マンスリーコンテスト 2022年3月結果発表

★4月30日公開予定の4月結果発表は、翌5月1日に延期させていただきます。
お待たせして申し訳ございません、ご了承くださいませ。

怪談マンスリーコンテスト

ー 怪談最恐戦投稿部門 ー

2022年3月結果発表

最恐賞
「ふた駅4分の間に」鳥谷綾斗
佳作
「分岐器」高倉樹
「ホームの縁」安田鏡児
「訪問者」クダマツ ヒロシ

最恐賞「ふた駅4分の間に」鳥谷綾斗

大阪に住むYさんから聞いた話だ。
Yさんは二〇〇〇年頃に大学を卒業した。卒業式が終わった三月末、学内のカフェテリアによく集まる仲間たち(サークルと言うほどではないそうだ)十数人と焼肉会を行なった。
場所は、阪急路線の十三駅付近にある焼肉屋。飲んで食べて思い出話や就職の話に花を咲かせて、午後九時頃に店を出たと言う。
解散を惜しんだYさんたちは梅田駅まで歩くことにした。電車では四分ほどだが、徒歩だと十三大橋を渡って三十分ほどかかるらしい。
「今思うと青春やなぁ。こんなんするのも最後かって寂しなりました」
十三駅の東改札口前でいざ出発という時、Yさんたちの前にSくんという男子が現れた。
「S、焼肉会を欠席してたんですよ。仲間内でSだけ内定が決まらんくて、その日も就活と被った言ってました」
Yさんが「おまえ遅っそいわ」と言うと、Sくんは、
――A子ちゃんに話があって……
と返したそうだ。A子さんは一学年下の、可愛い感じの後輩だと言う。
SくんはA子さんに「梅田まで一緒に行かないか」と誘った。Yさんは、別の友達に訳知り顔でつつかれ、すぐに得心した。
「SはずっとA子ちゃんに片想いしてたみたいで。卒業したらもう会われへんようになるから、告白するんやなって思いました」
A子さんは戸惑ったがすぐに承諾し、Sくんと二人で改札口に消えた。
Yさんたちも出発し、ぞろぞろと十三大橋を渡った。その途中、梅田駅に向かう電車の中にSくんとA子さんらしき人影を見たような気がして、「S、頑張れよ」と心の中でエールを送ったと言う。
卒業から半年後、Yさんは大学の友人と久々に会った。そしてとんでもないことを聞かされた。
「S、自殺してたんです。焼肉会の日の朝に」
遺書はなかったが、Sくんの両親によると、彼は就活でひどく悩んでいたとのことだ。
「そんなら俺たちが会ったSは何やったんや……って考えてたら、A子ちゃんがいつの間にか大学を辞めてたことを聞かされました」
さらに噂によると、A子さんは行方不明らしい。Yさんには電話番号やメアドを交換するほどの仲の後輩はいなかったので、詳しいことは分からなかったそうだ。
「A子ちゃん、Sと電車に乗ってどこに行ったんやろ……」
十三駅から梅田駅までのおよそ四分の間に、彼女はどうなったのか。Yさんは暗い面持ちで言った。

総評コメント

次回お題は、「島」に纏わる怖い話です!
引き続き、出来るかぎり場所の具体性をお願いしたいと思います。
皆様の力作、お待ちしております。

★その他優秀作品 ※順不同
「憑かれる踏切」真崎 駿
「地下鉄御堂筋線」キアヌ·リョージ
「臭電」蛙坂須美
「呼ぶカタチ」雨森れに
「運転席の思い出」おがぴー
「鉄道模型」アスカ
「白人少女」藤井博之
「特等席」夕暮怪雨
「ぬるっ。」いまいまり
「樺太の馬鉄跡」柾士
「サガシモノ」東國都
「西から東へ」スペースMegす
「幻のSL」影絵草子
「川底、国鉄有馬線」高倉樹
「泣き声」ふうらい牡丹
「デッドセクション」栗入夢創蛇
「東京メトロ日比谷線の老婆」坂本光陽

現在募集中のコンテスト

【第70回・募集概要】
お題:草木に纏わる実話怪談

締切 2024年04月30日24時
結果発表 2024年05月15日
最恐賞 1名
Amazonギフト3000円&文庫収録のチャンス
優秀賞 3名
竹書房怪談文庫新刊3冊セット
応募方法 下記「応募フォーム」にて受け付けます。
フォーム内の項目「件名(作品タイトル)」「投稿内容(本文1,000字以内)」「メールアドレス」「本名」「ペンネーム」をご記入の上ご応募ください。 応募フォーム

お問い合わせ kowabana@takeshobo.co.jp