マンスリーコンテスト 2021年1月結果発表

怪談マンスリーコンテスト

ー 怪談最恐戦投稿部門 ー

2021年1月結果発表

最恐賞
録られた人緒音 百
佳作
「アマリリスと祖母」雨森れに
「テレビに映るおっさん」Mari
「言葉の続き」天堂朱雀

「録られた人」緒音 百

 木山渉さん(仮名)から聞いた話。
 木山さんがフリーターをしていた頃、実家の物置で古いカセットテープを見つけた。何が録音されているのか気になったが、ラジカセはとうの昔に売ってしまっている。
 バイト先でその話をしていると「中古でよければ譲るよ」と先輩が言ってくれた。

 それは丸みを帯びた、銀色のラジカセだった。
 貰った日にさっそく家でラジカセの電源を入れてみた。中にはテープが入ったままだ。先輩の私物だろう。木山さんはそれを取り出して代わりに自分のテープをセットした。
 再生ボタンを押すと、幼い自分の声が流れた。そうだ。ラジオのパーソナリティに憧れて友達とラジオ番組ごっこをしたのだ。懐かしいな。木山さんは思い出に浸りながら録音を聞き終わった。

 先輩のテープには、何が録音されているのだろうか。

 木山さんは試しに再生してみることにした。キュルキュルとテープが動き、雑音が入る。しばらくして「こんにちは」と知らない男性の声がした。くぐもって聞き取りづらいが、明るい声だ。

「これから皆さんに霊との交信をお届けいたします」と彼は言った。観客がいるのか拍手が聞こえた。

「イエスなら1回、ノーなら2回、ノックをしてお答えください」

 すぐにコンと机を叩くような音がして、観客の感嘆の声がした。
 心霊番組の真似事か。皆似たような遊びをやってたんだなと木山さんは苦笑した。

「あなたはキヤマワタルさんですか」

 木山さんは笑いを引っ込めた。
 ノックが鳴る。

 コン。

「あなたはお亡くなりになりました。ご存知ですか」

 コン。

 嫌な鳥肌が立った。
 それからも淡々と質問が続いた。

 最後に、男が言った。

「キヤマさんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。それでは、お帰りください」

 コンコン! コンコン! コンコン! ……。

 ……唐突に、テープは終わった。
 気がつくと体中にべっとりと汗をかいていた。
 何だったんだ。今のは。

 翌日、木山さんは先輩にラジカセを突き返した。悪戯にしてもひどいと怒ると、先輩は心当たりがないと言う。驚いてその場でテープを再生したのだが、テープは空っぽで、早送りしても、巻き戻しても、A面にもB面にも、どこにもあの音声は残っていなかった。

 結局、テープの真相は謎のままだ。

「気味が悪い話ですよね」と木山さんは力無く笑った。

 今でもノックをするたびに、自分が誰かに呼び出されているような妙な心地になるという。

総評コメント

1月の題は「家電に纏わる怖い話」。いわば「家電怪談」です。
テレビ、冷蔵庫、洗濯機といった大型家電から、ドライヤー、電気シェーバーといった小さなものまで多種多様に集まりました。
やはり中古家電、譲り受けたものに異変が起こるケースが最多で、リサイクルショップの闇が窺える恐ろしい話がある一方、故人が生前愛用していたものに魂が宿る、時に家族を救ってくれるような優しい怪談も寄せられました。
最恐賞は「録られた人」緒音百。懐かしのテープレコーダーに纏わる怪談で、思いもよらぬ展開の妙、体験者が固唾をのんで聞き入る緊張感に読者をうまく巻き込めていたと思います。
佳作は、「言葉の続き」 天堂朱雀、「テレビに映るおっさん」 Mari、「アマリリスと祖母」 雨森れにの3作を選出。「言葉の続き」はドライヤーに纏わる怪談。聞き書きスタイルではなく、体験者の一人称仕立てで書かれた作品ですが、後を引くラストが印象的でした。
「テレビに映るおっさん」はご家族の実体験を聞き書きされたとのこと、薄ぼんやりとした不気味さにリアリティを感じました。「アマリリスと祖母」は炊飯器にまつわる怖い話。幼少期の記憶を大人になって改めて思い起こすと妙なことを発見したという経験は意外とあるかもしれませんが、今作は一見すると懐かしさや温かみを感じさせる風景の中に底冷えのする悪意が忍んでいる点が大変不気味でした。
今回は怪として興味深い内容の作品が多く、家電怪談で1冊本を作れるのではないかと思うほど良作が多く、選考にも悩みました。家の中に常にあり、生活になくてはならないもの。それなりに値段もし、おいそれと買い替えることもできないもの。そういった意味で家電、とくに大型家電の怪は逃げ場のない恐ろしさがあります。また音楽プレーヤーは言わずもがな、稼働音がするものが多く、それらから「ありえない音や声」がするという現象がこれだけ多く起きているのだということに驚きました。
そこで、稼働音、動作音です。掃除機の吸い込む音、扇風機の回る音、ドライヤーの風音、色々な音がありますが、そこでリアルかつオリジナリティの高い音の表現をされていると、おっ!となります。オノマトペは感性なので大変難しいですが、小さなこだわりをもって表現を追究していただけると作品の雰囲気がぐっとよくなると思います。
また季節家電の話で気になったのは、お話の季節感と家電が合致していないパターン。冬に除湿器であったり、その反対に夏を思わせる描写がありながら加湿器であったり、炬燵が出てくる話なのにTシャツ短パン姿であったりといったことです。例外も勿論あるかと思いますが、違和感や矛盾があると素直に実話怪談と受け止めづらくなりますので、注意してみてください。
さて、竹書房怪談文庫では2月の新刊発売に合わせ、ご当地怪談フェアを実施予定です。それにあわせ、次回のお題は「我が都道府県の怖い話」といたします。現在お住まいの都道府県、出身地、以前住んでいた土地でも構いません。必ず都道府県名がわかるようにご投稿お願い申し上げます。怪談文庫ではご当地怪談で全国制覇を目指すべく、各都道府県の怪談の書き手を募集しています。今後のご当地文庫で執筆依頼させていただく可能性大ですので、ふるってご参加くださいませ! 楽しみにお待ちしております。
来月の結果発表も弊社公式のYouTube怪談朗読チャンネル「井戸端怪談」にて行います。佳作作品から順にカウントダウン形式で作品を朗読してまいりますのでこちらもどうぞお楽しみに!

⭐竹書房公式YouTube怪談朗読チャンネル「井戸端怪談」
こちらのチャンネル登録もぜひよろしくお願いいたします!

⭐最終選考通過作品
「夕焼けホットミルク」深井眠
「布婆」影絵草子
「またおいで」芳春
「ドライヤーの音」ぺぺいけ
「あかんやつ」 丸太町 小川
「マッサージチェア」 アスカ
「テレビに映るおっさん」Mari
「録られた人」 緒音 百
「扇風機は囁く」 舘松 妙
「言葉の続き」 天堂 朱雀
「結婚指輪」 ふうらい牡丹
「アマリリスと祖母」 雨森れに
「「ファ」の音」 卯ちり
「毛布の下のシルエット。」音隣宗二
「空っぽを温める」 高倉樹

⭐二次選考通過作品
「夕焼けホットミルク」深井眠
「冷蔵庫で幽霊を凍らせる話」影絵草子
「布婆」影絵草子
「電動シェーバー」アスカ
「またおいで」芳春
「ドライヤーの音」ぺぺいけ
「あかんやつ」 丸太町 小川
「マッサージチェア」 アスカ
「テレビに映るおっさん」Mari
「祖母の扇風機」 月の砂漠
「録られた人」 緒音 百
「ザッピングとパンプスとA君」 丸太町 小川
「扇風機は囁く」 舘松 妙
「扉」 Black555
「これだから本当にあなたは」 菊池菊千代
「言葉の続き」 天堂 朱雀
「結婚指輪」 ふうらい牡丹
「アマリリスと祖母」 雨森れに
「「ファ」の音」 卯ちり
「演奏記録」 カッコウ
「毛布の下のシルエット。」音隣宗二
「空っぽを温める」 高倉樹
「紫の悪夢」 綿帽子
「お節介部屋」卯ちり
(※投稿日順)

現在募集中のコンテスト

【第40回・募集概要】
お題:「憑く」。「憑き物」に纏わる怖い話

原稿 1,000字以内の、未発表の実話怪談。
締切 2021年10月25日24時
結果発表 2021年10月31日
最恐賞 1名
Amazonギフト3000円&文庫化チャンス
佳作 3名
お好きな怪談文庫新刊3冊
応募方法 下記「応募フォーム」またはメールにて受け付けます。
フォーム内の項目「メールアドレス」「ペンネーム」「本名」「作品タイトル」 を記入の上、「作品本文(1,000字以内)」にて原稿ご応募ください。 応募フォーム
メールの場合は、件名に【怪談最恐戦マンスリーコンテスト10月応募作品】と入力。 本文に、「タイトル」「ペンネーム」「本名」「メールアドレス」を記入の上、原稿を直接貼り付けてご応募ください。 kowabana@takeshobo.co.jp