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【連載日記】怪談記者・高田公太のデイリーホラー通信【#12】ホラー映画との出会いは死霊のはらわた/鬼滅の刃はバリアフリーコンテンツ

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新聞記者として日夜ニュースを追いながら怪異を追究する怪談作家・高田公太が、徒然なるままに怪談・怪異や日々の雑感を書き殴るオカルト風味オールラウンド雑記帳。だいたい4~7日前の世相を切ります。毎週月曜日と木曜日に更新!

2021年2月13日(土)

「あ、地震だ」

 その声を聞いたのはクラブハウスの中でのことでした。

 災害と大戦は怪談との繋がりが強い。

 だが、悲しい事実を怪談に落とし込まれることを嫌がる人もいるだろう。ならば、一切歴史的な悲劇を怪談として取り上げることを止めるべきかというと、もしそんな世の中になった時に、その歴史のある側面を伝えにくくなる部分もある。

 ドキュメンタリー、映画、小説、怪談、音楽と色々な角度から悲劇を描き、受け取ったものは色々な角度から「悲しみ」に思いを馳せる。

 勿論、無理に悲しいことを知る必要はない。知る、考える余裕ができたらでいい。

 実話怪談はともすればまるでポルノのようになることもある。ホラー映画でも「トーチャー(拷問)・ポルノ」という言葉が生まれたように、ショッキングな描写だけが心に残るような描き方をすると、それ以外に何もなく、面白半分に死を扱ったような手触りを残してしまうのだ。

 しかし、こういったポルノ怪談的なアプローチが良くないものかというと、実際はかなり人気があり、それこそが怪談の中核を成しているともいえる。「トーチャー・ポルノ」という言葉も、イーライ・ロス監督の極悪非道ホラーヒット作「ホステル」から生まれたに等しい。

 私もみんなもポルノが大好きだ。

 非道な怪談こそ王道である。稲川淳二さんの有名な怪談は、どれをとっても強烈なビジュアルで表される狂気と死に彩られていることを忘れてはならない。

 私は以前から実話怪談というものを「ホラージャンル」の範疇で見ている。ホラーと怪談は違うだろうという意見もあるかもしれないが、私は実話怪談本を読むより先にスティーブン・キング、クライブ・バーカー、ディーン・R・クーンツなどが手掛けたモダンホラー小説に触れていたので、後に知った平山夢明さんの現代実話怪談もそのように捉えた。

 ホラーという言葉に実話怪談をサブジャンルとして呑み込む奥深さを感じているのだ。

 森会長が辞任表明。

 あと何年したら真にジェンダーフリーな世界が現れるのだろうか。私が生きている内は無理な気がする。

 私も妻も八歳の娘に「性別に囚われるな」という旨の声掛けをしている。彼女が性別という壁に阻まれない世の中に早くなりますように。

#地震 #実話怪談 #モダンホラー #ジェンダーフリー

2021年2月14日(日)

 Twitterで「近年の災害続きで日本人の防災意識が高まっている」という旨のツイートを見た。

 今回の地震でも震度に対して人的被害は少なかったようだ。

 青森に住んでいるので、東北の震災にまつわるよほど強い思い出があるのだろうと誤解されるが、私個人の体験としては「強い揺れ」「停電」「市役所最寄りの住居だった故の早めの停電復旧」のみだ。

 あとはほとんどがテレビの映像からなる記憶ばかりだったのだが、余りにも気が滅入るので積極的に情報も入れないようにしていた。

 そんな私なので、震災について言葉を発することに後ろめたさがある。悲しすぎて事実から逃げた私の言葉には何の重みもない。もっともらしい嘘をもっともらしい表情で言うくらいなら、黙ったまま冷たい人とでも思われたほうがましだ。

 トランプは無罪判決。

 いつか映画化されるんだろう。

 WOWOWオンデマンドで映画「ミッドサマー」を再見。初見の時も思ったのだが、これは最終的にブラックコメディである。ラストに笑わせるために、それまでの丹念な演出があったのだ。

 1985年のサム・ライミ監督作品「死霊のはらわた」公開時、私は六歳だった。

 だが、恐るべきことに私はこの作品を劇場で観ることに成功している

 どういうわけか一家で観に行ったのだ。

 当時の私は字幕をほとんど読めないのだが、悪魔のようなものが人間を壊していってるということは映像だけでよく分かった。強烈なシーンではキャップを深く被り、ツバでスクリーンが見えないようにした。母にはそんな私の姿がよほど可愛らしく映ったらしく、その日から36年が経った今でも懐かしそうにそのことを話す。

 85年はロメロの「ゾンビ」がビデオ化された年でもある。時系列が曖昧だが、同年かその数年以内には父がレンタルビデオ店から借りてきた「ゾンビ」を観ている。まだ十歳に満たない私は、これも帽子のツバ代わりに毛布を被りながら観た。観終えた後は一階へ降り、母と姉に誇らしげに「ゾンビ」の感想を報告した。その日のこともよく覚えている。人生に影響を与えるほどのショッキングな日というのは忘れられないものらしい。

 小学四年生からミニバスケットボール部に入り、全国大会にまでも行ったのだが、思い出として強いのはむしろキングの小説に熱中していたことだ。「ミザリー」「クリスティーン」「デッド・ゾーン」「クージョ」などは全て小学生時に読破した。兄が購入したものもあれば、私が書店に出向いて購入したものもある。

 我が家は「書籍と映画代に関してはいくらでも小遣いをやる」というバブルの名残を遺憾なく生かした情操教育方法を取り入れていたので、小学5年生の頃には一人で映画を観に行くようになっていたし、よく書店で本を買っていた。この頃から「ビデオでーた」(現「DVD&動画配信でーた」)を欠かさずに購入するようになっていた。確か高校生時代も買っていたので、8年くらいは買い続けていたのだろう。

 「ビデオでーた」にはレンタル開始する未公開映画を取り上げるコーナーがあり、私はこのコーナーにとても心を惹かれていた。このコーナーのおかげでジム・ワイノスキー監督「怪人スワンプシング」やラリー・コーエン監督「アンビュランス」、スティーブン・ノリントン監督「デス・マシーン」などを観ることができた。

 この辺りの「ビデオレンタル+ビデオでーた」から生まれた体験を共有できる人があまりいないのが寂しい。

 後に映画秘宝がムックとして刊行された時に、「ああ、私の今までの歩みがここにある」と感動したものだ。青森に暮らし、別段趣味を同じくする友人を持っていなかった私は自分の趣味がこのようにカテゴライズされるものだと思っていなかったのだ。

 映画だ本だと書き連ねたので、よほど暗い青春時代だったのだろうと思われる方もいるだろうが、まったくそんなことはない

 ビートたけしが大好きだった私は青森での学生時代を通して多動気味にはしゃぎ回っていたため、この明るさを好む多くの友人と楽しく過ごしていた。

#防災意識 #デイリーホラー通信 #思い出 #ビデオでーた

2021年2月15日(月)

「鬼滅の刃」2期の発表があった。

 高田家全員が共通テーマで話せる話題が増えるのは嬉しい。

 一頃昔は「感情を全部言葉で説明するのは良くない」という風潮があった気がするのだが、鬼滅の刃に関しては受け入れムードである。

 テレビにテロップが大量に入り始めた頃も強いバッシングがあった。こういう批判は説明しないと分からない人が増えるのではないかという危惧からきていたように思える。

 結果、何でもかんでも説明文がないと理解できない、行間を読めない人が増えたかというと、データがないのでよく分からない。

 私は、どんな時代でも行間が読めない人が不特定多数いて、それは増えも減りもしないだろうと思っている。

 バラエティ番組がテロップだらけになった一方、世界ではデヴィッド・フィンチャーのようなまったく説明がない(しかしフェアに情報は示される)表現も生まれている。

 我々はコンテンツを好みで選択できるのだから、どんな手法が取られていても構わない。

 行間を読むことができない=愚か、という図式も多様性の観点からみたら一概に言い切ってはいけない。

 先天的に共感力や想像力に限界がある人もいるのだ。

 そんな意味で「鬼滅の刃」はバリアフリーなコンテンツだったといえる。

 誰にどこまで伝えるかの案配はクリエイターが制御すればいいし、享受する者も数多あるコンテンツから合ったものを選べばいい。

 作品を褒めたり蔑んだりして上下を決める必要はない時代になった。ネットの中にそれらはある。我々は好きな部分をクリックするだけだ。いまやコンテンツとはデータでしかないと言い切っては横暴だろうか。こんな横暴も気に食わなかったらアクセスしなければいい。

 健全な時代だ。

#鬼滅の刃 #表現 #コンテンツ #インターネットの光

2021年2月16日(火)

 先日クラブハウスでオススメしてもらったアニメ「パラダイス警察」を観る。面白かった。

 私は海外アニメに詳しくない。

 今でもたまに観る「サウスパーク」以降の流れがよく分からない。マイク・ジャッジとマット・グレイニング、トレイ&マットしか追っていない程度だ。

 海外コミックも手を出そうとしたが、これっぽちも金が追いつかないので止めた。興味はあるのだが。

 信じられない吹雪が青森を襲う。

 暴風雪警報が出っぱなしで、近所がホワイトアウト。

 雪中行軍気分で出社した。

 娘とSwitchのゲーム「ぷよぷよテトリス2」をやり、ボロクソに負けた。

 こやつめ、ちょっとミルクを飲ませ過ぎたかしら……。

 県内近場の旅をしたくなった。 

 折角、日記を定期的に出しているのだから、青森県のPRもしたくなってきたのだ。

 写真と共に綴る旅行記はどうだろう。

 竹書房から依頼のあった「青森怪談 弘前乃怪」の販促活動をぽつぽつと。

 空気清浄機と4Kディスプレイを導入。

#パラダイス警察 #海外アニメ #暴風雪警報

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書いた人

高田公太(たかだ・こうた)

青森県弘前市出身、在住。O型。実話怪談「恐怖箱」シリーズの執筆メンバーで、本業は新聞記者。主な著作に『恐怖箱 青森乃怪』『恐怖箱 怪談恐山』、『東北巡礼 怪の細道』(共著/高野真)、加藤一、神沼三平太、ねこや堂との共著で100話の怪を綴る「恐怖箱 百式」シリーズがある。Twitterアカウント @kotatakada 新刊『青森怪談 弘前乃怪』2/27発売!

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