マンスリーコンテスト 2021年11月結果発表

怪談マンスリーコンテスト

ー 怪談最恐戦投稿部門 ー

2021年11月結果発表

最恐賞
「母からの電話」月の砂漠
佳作
「追憶の彼岸花」あんのくるみ
「花丸峠の廃道」おがぴー
「輿行列」鬼志 仁
「母からの電話」月の砂漠

愛知県のK市に「C」という廃墟がある。
「15年ほど前には、もう心霊スポットみたいになってましたね」
石川さんはそう振り返る。その頃、石川さんは大学生で、K市に住んでいた。

卒業式を終え、就職先の東京へ引っ越す日を待っていたある日のこと。石川さんは、ゼミの同級生だった天野と柴山から「Cを見学に行こう」と誘われ、退屈しのぎにそれに応じた。
その日の夜。柴山とは合流したが、天野がなかなか来ない。
「そしたら、天野からメールが来て。急なバイトが入って行けなくなったと」
仕方なく、柴山と二人でCに入った。
「柴山は天野と仲良しで、僕はあまり接点がなかったんですよね」
特に会話が弾むでもなく、やや白けた気分で廃墟内を歩いていた。すると、がれきが散乱する部屋で一台の黒電話を見つけた。
「当時、Cにまつわる怪談話の一つに、黒電話の話があったんですよ」
廃墟内の黒電話に、霊界から電話が掛かって来て、それに出た者はあちらに連れて行かれる……という噂だった。
「だから、目の前の黒電話がリーンって鳴った時は、さすがにドキっとしました」
だが、鳴ったのは黒電話ではなかった。柴山がポケットから自分の携帯を取り出したのだ。
「柴山は着信画面を見て、笑いながら『母ちゃんからだぁ』と言いました。正直、ホッとしましたよ」
柴山は嬉しそうな顔で短く会話を交わし、電話を切ったという。
「その後すぐにCを出て、柴山と別れました」

二日後、石川さんは東京へ引っ越した。新生活は何かと忙しく、天野や柴山と連絡を取ることもなかった。
その年のお盆休み。帰省した石川さんは久々に天野と再会し、酒を飲んだ。その席で、天野がさみしそうにこぼした。
「卒業後、柴山と連絡が取れないって言うんです。親友だと思ってたのにって」
柴山の話題が出たので、石川さんはあの日のCでの電話の件を思い出し、笑い話として天野に話した。だが、話を聞いた天野は顔色を変えた。
「天野が言うんです。そんなはずはないって。
柴山のお母さんは、柴山が中学生の時に病気で死んでるって。だから、お母さんから電話が来るはずないって」

石川さんは、今でもよくわからないんです、と首を傾げながら言う。
「柴山はあの時、一体誰と電話していたんでしょうか。あんなに嬉しそうな顔で……」
石川さんは試しに柴山に電話してみたが、この番号は現在使われていませんというメッセージが流れて来ただけだったという。

総評コメント

 11月のお題は「愛知県」。政令指定都市の名古屋市のほか、世界的な自動車企業のある市の怪談が比較的多く集まりました。尾張地方、三河地方と愛知県は史跡が多く、戦国の歴史絡みの怪談も際立ちました。
 最恐賞は「母からの電話」月の砂漠。心霊スポットマニアならイニシャルでもすぐにピンとくる場所でしょう。心霊スポットの怪談は似たような話になることも多く、怪談ファンの中では敬遠される方も多いですが、本作は電話に出るシーンなど感情的な描写と、不可解かつ不気味なラストが印象に残り受賞となりました。
 佳作は、「追憶の彼岸花」あんのくるみ、「花丸峠の廃道」おがぴー、「輿行列」鬼志仁の3選。「追憶の彼岸花」は半田市の矢勝川堤で体験した怪異譚。恐怖心そのものより怪異の繊細な描写が際立つ内容で、エモ怖な一話。「花丸峠の廃道」は豊橋の山の古道での体験談。ある石碑に手を合わせたことから始まる怪異現象(怪異症状)が珍しく、斬新でした。
「輿行列」は桶狭間の古戦場に纏わる今川義元絡みの歴史怪異譚。怪異との遭遇から現実に傷を負うようなあちら側(霊)の力の強さを思い知らされる体験談は根深い怨霊、祟りの恐ろしさを感じさせてくれました。
 今回は、愛知県にお住まいの方や所縁のある方のみならず、積極的に知り合いを探し出し、取材をしてきたという頼もしい方の参加も多く嬉しく思いました。一方、地元の方から寄せられた作品は方言が自然に取り入れられ、ご当地感の強い作品に仕上がっていたのはさすがでした。
 ご当地怪談としての「愛知県」をテーマとさせていただきましたので、愛知県内で起きた怪談であるけれども、土地絡みというよりはその人そのものに怪異の原因があると思われるものは少し厳しめに判断いたしました。やはりご当地怪談は県内の土地や建物にいわくがあるものが皆さんがもっとも読みたい、期待するところであると思います。今後も、特定の都道府県のご当地怪談をテーマとさせていただく時があると思いますので、そういった認識で蒐集していただけましたら幸いです。

〈その他最終候補作品〉※最恐賞、佳作以外
「列車は来ない」高倉樹
「鶴舞公園の桜」春日線香
「人魚の祟り」坂本光陽
「犬を飼ってはいけない」坂本光陽
「真っ赤な泥」月の砂漠
「二度目の旧トンネル」ムーンハイツ
「カラスのお祭り」蛙坂須美
「↓↑」蛙坂須美
「探しています」墓場少年
「蚊柱」春日線香
「光り輝く愛知県」鞍馬アリス
「たい焼き屋」影絵草子

次回12月の応募は本日よりスタート!今回のお題は「年末年始」。
クリスマス、大晦日、お正月と行事盛りだくさんの年末年始。各地の風習から恋人、家族と人との繋がりも増えるこの季節の怖い話、不思議な話をお待ちしております。
ふるってご応募くださいませ!

現在募集中のコンテスト

【第50回・募集概要】
お題:「通勤通学」に纏わる怖い話(怪奇・心霊限定)

原稿 1,000字以内の、未発表の実話怪談。
締切 2022年08月25日24時
結果発表 2022年08月31日
最恐賞 1名
Amazonギフト3000円&文庫化チャンス
佳作 3名
お好きな怪談文庫新刊3冊
応募方法 下記「応募フォーム」またはメールにて受け付けます。
フォーム内の項目「メールアドレス」「ペンネーム」「本名」「作品タイトル」 を記入の上、「作品本文(1,000字以内)」にて原稿ご応募ください。 応募フォーム
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