マンスリーコンテスト 2020年11月結果発表

怪談マンスリーコンテスト

ー 怪談最恐戦投稿部門 ー

2020年11月結果発表

最恐賞
噂の廃村音隣宗二
佳作
「とがけ」ふうらい牡丹
「はしらげの立つ村」丸太町小川
「村の集会所」綿帽子

「噂の廃村」音隣宗二

 かつて大和さんの家の近くには廃村があった。近所の山に入り口があり、そこから30分ほど登ると到着する。若者が出ていき、徐々に人が居なくなり廃村となった。ただの寂しい場所だ。だがそこに「女の幽霊が出る」という噂がどこからともなく沸いた。静かな片田舎の街に若者が集まり、週末は騒音が酷かった。

「本当に霊が奴らを呪ってくれたらな」そんな話を肴に酒を飲んだ帰り。走ってきた車が大和さんの少し前で停車した。
「オッサン。この辺に幽霊が出る村があるって聞いたんだけど」運転席から大学生くらいの青年が話しかけてきた。助手席と後部座席にそれぞれ若者が座っている。
「帰れ」と言うところだが、その時は大和さんの頭に悪戯心が芽生えた。
「あるけど、本当に行く気か? あの村にいってはいかん。女に憑き殺されるぞ」大和さんの深刻そうな顔と、ワザとらしい訛りに青年たちは馬鹿にした笑みを浮かべながら、
「ダイジョブ。ダイジョブ。俺たち、血気盛んな若者だし」
「そんな女がいるなら、俺たちが相手してあげますよ。きっと男に飢えてるだろうから」
 下品な笑い声残して、車は廃村の入り口に向かって走っていく車を見送りながら、
「何やってんだ俺は」と大和さんはひとり呟いた。

 次の日の朝、大和さんは廃村の入り口に向かった。
 捨てられたゴミを掃除するのが習慣になっていたのだ。昨日の若者たちの車がまだ止まっていた。
「あ! 昨日のオッサン!」ゴミを拾っていると上から声がかかった。
 見ると例の若者3人がこちらに降りてくる。助手席に座っていた青年が何かを背負っていた。鼻が曲がりそうな匂いがした。

「あ! 彼女? 上で偶然会って」大和さんの視線に気づき、そう言う彼の背中に乗っていたのは腐った鹿の死骸だった。まったく状況が理解できない。
「あれ起きたの!」一人が嬉々と死骸に話しかけた。
 何も聞こえない。だが3人は本当に人間の様に話しかけ、イヤらしい手つきで体を撫でている。
 蟲の湧いた死骸を背負う人間。腐った体をまさぐる手。冗談でも正気でも出来る事では無い。
 その光景と匂いに大和さんは吐き気を覚え、戦慄した。
「じゃあ俺ら、これから村でした、お楽しみの続きがあるんで」
 そう勝ち誇ったニタリと笑いながら、横を通り過ぎていく。
 車に向かう間も、彼らは鹿の死骸に嬉々と話しかけていた。

 大和さんが知る限り、その廃村で起こった妙なことはそれ一回きりである。

総評コメント

 11月のお題は「村」と「犬鳴」。村部門では田舎の変わった祭りやおどろおどろしい風習など知らない世界を覗き見る恐怖と高揚に満ちた作品が数多く集まりました。面白いのは、圧倒的に山村より漁村の話が多かったことでしょうか。これは意外でした。また、子どもの遊びである「かくれんぼ」と「かごめかごめ」に纏わる怪談が大変多く、村怪談としての傾向が見えた気がいたしました。
 最恐賞は「噂の廃村」音隣宗二。おおよその場所(県、地方)が特定されていないのが若干惜しいのですが、村を荒らしにくる若者についくだらぬ演技をしてしまう体験者の心情、そして戦慄かつ予想外の結末など、緊迫感のある展開がよく描かれていたと思います。
 佳作には「とがけ」ふうらい牡丹、「「はしらげの立つ村」丸太町小川、「村の集会所」綿帽子の三作品を選出。「とがけ」は山陰の漁村の怪。古典的な味わいが心地よくで、かつ結びに人間的な怖さをもって来る秀逸な作品でした。「はしらげの立つ村」は四国山間部のとある集落のなれはてを描いた作品。読み手が村怪談に期待する陰惨さ、都会の現代社会とは隔絶された或る種の異世界感がふんだんに詰まっており、満足度の高い作品でした。「村の集会所」は「はしらげの立つ村」とは対照的に、非常に現代的な、都会と地続きの世界観の中で起きる田舎の怪。日常生活の中で目撃された怪をリアリティをもって描かれていたと思います。その他、最終選考でも、当コンテストでは常連実力派の「初詣と黒靄女」卯ちり、「蹄の音」影絵草子にまじり、「昨日までの家」ササキアンヨ、「村のレトロバス」山本れえこなど、新しい方の健闘が頼もしい回でした。
 犬鳴部門でも、村部門をしのぐ応募数で面白い作品が寄せられ、果的に全20作を1/21発売の文庫「実話怪談 犬鳴村」に収録させていだくことになりました(※受賞者の方には後日12/7頃、詳細をご連絡させていただきます)。封鎖される前の旧犬鳴トンネルの話から、村人の存在を感じさせる怪談まで、あのエリア一帯の何とも形容しがたい忌まわしさを改めて感じさせていただきました。興味深い話ぞろいですので、ぜひ怪談マニアの皆さまには文庫で読んでいただければと思います。
 さて、来月のお題は、「鬼」に纏わる怖い話。今年は「鬼滅の刃」が大人気でしたが、鬼と言えばそもそも「怪談」の領域。人外、異形としての目撃談から、人の心に巣食う鬼まで幅広い鬼怪談を募集いたします。実は鬼がテーマになるのはマンスリーコンテストでは1年10か月ぶり2回目です。前回以上の作品が集まることを期待しております。そして、気になる特別賞ですが、今回もございます。3月発売予定の文庫「実話奇譚 鬼怪談」(仮題)に優秀作品の収録をいたします(印税あり)。文庫デビューのチャンス、ふるってご応募ください!

☆特別賞「実話怪談 犬鳴村」収録決定作品(犬鳴部門)
「一緒に来てほしい」日高屋四郎
「亥の子石」梨
「奇妙なライダー」鬼志仁
「福岡トンネル」緒音 百
「噂」緒音 百
「そこにいたもの」おがぴー
「まっくろ」高倉樹
「犬鳴の住人」月の砂漠
「嫌な音」月の砂漠
「先客」月の砂漠
「地図アプリ」菊池菊千代
「祟られ」坂本光陽
「犬鳴トンネルの写真」坂本光陽
「水」ムーンハイツ
「何が見える?」天堂朱雀
「先が見たい」天堂朱雀
「「目的地」の女」キンブルヤスオ
「トンネルにて」アスカ
「遠吠え」アスカ
「ラジオチャンネル」雨水秀水

★最終選考通過作品(村部門)
「とがけ」ふうらい牡丹
「噂の廃村」音隣宗二
「初詣と黒靄女」卯ちり
「村の集会所」綿帽子
「はしらげの立つ村」丸太町 小川
「蹄の音」影絵草子
「昨日までの家」ササキアンヨ
「村のレトロバス」山本れえこ
「共同井戸」ミケとーちゃん

★二次選考通過作品(村部門)
「笠の下」綿帽子
「奇妙な明かり」鬼志 仁
「とがけ」ふうらい牡丹
「桑の実」ふうらい牡丹
「噂の廃村」音隣宗二
「初詣と黒靄女」卯ちり
「深夜徘徊」菊池菊千代
「やさしいなまはげ」月の砂漠
「村の集会所」綿帽子
「はしらげの立つ村」丸太町 小川
「尾根の共同アンテナ」ミケとーちゃん
「忌み数」おがぴー
「首から上の何かで死ぬ」大道寺アウンザヤ
「繰り返すお辞儀」ふふふ
「蹄の音」影絵草子
「贄の務め」櫻井 文規
「神様の宿」影絵草子
「昨日までの家」ササキアンヨ
「村のレトロバス」山本れえこ
「共同井戸」ミケとーちゃん
「案山子」アスカ

(※順不同)

現在募集中のコンテスト

【第40回・募集概要】
お題:「憑く」。「憑き物」に纏わる怖い話

原稿 1,000字以内の、未発表の実話怪談。
締切 2021年10月25日24時
結果発表 2021年10月31日
最恐賞 1名
Amazonギフト3000円&文庫化チャンス
佳作 3名
お好きな怪談文庫新刊3冊
応募方法 下記「応募フォーム」またはメールにて受け付けます。
フォーム内の項目「メールアドレス」「ペンネーム」「本名」「作品タイトル」 を記入の上、「作品本文(1,000字以内)」にて原稿ご応募ください。 応募フォーム
メールの場合は、件名に【怪談最恐戦マンスリーコンテスト10月応募作品】と入力。 本文に、「タイトル」「ペンネーム」「本名」「メールアドレス」を記入の上、原稿を直接貼り付けてご応募ください。 kowabana@takeshobo.co.jp