竹書房怪談文庫TOPマンスリーコンテスト
怪談マンスリーコンテスト
ー 怪談最恐戦投稿部門 ー
2024年11月結果発表
- 最恐賞
- 「辿り着く記憶」筆者
- 佳作
- 「履き忘れ」柩葉月
「骨をつなぐ呪文の話」犬飼亀戸
「家に帰る」中村朔
「「辿り着く記憶」」筆者
健さんはかつて一度だけ、夜逃げと言うものを経験している。
小学校の頃の事だ。家に帰れば何故か、普段から帰りが遅い兄と両親がいた。
家の中には異様な空気が流れていた。大学生の兄は健さんを見て、「誰かに尾行されなかったか?」と聞く。
「いいや」と返事をすると、「早く支度しろ」と父が急かす。
意味が分からない。だがとりあえず部屋へと向かい、子供心に大事なものを鞄に詰め、階下へと降りた。
家族全員で背を低くし、窓から見えないようにしながら裏口へと目指す。そして空き地に停めた車に乗り込むと、父は黙ってハンドルを握る。
遠離って行く家を眺め、健さんはなんとなくもう二度とそこには戻って来れないだろうなと感じたらしい。
母の作った握り飯を囓り、長い夜を越えて辿り着いた先は、海の近いとある漁村だった。
薄汚い家の庭先に車を停め、「今日からここが我が家だ」と父は言う。そうしてようやく健さんは、「逃げて来たんだ」と理解する。
もう間もなく朝が来る時刻。家族は全員、汚い畳の上に布団を敷いて転がった。
そうして次に目が覚めると、何故かそこはいつも通りの自宅の部屋の布団の中だった。
階段を下りると、家族は全員そこにいた。
「どうして?」と聞くが、その言葉はまるで誰にも届かない。「何が?」と、不思議そうな顔で健さんを見るだけ。
結局あれは夢だったのかと片付けた健さん。だがあの晩持ち出した鞄と大事な玩具は、何故かそっくりと紛失していた。
それから数年後、高校の修学旅行で健さんは関西方面へと向かう事になった。
行く先はM県の港町。誰もが「つまんねぇ」とぼやくのだが、現地での自由行動の際に健さんは自身の目を疑った。それはまだ鮮明に記憶に残る、夜逃げして辿り着いた町だったのだ。
友人達とはぐれ、一軒の家の前で立ち止まる。
「ここだ」と健さんは思い、家の裏手へと回り込んで入り込めそうな場所を探す。
酷いガタのある窓を外し、中へと踏み込む。そして確信する。そこはかつて、家族全員で一泊した例の新居であった。
そして健さんの鞄は、そこにあった。中を開けるとそこにはかつての宝物ばかり。健さんはそれを手に、家へと持ち帰った。
自宅へと戻り、誰もが信じてくれない事を前提に、その鞄を見せる。すると家族は一瞬だけそれを凝視し、そしてまた何事も無かったように振る舞った。
但し、健さんは見逃さなかった。誰もが「とんでもないものを見た」と言った表情を見せた事に――。
総評コメント
★最終選考対象
「忘れられた日記」おがぴー
「ロバの忘れ物」杜 志成
「家に帰る」中村朔
「旧暦○○日」千稀
「届けてくれた人」鬼志 仁
「骨箱」沫
「骨をつなぐ呪文の話」犬飼亀戸
「履き忘れ」柩葉月
「取り戻せない忘れ物」御家時
「バーキン」唎酒師のカズ
「金閣寺」岡田眞弥
「辿り着く記憶」筆者
★二次選考通過作
「にばんシアタ」ホームタウン
「忘れられた日記」おがぴー
「ロバの忘れ物」杜 志成
「家に帰る」中村朔
「お礼の品」中村朔
「旧暦○○日」千稀
「届けてくれた人」鬼志 仁
「川が止まる音」沫
「骨箱」沫
「押入れ」佐藤健
「骨をつなぐ呪文の話」犬飼亀戸
「置き忘れるほど」千稀
「あるマジシャンの失態」月の砂漠
「履き忘れ」柩葉月
「大事な箱」香久山ゆみ
「きっと偶然」雪鳴月彦
「取り戻せない忘れ物」御家時
「おもいだした」御家時
「純白の殻」碧絃
「バーキン」唎酒師のカズ
「金閣寺」岡田眞弥
「辿り着く記憶」筆者
★一次選考通過作
「にばんシアタ」ホームタウン
「忘れられた日記」おがぴー
「もうし」薊 桜蓮
「呼ぶ声がする」松田一也
「観音像」大和 かたる
「ロバの忘れ物」杜 志成
「家に帰る」中村朔
「お礼の品」中村朔
「旧暦○○日」千稀
「届けてくれた人」鬼志 仁
「川が止まる音」沫
「拾得物」沫
「骨箱」沫
「押入れ」佐藤健
「香典袋」沫
「花が添えられたのは」おがぴー
「杖」七面鳥
「薄幸の公園」ぴと
「骨をつなぐ呪文の話」犬飼亀戸
「置き忘れるほど」千稀
「あるマジシャンの失態」月の砂漠
「だれが」柳下どじょう
「山への忘れもの」御家時
「唯の忘れ物 二題」黒野洋司
「履き忘れ」柩葉月
「大事な箱」香久山ゆみ
「きっと偶然」雪鳴月彦
「デリ嬢の忘れ物」花園メアリー
「忘れ物してるのよ」雨車依茉
「忘れ物ですよ」雨車依茉
「取り戻せない忘れ物」御家時
「おもいだした」御家時
「純白の殻」碧絃
「バーキン」唎酒師のカズ
「無縁」せんざんなな
「金閣寺」岡田眞弥
「ペンチ」でんこうさん
「ゴープロの蓋」唎酒師のカズ
「辿り着く記憶」筆者
現在募集中のコンテスト
【第79回・募集概要】
お題:蛇に纏わる怖い話
締切 | 2025年01月31日24時 | |
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結果発表 | 2025年02月17日 | |
最恐賞 | 1名 Amazonギフト3000円&文庫収録のチャンス |
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優秀賞 | 3名 竹書房怪談文庫新刊3冊セット |
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応募方法 | 下記「応募フォーム」にて受け付けます。 フォーム内の項目「件名(作品タイトル)」「投稿内容(本文1,000字以内)」「メールアドレス」「本名」「ペンネーム」をご記入の上ご応募ください。※創作不可。作品中の地の文における一人称は投稿者ご本人と一致させてください。 応募フォーム | お問い合わせ kowabana@takeshobo.co.jp |
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