竹書房怪談文庫TOPマンスリーコンテスト12月募集「投稿・瞬殺怪談 2期」最終結果発表
マンスリーコンテスト 12月募集「投稿・瞬殺怪談 2期」最終結果発表
怪談マンスリーコンテスト
- 特別企画「投稿・瞬殺怪談」2期 ―
12月公募結果発表
- 最恐賞
- 「花冠」天堂朱雀
★Amazonギフト3,000円+文庫掲載+献本1冊
- 優秀作
- 「小包」ムーンハイツ
「車ピザ」緒方さそり
「かかってくる」宿屋ヒルベルト
「熱唱おじさん」宿屋ヒルベルト
「長い廊下がある家」宿屋ヒルベルト
「ニセおじさん」宿屋ヒルベルト
「図書館の怪」墓場少年
「上京」豫座州長
「コンビニ」雪鳴月彦
「五寸釘」雨森れに
「ウオノエ」鍋島子豚
「とろける座席表」鍋島子豚
「自撮り」鍋島子豚
「墓じまい」アスカ
「疎ましい人」高崎 十八番
「キコキコ」のっぺらぼう
「軽自動車」のっぺらぼう
「旅館のシャレコウベ」のっぺらぼう
「晒し首」のっぺらぼう
「添い寝」のっぺらぼう
「何をしていた」天神山
「隣家の木」猫科狸
「関係性」猫科狸
「不安は残る」猫科狸
「削がれる」猫科狸
「鬽」夕暮怪雨
「引越しバイト」夕暮怪雨
「迎えに来た母」沫
「見知らぬ妹」沫
「白い闇」沫
「祖母の家」筆者
「送れない写真」筆者
「玄関先の童女」おがぴー
「睡眠アプリ」おがぴー
「気を抜くな」おがぴー
「痴漢対策」おがぴー
「女優に似ている」月の砂漠
「岩に浮かぶ」月の砂漠
「ひき逃げ」月の砂漠
「綱引き」月の砂漠
「復讐」月の砂漠
「娘の写真」月の砂漠
「遺影の部屋」安達ヶ原凌
「チンチロリン」佐々木ざぼ
「議事録」佐々木ざぼ
「薹%*祁@」佐々木ざぼ
「鼻血を出しているお母さん」春日線香
「十六人の集合写真」高倉樹
「餅が欲しい」高倉樹
「6500万年前より」高倉樹
「モデルハウス」佐藤健
「見守り隊」碧絃
「流暢」大坂秋知
「ぜんまい仕掛け」藤野夏楓
「吹き戻し」天堂朱雀
「引き渡し」天堂朱雀
「期間限定」天堂朱雀
「花冠」天堂朱雀
「正論の怪」乙日
「移動」中村朔
「嫌な音」中村朔
「いないいないばあ」中村朔
「素質」中村朔
「病院でコックリさん」鬼志仁
「親父が遺したもの」鬼志仁
「ご遺体の保管」鬼志仁
「コックリさん」鬼志仁
「隙間に」井上回転
「吸い込む」井上回転
「木彫りの大仏」キアヌ・リョージ
「ハンドミル」ふうらい牡丹
「斎場」ふうらい牡丹
「気ままな母」緒音百
「ドアのガラス」雨水秀水
「バケットハット」あんのくるみ - ★文庫掲載+献本1冊
最恐賞「花冠」天堂朱雀
Kさんが小学生の頃の話。
遠足先での昼休み中、先生に花冠の作り方を教えてもらった。
翌週。
好きな子が一人で帰っている所を狙い、後ろからソッと近づくと、その頭に作ってきた花冠をポンと乗せて走り去った。
週明け。
その子の反応を楽しみに待っていたが、それからその子は学校に来なくなった。
小学生の時は分からなかったが、今ではその理由が分かるという。
「ダメだったんだろうなって。交差点に置いてあった花で冠作ったのが」
黒木あるじ先生総評
先ずは、いずれの投稿作も楽しく恐ろしく、歓喜と怖気に身を震わせながら拝読した旨をお伝えしておきたいと思います。第一回の選評を踏まえての傾向なのでしょうか、今回は〈日常の一瞬〉をあざやかに切りとる怪談が多い印象をおぼえました。また、ラスト一行に工夫を凝らしたり倒置法でのアプローチを試みたりと、構成にも腐心のあとが見受けられたように感じます。「読み手を一刀両断する気迫に満ちた、なんとも物騒な投稿作ばかりだ」と思わず顔を綻ばせた次第です。
惜しむらくは〈定型〉に絡めとられた作品が少なくなかった点でしょうか。瞬殺怪談の巻数もゆうに二桁を数え、「これぞ瞬殺」と称すべきフォーマット、テンプレートが定まってきた感があります。願わくば、そんな雛形を逸脱した投稿作をもっと読みたかった──との感想は、お化け屋としての忌憚なき意見です(むろん、この言葉は自戒を込めてのものなのですが)。これまで培われてきた恐怖の骨組みをひと太刀で粉々にしてしまう、野心的な〈ネオ・瞬殺怪談〉がさらに登場することを願ってやみません。
そのなかで最優秀作「花冠」ならびに、とくに印象に残った下記の5作品は、一見すると豪速球のようでありながら実は変化球という、一筋縄ではいかない意欲作でした。こちらの予想を裏切りながらも、怖さのどまんなかを直撃する怪談の数々。読了後に私が抱いた「瞬殺怪談にはまだまだ進化の余地があるんだなあ」との感想も、けっして大袈裟ではないと思っています。ぜひ、今後も当コンテストが末長く継続され、新たな恐怖が世に放たれていってほしいと願うばかりです。投稿者の皆さま、本当にありがとうございました。
黒木あるじ先生・上位5作選評
●「流暢」大坂秋知
まさに瞬殺、一刀両断。情報を徹底的に削ぎ落としたさまは、さながら名料理人が一尾の巨大な鮪から大トロを切りだすかのごとき所作で、吐息がこぼれそうになります。可愛らしい我が子に起きた奇跡──この場合は忌跡とでも表現すべきでしょうか──の底知れぬ恐ろしさに驚嘆するばかりです。
それほどまでに完成度の高い作品ゆえ、基本的にはケチをつける余地などないのですが、ラストの「という」だけは省いたほうが良いかもな──と思いました。断定してしまったほうが、唐突な終幕のインパクトを得られるように思ったのですが、いかがでしょうか(二行目で「という」が既出していますしね)。ただ、そんな細かい点などまったく瑕疵にならない怖さを有していた事実は、改めて申しあげておきたいと思います。
●「図書館の怪」墓場少年
長い髪の毛──実話怪談ではレギュラーと呼んでも差し支えないほど定番のツールです。「書籍に挟まっていた」的なシチュエーションも、多くの人が経験していることでしょう。しかし、本作は髪の毛がどこからともなく降ってくるという予想だにしない展開を見せ、さらには施設内にいる別な人物にも同様の怪異が(文字どおり)降りかかってしまいます。床に渦巻く無数の黒髪──生理的嫌悪感のみならず、妙な美しさも感じる情景に強く惹かれてしまいました。
それでも、あえて重箱の隅をつつくならば「読み進めていると」「ページをめくると」(この表現は二回登場します)「視線を戻すと」などなど、格助詞「と」が頻出する点にすこしばかり引っかかってしまいました。もちろん「絶対ダメ!」というわけではないのですが、別な表現に変換すれば、よりテンポに弾みがついて読み手をグイグイ引きこむのではないか──そのように感じた次第です。むろん、それを補って余りある妖美が全編に漂っているのですけれども。
●「自撮り」鍋島子豚
旅先の宿で怪異に見舞われる──こちらも王道と称すべき怪談の定番です。しかし妙な気配や謎の水音ではなく、写真にのみ顕れる怪異というのは〈宿の怪〉としてなかなか斬新かもしれません。短いながらも端正でバランスの取れた文章が、怖さをグッと引き立てているように感じます。
唯一、後半部分「早坂さんの記憶違い、で済みそうな話である」の一文のみ〈作者の見解〉が綴られている点は、ほんのすこし気になりました。〈取材の模様〉と〈体験の回顧〉が交互に出てくるタイプの構成ならともかく、今作はほぼ全文が〈早坂さんの体験〉です。ゆえに、このセンテンスのみ作者が顔をのぞかせると(ほんの一瞬とはいえ)読者が混乱をきたすような気がしたのです。次作に取りくむ際は、ぜひそのあたりも頭の片隅に置いてもらえれば、より恐ろしい話に仕上がるのではないかしらん──と、老婆心ながら申しあげる次第です。
●「薹%*祁@」佐々木ざぽ
得体の知れない「薹%*祁@」なる存在。野生動物かと思いきや「電車の中でふざけていた」という妹の説明で、にわかにその正体が不明瞭になるという不気味さ。そして、真の怪異は「薹%*祁@」ではなく妹で……最後の取材パートにいたるまで二転三転、こちらの予想を裏切り続ける構成に眩惑されてしまいました。お見事。
と、ここまで称賛しておきながら些事にこだわるのもどうかとは思うのですが、「恐怖の感情が爆発しそうになった」「完全に理性を失った」「得体の知れぬ何かを想像させた」など、読み手の恐怖を喚起させんとする表現は取り除いたほうが良いかもしれません。淡々とした筆致だけでじゅうぶん恐ろしいがゆえに、煽情的な文章は〈過剰なトッピング〉〈振りかけすぎた香辛料〉のように思えてしまうのです。すべて語らずとも、ちゃんと行間に怪は宿っている──おのれの筆力を信じ、ぜひ今後も恐ろしい話を紡いでください。
●「ニセおじさん」宿屋ヒルベルト
知己の人に酷似した、けれどもあきらかに異なる人物──実話怪談では「認知の歪み」系として人気のジャンルですね。しかし本作に出てくる〈スギハラさん〉のインパクトは、それらの類話と比肩しても頭ひとつ抜きんでています。なにせ、人ですらないかもしれないのですから。ほかの職員が目撃していない理由もさりげなく記すなど、細部への目配りにも感心しました。
これほど褒めておきながら、あえて意地悪く片言隻語をとらえると「という」「らしい」「そうなのだが」「そうだ」といった伝聞を極力排除してはどうだろうか──との感想を抱きました。実話怪談というジャンルの性質上、どうしても使いがちな語句ではあるのですが、現状の半分ほどに留めたほうが効果を発揮するように思えてしまうのです。などと言ってはみたものの、そのように瑣末な点など気にならぬほど恐ろしい話ではありました。スギハラさん、絶対に遭遇したくないですね。
編集部より
「瞬殺怪談」スピンオフ企画2期の最終結果発表をお待ちの皆さま、大変お待たせいたしました。400作を超えるたいへん多くのご応募、ありがとうございました。いずれも良作ばかりで、掲載枠を大幅に増やした次第です。
最恐賞と優秀作に選出されました上記作品につきましては、2024年3月29日発売の『投稿 瞬殺怪談 2(仮)』に収録させていただきます。たくさんのご応募、誠にありがとうございました。
現在募集中のコンテスト
【第77回・募集概要】
お題:忘れ物に纏わる怖い話
締切 | 2024年11月30日24時 | |
---|---|---|
結果発表 | 2024年12月16日 | |
最恐賞 | 1名 Amazonギフト3000円&文庫収録のチャンス |
|
優秀賞 | 3名 竹書房怪談文庫新刊3冊セット |
|
応募方法 | 下記「応募フォーム」にて受け付けます。 フォーム内の項目「件名(作品タイトル)」「投稿内容(本文1,000字以内)」「メールアドレス」「本名」「ペンネーム」をご記入の上ご応募ください。※創作不可。作品中の地の文における一人称は投稿者ご本人と一致させてください。 応募フォーム | お問い合わせ kowabana@takeshobo.co.jp |