マンスリーコンテスト 2022年5月結果発表

★6月30日に予定しておりました6月回の結果発表は編集部都合により7月1日午前に行います。お待たせして申し訳ございません、いましばらくおまちください。

 

マンスリーコンテスト

ー 怪談最恐戦投稿部門 ー

2022年5月結果発表

最恐賞
「孫の手」鬼志仁
佳作
「借家」おまつ
「幻」山賀忠行
「自転車」竹中望

最恐賞「孫の手」鬼志仁

高校の同級生のマユミから聞いた話。
マユミには4歳年下のスグルという弟がいた。
「うちの父方の家系は男が少なくてね、スグルは父の方の祖父にずいぶん可愛がられたのよ」
当然のように、孫のスグルはおじいちゃんが大好きになり、盆正月に帰省する時には、必ずお土産を持って行った。
ある日、マユミたち親子は東北地方に旅行に行き、古民家宿に泊まった。
「弟がね、神棚の真下にぶら下げてあった孫の手を気に入ってしまって、『じいちゃんにあげるんだい!』と言って放さなかったの」
それは売り物ではなかった。父親が宿の主に交渉したが、主は売るのを渋った。
「有名な職人が作った高価な一品というわけじゃないの。こっちは言い値で買うと言っているのに渋るわけ。変なオヤジだなと、あの時は思ったんだけど」
結局、主は根負けして、『大事に使う』ことを条件に、ただで譲ってくれたという。
「弟は、次の帰省を待ちきれずに、母に頼んで宅配便で祖父にその孫の手を送ったの。じいちゃん、ずいぶん喜んでた」
毎日使っていると、祖母から電話で連絡があり、マユミの両親もよいことをしたと思っていた。
だが、それから数週間後、スグルが交通事故で急死した。
祖父は1か月近く寝込んでしまい、そのまま逝ってしまうのではないかと、マユミたちは心配した。
「でも、あの孫の手を使い出して、『スグルが戻って来た』と言って急に元気になったの」
祖父が言うには、あの孫の手で背中を掻いていると、別の場所も掻かれている感じがするというのだ。
「それがスグルの手だって言うのよ」
心配したマユミの父親が医者に尋ねると、放散痛の一種ではないかとのこと。放散痛とは、例えば胃が悪いのに肩が痛くなるという症状。
「結局、祖父が元気になっているんだから、黙って様子を見ようってことになったの」
ある日、マユミは偶然、祖父からの電話に出た。
「今日、スグルが現れたら、手鏡で姿を見てやるって言うのよ。私は直感で、『止めた方がいいよ』って言ったんだけど」
翌日、祖父の訃報が届いた。死因ははっきりせず、心不全とされた
「裏庭の焚火に、孫の手の燃え残りがあったって。手の部分が残っていたらしいの。じいちゃんが燃やしたらしいんだけど」
父親があの古民家宿の主に、祖父の死と孫の手が燃やされたことを電話で話したら、お悔やみどころか、「大事に使ってくださいと言ったはずです」と言われたという。
その古民家宿は、もうないらしい。

総評コメント

今月は久しぶりにオープンなテーマだったこともあり、沢山のご応募をいただき選考に時間がかかりました。発表が遅くなりましたことをお詫び申し上げます。応募数に比例してよい作品も多かったため、選考の結果を一次より掲載させていただきます。
最恐賞は、曰くありげな孫の手を強引に譲ってもらった所から始まる不幸と怪異「孫の手」鬼志仁。字数千字を使い切り読み応えのある怪談に仕上がっていました。怪の原因、正体に関して想像の余地(或いは解決されぬ謎)を不完全燃焼にならずに残している点を評価いたしました。実話怪談である以上、謎のすべてが解明されないことはいわば当然であり、それを気持ちよく読者に受け入れさせることはなかなかに難しい問題です。そこに書き手のうまさが求められると思います。
佳作1作目は「借家」おまつ。先輩の家(実は空き家なのですが)で見知らぬ子供と過ごす時間を淡々と描いた怪談ですが、文体から醸されるゆるりとした雰囲気が体験者の感じていた時間の流れを彷彿とさせ、奇妙なリアル感を生んでいたと思います。2作目は「幻」山賀忠行。意外性のあるオチがきっちりとついている怪談でともすれば創作的とも思われがちですが、細部のリアリティが効いているため実話怪談として成り立っていたと思います。読ませる怪談、引き込まれる怪談でした。最後の1作は「自転車」竹中望。非常にシンプルな怪談で、トリッキーな展開は一切ありませんが、怪異の瞬間をとらえた素直な描写が秀逸でした。もっとも情景が目に浮かんだ、空気感の伝わる作品として評価いたしました。
今回は、子供がテーマということで、座敷童の話、子供時代のこっくりさんのお話がとても多かったです。子供もメインで登場するけれども、別のテーマの作品(例えば、虫に纏わる話や、事故物件に纏わる話など)にカテゴライズされる方がしっくりくる印象のお話も多かったので、最終的には子供色の強いものが選考に残っていたように思います。
次回は「雨」という抽象的なお題を用意いたしました。主役というよりは脇役、背景的なお題ではありますが、雨の匂いが漂う怪談をお待ちしております。

★一次選考通過 ※順不同
「私を捨てる旅」影絵草子
「金魚鉢」影絵草子
「子どもの遊び」権俵権助
「天女の羽衣」影絵草子
「短刀と分けた魂」かおる
「借家」おまつ
「白い顔」雪鳴月彦
「忘れもの」クダマツヒロシ
「幻」山賀忠行
「万引きをする子」墓場少年
「五号棟の張り紙」クダマツヒロシ
「水子の怒り」雨水秀水
「自転車」竹中望
「凧揚げ」舘松妙
「タケル」アスカ
「悲しい足音」宮ノ下龍司
「何処へ」山賀忠行
「バラバラ」おがぴー
「わらす河原」月の砂漠
「オショボ」月の砂漠
「自動販売機の下」天堂朱雀
「ポール」吉乃繰々縷
「アニメソング」夕暮怪雨
「黒い鯉のぼり」夕暮怪雨
「沢の子」安田鏡児
「七つ」飛幡一聖
「戦争じゃんけん」緒音百
「高鬼」ふうらい牡丹
「しまい」雨森れに
「記憶に残る」青葉入鹿
「映画の待ち時間」都平暢
「同じ夢」キアヌ・リョージ
「望まれた子供」小糸(天神山)
「孫の手」鬼志仁
「もういいよ」soo

★二次選考通過 ※順不同
「金魚鉢」影絵草子
「短刀と分けた魂」かおる
「借家」おまつ
「幻」山賀忠行
「万引きをする子」墓場少年
「五号棟の張り紙」クダマツヒロシ
「自転車」竹中望
「タケル」アスカ
「何処へ」山賀忠行
「わらす河原」月の砂漠
「黒い鯉のぼり」夕暮怪雨
「高鬼」ふうらい牡丹
「しまい」雨森れに
「記憶に残る」青葉入鹿
「映画の待ち時間」都平暢
「孫の手」鬼志仁

★最終選考
「金魚鉢」影絵草子
「借家」おまつ
「幻」山賀忠行
「五号棟の張り紙」クダマツヒロシ
「自転車」竹中望
「タケル」アスカ
「わらす河原」月の砂漠
「黒い鯉のぼり」夕暮怪雨
「高鬼」ふうらい牡丹
「孫の手」鬼志仁
次回6月は梅雨ということで、雨に纏わる怖い話。
皆様の力作、お待ちしております。

現在募集中のコンテスト

【第50回・募集概要】
お題:「通勤通学」に纏わる怖い話(怪奇・心霊限定)

原稿 1,000字以内の、未発表の実話怪談。
締切 2022年08月25日24時
結果発表 2022年08月31日
最恐賞 1名
Amazonギフト3000円&文庫化チャンス
佳作 3名
お好きな怪談文庫新刊3冊
応募方法 下記「応募フォーム」またはメールにて受け付けます。
フォーム内の項目「メールアドレス」「ペンネーム」「本名」「作品タイトル」 を記入の上、「作品本文(1,000字以内)」にて原稿ご応募ください。 応募フォーム
メールの場合は、件名に【怪談最恐戦マンスリーコンテスト8月応募作品】と入力。 本文に、「タイトル」「ペンネーム」「本名」「メールアドレス」を記入の上、原稿を直接貼り付けてご応募ください。 kowabana@takeshobo.co.jp