マンスリーコンテスト 2022年4月結果発表

怪談マンスリーコンテスト

ー 怪談最恐戦投稿部門 ー

2022年4月結果発表

最恐賞
「パーントゥの泥」月の砂漠
佳作
「二十五日様」筆者(Fudemono)
「北斎の浮世絵」影絵草子
「海上バス」夕暮怪雨

最恐賞「パーントゥの泥」月の砂漠

 沖縄県の宮古島の一部地域では、パーントゥ祭と呼ばれる奇祭が今でも行われている。
 来訪神であるパーントゥが集落を回り、厄落としをしていくという伝統行事だ。
「僕が大学生の時、後輩だったKが、この祭りを見に行ったんですよ」
 東京在住の会社員であるTさんはそう語り出した。Tさんは四十代だから、二十年ほど昔の話になる。
「そこでKは、パーントゥとトラブルになってしまったようでして」

 パーントゥ祭でパーントゥを演じるのは、島の保存会の人間だ。彼らは土偶の顔に似た仮面をかぶり、つる草を体に巻き付け、全身に泥を塗りたくった姿で町を歩くという。
「パーントゥは地元の住人であれ、観光客であれ、すれ違った者には誰彼かまわず、泥をなすりつけるんだそうです」
 この泥は匂いが強く、一度つくとなかなか取れないらしい。それでも、泥をつけられることで厄落としになるから、ほとんどの人は喜んで泥を受けるという。
「でも、Kはそうではなかったようで。しかも、Kには気の荒いところがあって」
 パーントゥが泥をつけようとした際、Kさんは本気で怒り、パーントゥを蹴り飛ばしてしまったのだ。
「周りの人たちが仲裁に入って、大事にはならずに済んだそうですけどね」
 Kさんは帰京後、そのトラブルをまるで武勇伝のようにTさんたちに語って聞かせたという。
「右膝から下を泥まみれにされちゃいましたよ、なんて言って笑ってました」
 だが、その直後から奇妙なことが起きる。
「Kの右脚からずっと嫌な匂いがするんです。まるで腐った泥みたいな匂いが。島から帰って来て、もうだいぶ経っているのに」
 Kさん自身はそれに気付いていない様子だった。一週間経っても、二週間経っても、なぜかKさんの脚の匂いは消えず、むしろ強さを増していたという。
「それからしばらくして、Kは死にました」
 バイク事故だったという。
「僕もKの通夜に出ました。事故死とは思えないほど、死に顔はきれいだったんですが……」
 棺の遺体を見た時、Tさんは息が止まりそうになった。
「なかったんですよ。右膝から下が」
 遺族によると、事故の衝撃で吹き飛んでしまい、現場からも見つからなかったのだという。
「偶然だとは思うんですが、まるでパーントゥに持って行かれてしまったみたいで……」

 パーントゥという名前の語源には、
「人を食う者」
という学説もあるのだと、Kさんは教えてくれた。

総評コメント

後日詳細予定。
今回ご応募いただいた主な島はこちらです。
淡路島
沖ノ島
真鍋島
八丈島
宮古島
石垣島
伊豆大島
神津島
式根島
八丈小島
大神島
バリ島
サイパン島
端島(軍艦島)
亀島
屋久島
悪石島
佐渡島
雄島
ボルネオ島
中島(支笏湖)
答志島
その他、具体的な名前はございませんでしたが、瀬戸内海、長崎、沖縄の島々のお話が最多でした。

次回お題は、「子供」に纏わる怖い話です!
5月はこどもの日ということで、こちらのお題。久しぶりに広いテーマで投稿しやすいのではないでしょうか。
皆様の力作、お待ちしております。

★その他優秀作品 ※順不同
「誘い」司馬玉里
「白昼妖」あんのくるみ
「誰?」ふうらい牡丹
「昔の断末魔」雨森れに
「事故の記憶」キアヌ·リョージ
「おいでおいで」高倉樹
「佐渡島にて」タイガ
「無音の祭囃子」梵天堂ブラフ
「とりつくシマ」南無
「神のお咎め」坂本光陽
「混乱」山賀忠行
「天草患者語」おがぴー
「呼んでいる」結城 るり
「島の竹やぶ」スペースMegす
「父の遺骨と魂」かおる

現在募集中のコンテスト

【第77回・募集概要】
お題:忘れ物に纏わる怖い話

締切 2024年11月30日24時
結果発表 2024年12月16日
最恐賞 1名
Amazonギフト3000円&文庫収録のチャンス
優秀賞 3名
竹書房怪談文庫新刊3冊セット
応募方法 下記「応募フォーム」にて受け付けます。
フォーム内の項目「件名(作品タイトル)」「投稿内容(本文1,000字以内)」「メールアドレス」「本名」「ペンネーム」をご記入の上ご応募ください。※創作不可。作品中の地の文における一人称は投稿者ご本人と一致させてください。 応募フォーム

お問い合わせ kowabana@takeshobo.co.jp