マンスリーコンテスト 2021年3月結果発表

怪談マンスリーコンテスト

ー 怪談最恐戦投稿部門 ー

2021年3月結果発表

最恐賞
かくれんぼ芳春
佳作
「もう遅い」天堂朱雀
「団地間6畳」雨森れに
「山の住宅」青葉入鹿
優秀作
「留年部屋」高倉樹
「聖域」影絵草子
「4年以内のジンクス」雪鳴月彦
「鐘の音」綿帽子
「枯れる家」あんのくるみ
「それでも、なにごともなく」青葉入鹿
「正体不明」芳春
「ぐちゃぐちゃ」芳春
「寝室のはず」中野前後

「かくれんぼ」芳春

Nさんが小学校4年生の時、O君という転校生が来た。
朗らかな彼はすぐにクラスに打ち解けた。
ある日、友達数人でO君の家に遊びに行くことになった。
O君の家は平屋建ての古い借家だった。玄関から長い廊下が続き、左右にそれぞれ二間続きの和室、突当たりに台所と風呂場がある4K。
誰かが「かくれんぼしよう」と言い出した。
じゃんけんの結果、最初の鬼はNさんに決まった。

「もーいーかーい?」
「もーいーよー」

押入の中。縁側の窓のカーテンの裏。
Nさんは次々と友達を見つけていく。
――あれ?
Nさんは違和感を覚えた。
残るは一人。一人のはずだが、何だかもう一人いるような妙な感覚。困惑しつつ、Nさんは最後に残ったO君を探し始めた。
台所の方で物音がしたので行ってみると、台所と廊下を隔てる引戸が閉まるところだった。

「みーつけた!」

Nさんは勢いよく引戸を開けた。
血塗れの痩せた子供が立っていた。坊主頭で下着姿。皮膚のあちこちが抉れて、赤黒い血が吹き出している。
それが、薄っすら笑みを浮かべて呟いた。

「みつかったぁ」
「ぎゃあああ!」

Nさんは絶叫した。腰が抜けそうになりながらも、友達がいる和室まで逃げた。O君も出てきた。玄関の靴箱の横に隠れていたらしい。
Nさんは泣きながら不気味な子供のことを話した。
皆で台所を確かめたが、あの子供の姿はない。嘘だ霊だと暫く騒いでいたが、一人が目を見開いて口元に指を当てた。全員が黙った。
足音がする。板張の廊下を裸足で歩いてくる音だ。
一斉に振り返る。誰もいない。

「うわあああ!」

一同はパニックになり、逃げるように帰ろうとした。

「嫌だよ怖えよ、もうすぐ母ちゃん帰ってくるからそれまで一緒にいてよ」

怯えたO君が必死に縋る。
Nさん達は外に出てO君の母親を待った。
程なく帰宅した母親は、子供達の訴えを一笑に付した。
だがNさんの祖母は違った。帰ってきたNさんから話を聞くなり、大量の塩を振りかけてきた。
何を聞いても、祖母は沈黙を貫いた。
それから間もなく、O君がおかしくなった。
別人のように塞ぎ込み、時々ひどい癇癪を起こして暴れる。
学校を休みがちになり、学年が変わる頃に再び転校していった。
Nさんは大分経ってから件の貸家で昔、親子の無理心中があったことを知った。9歳の男の子が、心を病んだ母親に包丁で滅多刺しにされたらしい。

「まだ賃貸で出てますよ、その平屋」

Nさんは顔を顰めて言った。
神奈川の県央にある物件だという。

総評コメント

3月の総評は後日、更新予定です。いましばらくお待ちくださいませ。
最恐賞、佳作、優秀作は、5月発売の単行本に収録されます。後日、個別にご連絡差し上げますのでよろしくお願いいたします。おめでとうございました!
前回、追加募集をいたしましたご当地怪談ですが、四国、東京ほか作品投稿いただいております。ありがとうございます!
現在、順次検討させていただいておりますので、個別のお返事はもう少々お待ちいただけましたら幸いです。
次回募集テーマは「呪い・呪術」。怪談の王道テーマ、「祟り」と双璧をなす「呪い」が4月のお題です。巷では『呪術廻戦』が大人気ですが、底冷えのする実話の呪術譚、呪いの恐怖、お待ちしております。
ご自身の体験でも、人から聞いた話でも構いません。ルールはひとつ、実話であるということ。
発表は4月30日のYouTube「井戸端怪談」内にて、作品朗読をもって発表させていただきます。こちらのチャンネル登録もぜひよろしくお願い申し上げます。

◎YouTube「井戸端怪談」➡チャンネル登録

現在募集中のコンテスト

【第70回・募集概要】
お題:草木に纏わる実話怪談

締切 2024年04月30日24時
結果発表 2024年05月15日
最恐賞 1名
Amazonギフト3000円&文庫収録のチャンス
優秀賞 3名
竹書房怪談文庫新刊3冊セット
応募方法 下記「応募フォーム」にて受け付けます。
フォーム内の項目「件名(作品タイトル)」「投稿内容(本文1,000字以内)」「メールアドレス」「本名」「ペンネーム」をご記入の上ご応募ください。 応募フォーム

お問い合わせ kowabana@takeshobo.co.jp