけで良いモノを生み出せる人は少ない。ならば我々は、感覚ではなく、経験と知識から新しい刺激的なモノを作り出すしかない。

 何かを真剣にやるというのは、このように恐ろしいことなのだ。

 みんな、スベることを恐れず自分だけのセンスを見せよう! 俺も見せるから! という話です。

 執筆の方は住倉カオスに負けじとセンスを見せようとしたら行き詰まる。

 村上ロックさん、田中俊行さんと電話。

 同じ歳だというだけで、この三人で配信をすることを決める。これもセンスなのだろうか。

 聴いた音:Husker Du「Savage Young Du」、Idioma「The Holy Science」など。    

 #作家 #オカルトロニカ #住倉カオス #クリエイター #村上ロック #田中俊行

2021年1月 16日(土)

  極めて体調が悪い。主にメンタル。

 娘が絶妙に宿題をやっていなかったことを妻から聞く。

 小学校の頃に宿題をやっていたかどうかが、人生において全くと言っていいくらい影響しないことを私は知っている。

 カトワンさんの編集の都合で、ちょっと締め切り延びる。こちらは編著の目処が立つ段階に来ていたので、安心に次ぐ安心。物書き仕事は締め切りが来たら終わり。その前は何がどうあっても終わってない。

 東京都からの転出者が増加しているそうだ。

 近郊に転出する人が多いというが、ぼちぼちと田舎に帰ったり、地元ではない地方で再スタートを切る人もいるらしい。

 実際青森に住む者として、青森は転入にオススメできるか? と考えてみたのだが、私のようにある程度感性が枯れている、厭世的に生きたい、という思いがある人ならばっちりだと思う。右も左も安月給の企業ばかりなのだが、うまく暮らせば、まあまあ。Netflixに入っておけば、仕事終わりに家から出なくて済むだろうし、青森だってAmazon通販はできますから。

 中央は「体験」が多い。映画一つとっても、多くのタイトルが公開されるし、音楽ライブも毎月魅力的なものが数多開催される。田舎には今も昔もそれがない。

 若い頃は恐ろしくその辺りへの渇望感があったものだが、今は求める「体験」の矛先を変えた自覚がある。

 単純に山が綺麗、飯が美味い、家族が笑っている、などが求める「体験」の中心になっていて、大方それで満足している自分がいる。

 もちろんNetflixも見るし、本も読む。東京で得たい体験があるなら、東京にも行く。だが、かつてのように「もっともっと。足りない足りない」とは思っていない。

 そう思っていたあの頃は、知的欲求を抑えきれないくらい体力があったんだろうなーと、加齢を感じるばかり。ネガティブな意味ではなく。

聴いた音:GROOVE ARMADA「Edge of the Horizon」、Noir「Stimulater V1」など  

#メンタルヘルス #締め切り #作家 #田舎暮らし

2021年1月17日(日)

 新聞紙面はまだまだクラスター発生のニュースが一面。

 そろそろ「コブラ会」に手を出すべきか悩む。いや、もうちょいひと段落してから。

 日記を書き始めてから、なんと自分は仕事以外していないんだろうと呆れる。もう少し「こんな映画観ました」「こんな本を読みました」みたいな、はてなダイアリーの人気ブロガーみたいなことを書きたいのだが、無いものは無い。と、書いてしまうと、まるでバカみたいだね。

 もうすこし詳しく書くと、少し前まで動画と本まみれの生活だった。見逃していた韓国映画をみまくり(「EXIT」めちゃくちゃ面白かった)、「クイーンズ・ギャンビット」に涙し、朝宮運河編「家が呼ぶ 物件ホラー傑作選」(ちくま文庫)を舐めるように読み、竹書房からの献本された怪談本の数々を読んで、色々と次作のことを考えていた。

 しかし! そのせいで! 今、締め切りがしんどいのだ!

 ということで、カトワンさんに原稿を渡したらこの日記ももう少し、幅が広い内容になると思います。

 音楽はながらで聴けるから良いよね。

聴いた音:Yoko Duo「Behaving Like a Widower」、Yumi Zouma「Truth or Consequences」など

#クラスター #コブラ会 #映画 #本 #カトワンさん #EXIT #クイーンズギャンビット #朝宮運河

2021年1月18日(月)

 パソコンで作業をする時は、ディスプレイの上辺が目線と同じくらいにくると良いと知り、該当しそうな椅子と机のバランスを我が家で探す。結果、小さいソファーで胡座を書いてまあまあ高さがあるテーブルを使うと丁度良いと分かる。確かに主に目が快適。だが、執筆している時の見た目がすごくダサい。

 以前、とある人気作家の執筆環境を捉えた写真を見たところ、全体的に死ぬほどスタイリッシュで椅子一つにも十万くらい掛かっていた。「椅子は大事」みたいなインタビュー付きだったのだが、比べて今の俺よ

 作家の収入ってどうなの? と問われると、とても表現が難しい。ただ数字で言うなら、ざっと説明できなくもないのだが、守秘義務があるためあまり触れたくはない。

 言える範囲で言うなら竹書房の怪談文庫に関しては、噂で聞いたあれこれを考慮して「好案件」の範囲にあるものと判断している。

 竹書房の怪談本は一般の目から見て、いかにもおどろおどろしい表紙がなんとも言えないB級感(営業するにおいての「分かりやすさ」に準じたデザインであって、業界的には正解とされている)を醸し出しているので、さぞ刷ってないんだろうと思わせておいて、実は出版不況を謳われる昨今の中ではかなり刷っている方だ。ちゃんと原稿料も払われているので、指定暴力団的な横暴を感じたことはない。

 ただ、作家・ライターというものは一社との取引でいくら貰ったかどうかはあまり重要ではなく、ちゃんと収入を得てそれだけで食べるためには、何社とも取引を持ち、かつ、たくさんたくさんたくさんたくさんたくさん書く、をしないと話にならないのである。

 私は正直、それができる気がしない。

 なので、私は現在兼業作家で「できる範囲のこと」だけしている。三十代前半の頃、随分と専業作家が眩しく見えたものだが、諸先輩から話を聞いているうちに、まったく憧れがなくなってしまった。もし自分が本気で専業作家の道を考えることがあるとしたら、兼業作家をしながら書いた一冊が超特大ホームランを打った時くらいだろう。可能性は低いが、本を出すと言うことはサイコロを振っていることに等しいので、それはそれで楽しい夢はあるといえる。

 とにかく粛々と面白いものを提供して、お金を得たい。あとは家族が幸せなら、それで良い。

聴いた音:Various Artists「Ghetto Acid Vol.1&2」など

#ワークスタイル #竹書房 #怪談本 #作家の収入 #兼業作家 

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書いた人

高田公太(たかだ・こうた)

青森県弘前市出身、在住。O型。実話怪談「恐怖箱」シリーズの執筆メンバーで、本業は新聞記者。主な著作に『恐怖箱 青森乃怪』『恐怖箱 怪談恐山』、『東北巡礼 怪の細道』(共著/高野真)、加藤一、神沼三平太、ねこや堂との共著で100話の怪を綴る「恐怖箱 百式」シリーズがある。Twitterアカウント @kotatakada

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